【読書メモ】『古書の来歴』ジェラルディン・ブルックス
数奇な運命をたどった古書「サラエボ・ハガダー」が発見された。古書鑑定家が調査している現在(1996年)と、時代をどんどん下りながらこの本を手にしていた人々の話が交互に語られる。本自体は実在するけれどそれにまつわる物語は全てフィクション。
「サラエボ・ハガダー」というユダヤ教の本は、14世紀にキリスト教国だったスペインで作られ、第二次世界大戦中もサラエボ紛争の時もイスラム教徒によって守られた。たしかに想像力をかき立てられる素材ではある。好奇心をくすぐられる骨太な歴史ミステリーだった。
「サラエボ・ハガダー」が作られた頃のスペインは、ユダヤ教徒・イスラム教徒・キリスト教徒が比較的穏やかに共存していた「La Convivencia(共生)」の時代で、まあそれも「Reconquista(再征服)」の完了とともに終わりを告げるのだけど。
再びコンビベンシアが必要だと思う今日この頃、いまこの本を読む意義もあったかなと思う。
ちなみに私がこの本を手に取った理由は、イベリア半島がイスラムに支配され「アル=アンダルス」と呼ばれていた頃のことにものすごくひかれてしまうから。この時代の物語はもう無条件に好き。