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友人とブルジョワ展へ

2024.11.3(日)
友人と、六本木の森美術館で開催中の『ルイーズ・ブルジョワ展』へ行く。

六本木ヒルズのシンボルである蜘蛛のオブジェの作者として知られる、ルイーズ・ブルジョワ。私はアートに疎く、正直言うと彼女の名前も、彼女が女性であることも、そして彼女がオブジェの作者であることも知らなかったのだけれど、それでも行ってみたいと思ったのは「地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」という副題に惹かれたからだ。

友人と六本木駅の改札で合流して、まずはランチへ。予約しておいたスペイン料理店で窓際の席に着き、メニューを開くと、ランチメニューの一覧に「フィデウア」とあった。初めて聞く料理……どうやらパスタのパエリアらしい。最近の私は、今まで食べたことのない料理を食べたい欲がかなり高まっているので、迷わずフィデウアを注文した。

提供されたフィデウアのパリポリといった感じの愉快な食感を楽しみながら、友人の近況を聞く。私とは違い、バリバリと仕事をこなす彼女は相変わらず忙しそうだった。

ランチを済ませ、六本木ヒルズ内を少しぶらついてからブルジョワ展へ向かう。入り口でパンフレットをもらい、二人でゆっくり進んでいく。

作品たちを目にして、女であること、母であることへの葛藤というか、どうしようもなさみたいなものを感じた。血と母乳と肉。汗がにじむ、じっとりとした肌に覚えるような不快感。痛みと怒り。ブルジョワさん、ものすごいエネルギーだ。

特に印象的だったのは、彫刻作品「罪人2番」。防火壁の中に小さな椅子と鏡を置いた、お仕置き部屋のような空間に罪悪感と孤独感、息苦しさを感じて胸がきゅっとなった。そして、この漠然とした閉塞感を、この絶望を感じているのは自分だけじゃないんだ、という謎の安心感もあった。

鑑賞後は、六本木ヒルズのカフェ『アンティコカフェアルアビス』でカフェラテとチーズケーキをいただきながら、友人と感想を言い合う。

「まさかあの蜘蛛が母の象徴だったなんて驚きだね」「罪人2番怖かった~」

アートに対する感想を言葉で表現するのは、本当に難しい。いつも表面的なことしか言えなくて、悔しい。今日は頑張って伝えた方だけれど。

友人は作品だけではなくて、会場の壁面に記されたブルジョワの言葉にも惹かれたそう。「攻撃しないと生きている気がしない」「芸術は正気を保証する」──強烈な言葉たちを思い出して、友人らしいなと思った。穏やかそうな雰囲気だけれど、そのじつ尖りまくりな友人には、刺さるものがあったんだろう。

ブルジョワの亡き夫のハンカチに刺繍されてあった「地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」という言葉(個展の副題にもなっている)も、地獄を体験した者の貫禄というか、生き残った者しか醸し出せない格好良さ、地獄すらも肯定しうる器のでかさが感じられて非常にいい。

帰りがけに「来年は一緒に初詣とか行けたらいいね」とゆるい約束を立てて、別れた。

















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