Vol.7 三角関数の合成について
先月出題の問題の解答
問題、その1
三角関数の合成の公式は、$${ a \sin{x} + b \cos{x} }$$ が 1項の正弦関数か余弦関数と等しいとするものである。それをどうやって表すか?
$$
a \sin{x} + b \cos{x} \cdots(1)
$$
( 1 ) で $${ a = r\cos{ \alpha }, b = r\sin{ \alpha } }$$ と表す事が出来れば、次の ( 2 ) が示す通りに、三角関数の加法定理として整理でき、( 1 ) は ( 2 ) の右辺である「1項の正弦関数」で表現する事が出来る。
$$
r\cos{\alpha}\sin{x} + r\sin{\alpha}\cos{x} = r\sin{ ( x + \alpha ) } \cdots(2)
$$
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「 ( 1 ) で $${ a = r\cos{ \alpha }, b = r\sin{ \alpha } }$$ と表す事が出来れば、」と述べたが、出来るのである。
原点を $${ O }$$ とする直交座標系の1 点を思い浮かべてほしい。どの様な点 $${ P ( a, b ) }$$ であっても、
$${ OP }$$ の長さを $${ r ( \ge 0 ) }$$
$${ OP }$$ と $${ x }$$ 軸の為す角を、 $${ x }$$ 軸から反時計回りに $${ \alpha ( 0 \le \alpha < 2\pi ) }$$
とすると、$${ a = r\cos{ \alpha }, b = r\sin{ \alpha } }$$ と表現できる。
つまり、一組の 2 数 $${ ( a, b ) }$$ について、
$$
( a, b ) = ( r\cos{ \alpha } , r\sin{ \alpha } ) \cdots(3)
$$
と表現できる。出来るのである。
因みに、この ( 3 ) は直交座標系の1点 $${ ( a, b ) }$$ を、右辺にある $${ r }$$ と $${ \alpha}$$2つの値を使って $${ P( r, \alpha ) }$$ と表す事が出来ると言っている。このやり方を「極形式」とか「極座標」等と言う。
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話を元に戻すと、( 1 ) を見ることで、 ( 2 ) を思い浮かべてほしいのである。( 1 ) を見て ( 三角関数の ) 加法定理をイメージしてくれると私はとても嬉しいのである。
( 2 ) で「有れば良いなぁ~」と仮定した文字 $${ r }$$ と $${ \alpha }$$ がどの様なものであるかを示す事が出来れば「三角関数の合成の式」を導き出した事になる。これについては、
$${ a = r\cos{ \alpha }, b = r\sin{ \alpha } }$$ としたので、
$${ r }$$ は、
点 $${ P( a, b ) }$$ の原点 $${ O }$$ からの距離を示すから、$${ r = \sqrt{ a^2 + b^2 }}$$$${ \alpha }$$ については、
$${ \cos{\alpha} = \dfrac{ a }{ r } = \dfrac{ a }{ \sqrt{ a^2 + b^2 } } }$$ かつ $${ \sin{\alpha} = \dfrac{ b }{ r } = \dfrac{ b }{ \sqrt{ a^2 + b^2 } } }$$ を満たす値
となる。よって ( 1 ) 式は、( 2 ) と上記の事を用いて、
$$
\begin{array}{ll}
&a \sin{x} + b \cos{x} = \sqrt{ a^2 + b^2 } \sin{ ( x + \alpha ) } \\ \\
&但し、\cos{\alpha} = \dfrac{ a }{ \sqrt{ a^2 + b^2 } } かつ \sin{\alpha} = \dfrac{ b }{ \sqrt{ a^2 + b^2 } }
\end{array} \cdots(4)
$$
と整理できる。上記 ( 4 ) が三角関数の合成の式である。
ところで $${ a \sin{x} + b \cos{x} }$$ について、加法定理の式の一つである
$$
\cos{x}\cos{y} \pm \sin{x}\sin{y} = \cos{ ( x \mp y ) } \cdots(5)
$$
を想起して、上記の議論を参考に $${ a = r \sin{\beta} , b = r \cos{\beta}}$$ として、
$$
\begin{array}{lll}
a \sin{x} + b \cos{x} &=& r \sin{\beta} \sin{x} + r \cos{\beta} \cos{x} \\ \\
&=& r \cos{ ( x - \beta ) }
