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高校数学をプログラミングで解く(コラム)「1-2 『情報』の試作問題をやってみる」


はじめに

この記事では、令和7年度の大学入学共通テスト(旧センター試験)で新たな受験科目となる『情報』について、独立行政法人大学入試センター(DNC)が出している『情報』の試作問題を扱います。

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=511&f=abm00003277.pdf&n=6-2-1_試作問題『情報Ⅰ』※令和4年12月23日一部修正.pdf

令和7年度以降に大学受験をされる方は、本記事をお読みになる前に、是非一度この試作問題を実際にやってみてください。

試作問題をやってみた

記事『高校数学をプログラミングで解く(コラム)「1-1 令和7年度大学入学共通テスト 試作問題『情報Ⅰ』」』で、『受験生にやってほしいこと』として、
・『情報』の試作問題を試験時間に合わせてやってみる
・『情報』の試作問題をじっくり時間をかけてやってみる
を書きました。実際にこれらを高校2年生にやってもらいました。

まず、『情報』の試作問題を試験時間60分でやってもらった結果、試験時間60分内ですべて解くことはできませんでした。第4問の最後の2,3問が試験時間内に間に合わなかったようです。また、採点した結果は40点程度でした。
その後、『情報』の試作問題を問題文をよく読んでじっくり時間をかけてやってもらいました。再度採点した結果、今度は70点程度取れていました。

そして、試作問題をやってもらった感想を聞いてみました。
・丁寧に読んだらある程度解ける問題も多い
・授業で習っていないことも出題されている
ということでした。

丁寧に読んだらある程度解ける問題も多い

自分自身でもこの試作問題を解いてみましたが、各問題での文章量が結構多いですね。『情報』の問題では出題者がその問題の状況をきちんと説明する必要がありますので、文章量が多くなってしまうようです。ただ、その代わりにそれらの文章を丁寧に読んだら、問題を解くためのいろいろなヒントが隠されており、それを手掛かりに解答すれば高得点も狙えるように感じました。

授業で習っていないことも出題されている

こちら具体的には、第1問の問3に出てきた「論理回路」や第4問の問5に出てきた「回帰直線」などです。実際、『情報I』の教科書(高等学校『情報I』数研出版、ISBN:9784410821219)にも「論理回路」や「回帰直線」については載っていませんでした。
おそらく、実際の試験でもこのような教科書に載っていないことや授業で習わないことなども出題されるのでしょう。そのようなときでも動じないで問題文からそれらのことを分析、予想して考えることが大切だと感じます。

試作問題の出題傾向を分析してみた

「コンピュータとプログラミング」からの出題が多い

記事『高校数学をプログラミングで解く(コラム)「1-1 令和7年度大学入学共通テスト 試作問題『情報Ⅰ』」』でも紹介した、独立行政法人大学入試センター(DNC)の
「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等」( https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7/r7_kentoujoukyou/r7mondai.html )
というページに、『令和7年度大学入学共通テスト 試作問題「情報」の概要』(https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=511&f=abm00003141.pdf&n=6-1_概要「情報」.pdf)という資料があります。その資料のp.4に『2.試作問題『情報I』の概要 (1) 問題構成』として、各問題に対する出題内容がまとめられています(図1)。なお、図1に「出題内容(平成30年告示高等学校学習指導要領との対応)」という項目がありますが、これは教科書の大項目との対応と考えてもらえればよいです。つまり、教科書「高等学校『情報I』(数研出版、ISBN:9784410821219)」の目次をみると、
第1編 情報社会の問題解決
第2編 コミュニケーションと情報デザイン
第3編 コンピュータとプログラミング
第4編 情報通信ネットワークとデータの活用
となっており、これらの項目が出題内容と一致していると考えてください。

図1 試作問題『情報I』の概要(「令和7年度大学入学共通テスト 試作問題「情報」の概要」 (https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=511&f=abm00003141.pdf&n=6-1_概要「情報」.pdf」)より抜粋)

出題内容別に配点を計算してみると、「(1) 情報社会の問題解決」と「(2) コミュニケーションと情報デザイン」を合わせて配点が23点、「(3) コンピュータとプログラミング」の配点が46点、「(4) 情報通信ネットワークとデータの活用」の配点が31点となっています。「コンピュータとプログラミング」からの出題が多いですね。つまり、コンピュータやプログラミングの基礎的なことを扱う問題が多く出題されるようです。

数学Iと関連する問題が出題されている

試作問題の第4問は統計の問題であり、「(4) 情報通信ネットワークとデータの活用」に分類されますが、もし「情報I」の授業を受けていなかったり、勉強していなかったりしていたとしても、「数学I」の「データの分析」に関する勉強をしっかり行っていれば解ける問題になっています。このように、高校数学と関連する問題も多く出題されるようです。

受験生にやってほしいこと

ここまで『情報』の試作問題を実際にやってみたり、出題傾向を分析してみたりした結果、以下のことがわかりました。

各問題の文章量が多く、授業で習わないことも出題されるが、丁寧に読めば解ける問題が多い
②コンピュータやプログラミングの基礎的なことを扱う問題が多く出題される
③高校数学と関連する問題も多く出題される

①については問題の文章を素早く読んで理解する必要があるでしょう。このあたりを訓練するためには、やはりできるだけ多くの問題を解いておくことが必要になりますね。
②についてはプログラミングを実際に行うことが一番の近道だと思います。
③については高校数学をしっかり勉強しておくことが大切ですね。

以上3つのことを同時に満たすために、受験生には「高校数学をプログラミングで解く」をやっておくことをお勧めします。

まとめ

今回は、令和7年度の大学入学共通テスト(旧センター試験)で新たな受験科目となる『情報』について、独立行政法人大学入試センター(DNC)が出している『情報』の試作問題を実際にやってみて、その出題傾向を分析してみました。
『情報』の試作問題ではプログラミングの基礎的なことを問う問題や高校数学と関連した問題が比較的多く出題される傾向があります。このことから、受験生の方には是非「高校数学をプログラミングで解く」ことをお勧めします。そして、これを通して、プログラミングすることに慣れていってください。

以降の記事で、この『情報』の試作問題の各問題について、より詳細に紹介していきます。そちらも是非ご覧ください。

追記

2023年11月12日
「授業で習っていないことも出題されている」について、X(旧ツイッター)で以下のコメントをいただきました。

索引に基づく調査によれば 「論理回路」は東京書籍、実教出版、日本文教出版、第一学習社の情報Iの教科書に、「回帰直線」は実教出版の情報Iの教科書に載っています。
電気通信大学学術機関リポジトリ (nii.ac.jp)

参考文献

独立行政法人大学入試センター(DNC)のWebサイト
「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等」https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7/r7_kentoujoukyou/r7mondai.html 

高等学校『情報I』数研出版、ISBN:9784410821219

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