柔術で血圧を下げる:さよなら生活習慣病
日本人の運動不足は、コロナ禍の前から指摘されています(女性の運動不足は特に深刻です)。ここ10年は厚生労働省も「健康づくりのための身体活動基準・指針」をつくり運動不足解消のため積極的に活動をしています。運動不足は生活習慣病(高脂血症・高血圧・糖尿病)のリスクを高めます。それがコロナ禍でいっそう深刻になりました。
柔術をやると血圧が下がる
運動すると生活習慣病を予防できます。今回は高血圧とブラジリアン柔術の関係を調べた研究を紹介します。
運動をして少し経つと、血圧が運動前よりも下がることが知られています。これを運動後低血圧と言います。ジョギングのような有酸素運動でも、ウエイトトレーニングのような無酸素運動でも、運動後低血圧は起こります。Belo たちは有酸素と無酸素の運動が組み合わさったブラジリアン柔術のスパーリング(実戦形式の練習)で運動後低血圧が起こるか調べました(Belo et al. 2021)。
青帯と紫帯の中級者が研究の参加者です。激しくない、いわゆるライトスパーを5分×3回行い、血圧の変化を測定しました。運動前の血圧の平均はおよそ120/80 mmHgでした。前の数字が上、つまり収縮期血圧、後の数値が下、つまり拡張期血圧です。健康的な血圧ですね。スパーリング中には上が160mmHg近くまで上がりました(下はそれほど変わりませんでした)。
5分×3回のスパーが終わると血圧は徐々に低下し始め、1時間後には運動前よりも下がりました。上でおよそ10 mmHg、下でおよそ5mmHg下がり、およそ110/75 mmHgとなりました。これが習慣化すると普段の血圧も下がってくるようです。今回の研究では測定していませんが、運動には体重を下げる、睡眠の質を向上させるなど、間接的に血圧を下げる効果もあります。そして、高脂血症・高血圧・糖尿病という生活習慣病すべてに良い効果があります。生活習慣病が気になるのは30代後半から。そのくらいになったら運動を意識的にした方が良さそうですね。
厚生労働省の指針
厚生労働は生活習慣病予防のため、週3回1時間、軽めの運動を推奨しています。有酸素運動とウエイトトレーニングの両方をやると効果的です。なお、血圧を下げるにはウエイトトレーニングだけでは効果が少ないことがわかっています。
ブラジリアン柔術には有酸素運動と無酸素運動が組み合わさっており、生活習慣病の予防には最適です。軽度から中度の高血圧の方には運動が良いとされていますから、試してみてはいかがでしょうか。
ジョギングやフィットネスジムも良いですが、続きませんよね。ブラジリアン柔術ですと、仲間ができますし、競技にゲーム性があって単純に楽しい。なので、おもしろいと感じられれば続けやすいです。
なお、重度の高血圧の場合、激しい運動は返って良くありません。健康面の判断は素人には難しいので、不安がある場合は医師との相談をお勧めします。
引用文献
・Belo, W. R., De Castro, L. F., Palmieri, D. C., Santos, L. G. D. D., Herrera-Valenzuela, T., Santos, M. A. F. D., ... & Simão, R. (2021). Post-Exercise Hypotension in Brazilian Jiu-Jitsu. Sport Mont, 19(1), 39-43.
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