歯(口まわり)の怪我が多い格闘技は?
大人になって歯や歯茎など口まわりを治療するとかなりの金額がかかります。時間も取られます。大人の歯は抜けると生えてきません。生活の質にもかかわりますね。ブラジリアン柔術などの格闘技では、歯をはじめとする口まわりの怪我はそれなりにあります。他の格闘技と比べるとどうでしょうか。
どの格闘技が多い?
Polmannたちは2163編の論文を調査し、基準に該当する54編に記載されたデータを用い、口まわりの怪我の多さを比較しました(Polmann et al., 2020)。空手、ボクシング、キックボクシング、ムエタイ、テコンドー、フェンシング、カポエラ、カンフー、相撲、剣道、柔道、ブラジリアン柔術と実にさまざまな格闘技が対象となりました。
格闘技全体で見ると、口まわりの怪我を経験するのはおよそ30%でした。競技別で見ると以下の図のようになります。
マウスガードをつけた方が良い
一番、口まわりの怪我が多い格闘技はブラジリアン柔術でした。寝技中心で密着度が高く、絞め技があるのでやはり多いのかと思います。またマウスガード使用率の低さがそれに拍車をかけます。イギリスのデータですとキックボクシングやボクシングは対人練習ですと60%以上の人が必ずマウスガードをつけ、全くつけたことがないひとはたった3%でした(Pickering et al., 2020)。一方、ブラジリアン柔術やグラップリングでは、対人練習で40%がマウスガードをつけるにとどまり、全くしたことがない人が25%もいました(Razzak & Messahel, 2019)。ブラジリアン柔術でマウスガードを使う人の割合は、他の論文でもおよそ似た値になっています(Ferrari & De Medeiros, 2002)。
Ferrari と De Medeirosたちは、マウスガードの装着率と口まわりの怪我の関係を調べ、競技別で比較しました。ホッケーではマウスガードの装着率が100%で怪我をした人の割合は10%でした。ブラジリアン柔術では装着率40%で怪我の割合が30%、野球、ハンドボール、サッカーだと装着率は1-4%、つまりほぼなし。一方、怪我の割合は40%近くありました。この結果は、マウスガードで怪我を防げることを示しています。
ここで興味深いのは、野球、ハンドボール、サッカーといった球技では、格闘技の平均(30%)より、口まわりの怪我が多いんですね。ここから格闘技だから怪我をしやすいわけではないことがわかります。また、マウスガードなど備えの重要性も再認識できますね。
とはいえ、マウスガードって息がしづらいし、着け心地がしっくり来ないし、違和感があるしとちょっと人気がないんですよね。実は私も付けたことがありません。へへへ。
引用文献
・Ferrari, C. H., & De Medeiros, J. M. F. (2002). Dental trauma and level of information: mouthguard use in different contact sports. Dental Traumatology, 18(3), 144-147.
・Pickering, K., Bissett, S. M., Holliday, R., Vernazza, C., & Preshaw, P. M. (2020). Exploring the use of mouth guards in Muay Thai: a questionnaire survey. BDJ open, 6(1), 20.
・Polmann, H., Melo, G., Conti Réus, J., Domingos, F. L., de Souza, B. D. M., Padilha, A. C., ... & De Luca Canto, G. (2020). Prevalence of dentofacial injuries among combat sports practitioners: A systematic review and meta‐analysis. Dental Traumatology, 36(2), 124-140.
・Razzak, A., & Messahel, A. (2019). The use of mouthguards in grappling sports: a survey of grapplers in the United Kingdom. British dental journal, 227(10), 901–905.
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