HIITが柔術には良いらしい
前回、ジョギングのように長距離を走ることは、ブラジリアン柔術のトレーニングとしてはあまり効果的でないということを書きました。
SAID原則(特異性の原則)から考え、競技に合ったトレーニングをしないとあまり効果がありません。緩急があり、瞬発的な動きが求められ、中断がないというブラジリアン柔術の競技特性を考えると、HIIT(High-Intensity-Interval training)、いわゆる高強度インターバルトレーニングが競技力の向上のためには適しています。
HIITって?
HIIT、高強度インターバルトレーニングは、文字通り、負荷の高い運動と小休憩を繰り返すトレーニング法です。
ダイエット等にも効果があると言われ、ここ数年注目をされています。器具がいらないので、始めやすいという利点もあります。
HIITのブラジリアン柔術への効果
HIITは総合格闘技のトレーニングにも取り入れられており効果が示されています(James et al., 2013)。Riberioたちは、ブラジリアン柔術にもHIITが効果的か調べました(Ribeiro et al., 2015)。白帯から紫帯の2年以上柔術の経験がある人たちをHIITトレーニングを行うグループと通常のトレーニングを行うグループに分け、10週間、週5回各60分の練習を行いました。
HIITトレーニングを行ったグループでは、週5回のトレーニングのうち3回でHIITを行いました。練習の構成は、 (1)ウォームアップ、(2)テクニック、(3)HIIT、(4)短めのスパーリングでした。そして、残りの週2回の練習では、スパーリングのみを行いました。
一方、通常のトレーニングを行ったグループでは、週5回、ブラジリアン柔術の典型的な構成である(1)ウォームアップ、(2)テクニック、(3)スパーリングという3部構成のトレーニングを行いました。こちらは普通のブラジリアン柔術の練習を10週間やったわけです。
10週間の成果を検討すると、HIITを行ったグループでは10週間で様々な面で成績が向上していました。一方、通常のトレーニングではあまり変化がありませんでした。
HIITグループでは、以下の項目の全てで向上が見られました。
体重が減り(90kgから85kg)
体脂肪率が下がり(17%から16%)
長距離走(2400m)のタイムが縮まり(744秒から609秒)
柔術テクニックのスムーズになり(1回3.5秒かかったのが、2.9秒に短縮)
柔術テクニックの持続力が上がり(1分間で70回が84回)
垂直跳びが伸び(38 cmが48cm)
腹筋がたくさんできるように(52回が67回)
なりました(カッコ内は平均値)。すべての項目で統計的に意味のある成績の向上がありました。ちなみに、通常トレーニングのグループでは、上の項目について、長距離走を除き統計的には意味のある成績の向上がありませんでした。この結果からHIITが非常に効果的なトレーニングであるとRibeiro達は結論しています(注1)。
ちなみに効果を調べるために測定対象となった柔術テクニックはアームドラッグでした。細かいことは書いていなかったのですが、クローズドガードからのアームドラッグとバックテイクである推測できます。HIITを取り入れることで、このテクニックが早くできるようになったり、何回も繰り返してできるようになったというわけです。柔術に特有の動きがスムーズになったり、疲れずにできるようになったことは非常にポジティブな効果です。
柔術向きのHIIT
コブリンヤはIBJJF世界選手権をGIで5回、No-GIで4回、ADCCも3回制覇した伝説的な選手です。彼は、ブラジリアン柔術で使う動きを取り入れたHIITをYouTubeで紹介しています。
他にも体幹を鍛えるHIITなどいろいろコブリンヤは紹介しているので、ぜひ検索してください。コブリンヤも推奨しているわけですから、HIITはトップレベルの柔術家が推奨するトレーニングといって良いでしょう。
スパーリングのための体力は、スパーリングをたくさんすれば付くものではあります。ただし、スパーで体力をつけようとすると、無理をして怪我につながることがあります。効果や安全性を考えると、HIITなどを組み込んでいくことで良い感じに体力を向上させることができるのではないかと思います。
引用文献
・James, L. P., Kelly, V. G., & Beckman, E. M. (2013). Periodization for mixed martial arts. Strength & Conditioning Journal, 35(6), 34-45.
・Ribeiro, R. L., Silva, J. I. O., Dantas, M. G. B., Menezes, E. S., Arruda, A. C. P., & Schwingel, P. A. (2015). High-intensity interval training applied in Brazilian Jiu-jitsu is more effective to improve athletic performance and body composition. Journal of Combat Sports and Martial Arts, 6(1), 1-5.
注1:HIITグループと通常グループでは、HIITの有無以外にもかなり多くの違いがあるので、HIITの効果の検証を今後もう少し丁寧に行う必要があります。
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