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動きが覚えられません→寝たらわりと解決します。


寝技の格闘技と言われるだけあって、ブラジリアン柔術の基本動作には、寝て動くものが多いです。そのためか日常動作にはないものがけっこうあります。普通の人は寝たら、寝っぱなしですからね。運動から遠ざかっていたりすると、この日常にはない慣れない動作がなかなか難しい。簡単に見える動きも覚えられなかったりします

最初はなんでも難しい

難しい動きのひとつが最近話題になった横回転です。柔術の基本運動でもあります。基本とはいえ、これをすぐに出来るようになったひとはほとんどいないのではないでしょうか。ネットでも出来ないという声ばかりでした。

最初は難しい横回転ですが、1–2週間するとたいていのひとが出来るようになります。なぜでしょうか?

寝るのが大切

身体の動きを覚えるには、実は寝ることがとても大切です。寝ている間に、脳や身体にさまざまなことが起こり、経験が定着していくのです。

睡眠と身体の動きの関係を取り上げた研究を一つ紹介しましょう(Walker et al., 2002)。この研究の参加者は、キーボードのキーを押す順番を覚えるました。ちょうど初心者がピアノの弾き方を覚える感じです。

参加者は、画面に出る指示に従い5つのキーを押します。ピアノで短いフレーズを弾く感じです。そして、指定された時間内(30秒)に指定のフレーズを弾けた回数を測定します。

はじめてやることなので、最初はモタモタして指が動きませんがだんだんスムーズに動くようになってきます。この練習を3回に分けて行いました。

実験の参加者には、(1)10:00AM(午前10時)に初めに練習したグループと、(2)10:00PMに初めに練習したグループがありました。そして、どちらのグループも12時間おきに3回練習を行い課題成績を比較しました。

初めてやることですから、やるたびに上手くなります。ところが、上手くなりかたに違いがあったのです。下の図に課題の成績を示しました。青いバーが寝る前の成績、赤いバーが寝た後の成績です。一見してわかるように、寝た後でパフォーマンスが格段に上がっています。学んだ回数や学んだ時間の長さは同じでも、寝るタイミングで成績が上昇するタイミングが変わります。これは寝ているときに身体に動きが定着していくことを示しています。

スライド1

3回の練習は全て12時間おきに行われているので、単純に疲労が影響しているわけではありません。実際、手を疲れさせないように、課題の合間ずっとミトン(鍋つかみ)を手につけ、手を使わないようにした実験を別にやったのですが、結果は変わりませんでした。

Practice with sleep makes perfect

この結果は、睡眠が動きを覚えるために重要な働きをしていることを示しています。つまり、動きはそのあとに眠ることによって定着するのです。

寝たあとに学習が進むことは、運動だけでなく、文字や絵の記憶、さらには知覚学習と呼ばれる音を聞いたりや動きを見たりすることにも確認されています。

できなかった横回転がいつの間にかできるようになるのは、寝ている間にその動きが体に定着するからです。ですから、初めてやった動きやテクニックが上手くいかなくても、「寝たらできるようになっているだろう」くらいの気持ちでいると良いのだと思います。

Practice makes perfect (練習はウソをつかない/練習が完璧を作る)ということわざをもじり、この研究を行ったWalker たちはPractice with sleep makes perfect(練習して寝ると完璧になる)と述べました。論文のタイトルにもなっています。

睡眠は身体の健康にも心の健康にも大切です。柔術が上手くなるためにも、心身ともに健康になるためにも、よく眠るのはとても良いのです

引用文献

Walker, M. P., Brakefield, T., Morgan, A., Hobson, J. A., & Stickgold, R. (2002). Practice with sleep makes perfect: sleep-dependent motor skill learning. Neuron, 35(1), 205-211.

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