Vol.1 2重根号、その1



中学数学の因数分解の公式より

 次に示す式は2重根号になっている。これについてどう考えるか?

$$
\sqrt{5+2\sqrt{6}}
$$

 これは平方根の意味するところにより、 

「2乗すると $${5+2\sqrt{6}}$$ となる正の数」 

とか、

「$${5+2\sqrt{6}}$$ の正の平方根」

ととれる。

 この外側の根号を外すことを考えてみる。つまり2重根号では無い、より簡潔な格好で表すにはどうしたら良いか?

 ここで「2乗すると $${5+2\sqrt{6}}$$ となる正の数」であれば、それは

$$
\sqrt{2} + \sqrt{3}
$$

であると、すぐに直感で分かれば良いのだが、分からなかったらどうするか?

 その場合は「正の平方根の符号は正であるから、実数 $${A}$$ について $${ \sqrt{A^2} = |A| }$$ である」事で(2重根号のうち)外側の根号を外す事が出来る。

 よって2重根号で、外側の根号の中を平方の形へ変形することを段階的に考えることになる。それには次に示す中学数学で習う因数分解の公式が有用だ。これを用いて考えよう。

$$
a^2+2ab+b^2 = (a+b)^2 
$$

 2重根号で、外側の根号の中を上式左辺の形に落とし込み、次に示すように計算を進めて、

$$
\begin{array}{lll}
\sqrt{ a^2+2ab+b^2 } &=& \sqrt{ (a+b)^2 } \\
&=& | a+b |
\end{array}
$$

となることを利用する分けである。これなら外側の根号は外せる。

 すると最初の式は、

$$
\begin{array}{lll}
\sqrt{5+2\sqrt{6}}
&=&\sqrt{ (\sqrt{2})^2+2\sqrt{2}\sqrt{3}+(\sqrt{3})^2 } \\
&=&\sqrt{ ( \sqrt{2}+\sqrt{3} )^2 } \\
&=&|\sqrt{2}+\sqrt{3}|
\end{array}
$$

 当然、$${ \sqrt{2} + \sqrt{3} \ge 0 }$$ であるので、

$$
|\sqrt{2}+\sqrt{3}|=\sqrt{2}+\sqrt{3}
$$

 ゆえに、

$$
\sqrt{5+2\sqrt{6}}=\sqrt{2}+\sqrt{3}
$$

 これは勿論、左辺と右辺の値が一致していると言うことである。冒頭で述べたように、両辺とも「2乗すると $${5+2\sqrt{6}}$$ となる正の数」である。


私の出題にお付き合い下さい

問題、その1

次の式の2重根号を外してみよう。

問1.  $${\sqrt{17+2\sqrt{70}}}$$

問2.  $${\sqrt{8-2\sqrt{15}}}$$

 私の解答解説は次回に掲載予定です。

 (何の芸も無い出題で申し訳ない)

問題、その2

休憩しましょう。


 マガジン「高校数学1ミリメートル」の次回の更新は8月中の予定です。次回も宜しくお願い致します。


初稿 2021年3月27日
改訂 2023年7月30日


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