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「伝家の宝刀」鞘に納める

 こんばんは。今朝「岸田首相 年内の衆議院解散見送る意向を固める」というニュースが流れてきました。衆議院議員の任期も折り返しを過ぎいつ解散があってもおかしくないと言われています。夏頃から今まで「いつ解散があってもおかしくない」とまで言われてきた衆議院。それではここで解散について所要国と比較しながら少しだけ再確認していきたいと思います。
岸田首相 年内の衆議院解散 見送る意向を固める  NHK | 国会


解散

 日本の国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関で「全国民を代表する選挙された議員」で構成され衆議院と参議院から構成される二院制をとっています。衆議院議員の任期は4年、参議院議員の任期は6年(3年ごとに半数改選)や被選挙権など違いがありますが、衆議院と参議院はそれぞれ国会の一院として対等な地位を占めることになっています。対等な地位を占めることになってはいるものの、憲法上あるいは法律上において衆議院の議決が優先する場合(衆議院の優越)が存在しています。解散も衆議院のみにある制度で、現行憲法下では25回行われており、そのうち内閣不信任によるものは4回となっています。

日本国憲法
第七条
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国務を行ふ。 
(略)
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。

第六十五条
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したとき は、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

日本国憲法


主要国の解散


 

イギリス

 イギリスには上院(任命制の終身議員)と下院(任期5年)の二院が存在し、解散の対象となるのは議会だが実質的に下院のみが解散となる。不信任以外には解散事由について限定はないため首相の自由な判断により国王に解散を要請することができる。現在の解散制度となったのは2022年と比較的最近で、それまでは首相が単に政治的な利益によって解散をすることを防ぐために2011年に「議会期固定法」に基づき解散が厳しく制限されていた。しかし解散要件を満たすことができず政治が停滞したため2022年に「議会解散及び召集法」が制定された。この法律ができてからまだ解散はされていない。

イタリア

 イタリアは両議院ともに任期は5年で解散の対象となる。大統領は両院の議長の意見を聴いたうえで両院もしくはどちらか一院のみ解散することができる。イタリア共和国成立以降は解散が18回行われ任期満了前に解散するのが慣例となっており、両議院の選挙は同時に行われる。

カナダ

 カナダもイギリス同様二院存在し上院(任命制の任期なし75歳定年)と下院(任期5年)の二院が存在し、解散の対象となるのは議会だが実質的に下院のみが解散となる。与党に有利な選挙を防止することを目的として2007年の選挙法改正により下院議員の総選挙は4年ごとの10月第3月曜日と定められているが、解散権が存在するために実際は早期解散が行われている。

ドイツ

 ドイツも二院制だが上院は各州の政府が任命する政府構成員が務め任期がないため、下院(任期5年)のみが解散の対象となる。ワイマール憲法下では自由な解散権が存在していたが、現行の基本法(憲法)では首相が任命されない場合及び首相が下院で信任されず後任の選出もされない場合のみと厳格に制限されている。そのため解散はドイツ連邦共和国成立(1949年)以降3回しか行われていない。

フランス

 フランスも上院(任期6年)と下院(任期5年)の二院制だが解散の対象は下院のみとなっている。大統領は首相及び両院の議長の意見を聴いた後、いつでも自由に下院を解散することができる。解散にあたって大統領や議長の意見に拘束力はない。ただし、総選挙後の1年以内、非常事態権限行使中、大統領の職務代行中は解散することができない。

まとめ


 主要国を見ても様々な解散制度が存在することがわかる。イギリスやカナダでは日本とほぼ同じ頻度で解散しているのに対しドイツのように解散権が厳格に制限されているために殆ど解散が行われていなど様々である。また、制限の理由も与党が議会で多数を形成するために自由に解散する国や、安定的な議会を形成するために解散権を厳格にしたりと様々である。
 日本では事実上の解散権限を持っているの内閣総理大臣の伝家の宝刀と呼ばれ、内閣・与党の支持率、及び選挙の勝算を考慮した結果として解散が行われる。今年の解散は見送られてようだが、来年以降の政局には注目してきたい。

おまけ

 解散といえば「ばんざい」が印象的で、その所作については諸説存在しているが、かつて衆議院において万歳三唱の所作について質問が行われ政府としては「万歳三唱の所作については、公式に定められたものがあるとは承知していない」という答弁がなされている。陸上自衛隊の広報紙に、「万歳の掌は前向きか内向きか?」というコラムを掲載されたことがあり、そこでは「万歳三唱令」が存在しないものであることを指摘し「万歳の所作は発声と共に両手を勢いよく挙げる動作という事でよいと思われる」と結ばれている。これが一番しっくりくるのではなかろうか…。


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