\end{array}
$$
$${ r }$$ については、
$${ a^2 + b^2 = r^2 ( \sin^2{\beta} + \cos^2{\beta}) = r^2 \therefore r = \sqrt{ a^2 + b^2 } }$$
$${ \beta }$$ については、
$${ \cos{\beta} = \dfrac{ b }{ \sqrt{ a^2 + b^2 } } }$$ かつ $${ \sin{\beta} = \dfrac{ a }{ \sqrt{ a^2 + b^2 } } }$$ を満たす値
となり、これらをまとめて、
$$
\begin{array}{rl}
& a \sin{x} + b \cos{x} = \sqrt{ a^2 + b^2 } \cos{ ( x - \beta ) } \\ \\
& 但し、\cos{\beta} = \dfrac{ b }{ \sqrt{ a^2 + b^2 } } かつ \sin{\beta} = \dfrac{ a }{ \sqrt{ a^2 + b^2 } }
\end{array} \cdots(6)
$$
とすることも出来る。
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補足説明を少々・・・
1組の2数 $${( a, b )}$$ は、直交座標系上の1点の座標 $${P( a, b )}$$ と考える事が出来るのは既に述べた。ところで ( 6 ) は、
$$
a = r\sin{\beta}, b = r\cos{\beta}, r = \sqrt{a^2 + b^2} \cdots( A )
$$
とした結果である。これは、$${ X }$$ 座標を正弦関数で、$${ Y }$$ 座標を余弦関数で表している。そこで「$${ \beta }$$ をどの様にとるのだろうか?」と考える人は居られると思う。
この場合は $${ \beta }$$ を「原点 $${ O }$$ と $${ P( a, b ) }$$ を結ぶ線分 $${ OP }$$ が $${ Y }$$ 軸の正の向きから時計回りに為す角」とすると良い。そうする事で
$$
P( a, b ) = P( r\sin{\beta}, r\cos{\beta} )
$$
と表現できる。
任意の1組の2つの実数 $${( a, b )}$$ 其々を上記 $${(A)}$$ の様に表現できるわけである。
( ここで、この $${P( r, \beta )}$$ のやり方を「極座標、極形式」と言わないかもしれない )
さて、$${\beta}$$ の角のとり方を、前述の $${\alpha}$$ の角のとり方の立場から眺めてみよう。
$${ \beta }$$ は $${ Y }$$ 軸の正の向きから時計回りにとるのだった。$${\alpha}$$ は $${ X }$$ 軸の正の向きから反時計回り(これを正の回転方向としよう)にとる。なので $${\alpha}$$ の角のとり方の立場から見ると $${\beta}$$ は、 $${\dfrac{\pi}{2}}$$ 進んだところから負の回転方向へとることとなる。よって、
$$
\beta = \dfrac{\pi}{2} - \alpha \cdots( B )
$$
となる。
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さて、( 4 ) と ( 6 ) により「 $${ a\sin{x} + b\cos{x} }$$ 」を2通りに表現した。これらは互いに表現は異なるが、同じ値であることを検算してみよう。
( 4 ) で $${ \cos{\alpha} = \dfrac{ a }{ \sqrt{ a^2 + b^2 } } かつ \sin{\alpha} = \dfrac{ b }{ \sqrt{ a^2 + b^2 } } }$$
( 6 ) で $${ \cos{\beta} = \dfrac{ b }{ \sqrt{ a^2 + b^2 } } かつ \sin{\beta} = \dfrac{ a }{ \sqrt{ a^2 + b^2 } } }$$
であるから、
$$
\cos{\alpha} = \sin{\beta}, \sin{\alpha} = \cos{\beta}
$$
である事が言える。その上で ( 4 ) と ( 6 ) の右辺の三角関数部分について、
$$
\begin{array}{lll}
\sin{ ( x + \alpha ) } &=& \sin{x}\cos{\alpha} + \cos{x}\sin{\alpha} \\ \\
&=& \sin{x}\sin{\beta} + \cos{x}\cos{\beta} \\ \\
&=& \cos{ ( x - \beta ) }
\end{array}
$$
よって、
$$
\sin{ ( x + \alpha ) } = \cos{ ( x - \beta ) } \cdots( 7 )
$$
が言え、それ故 ( 4 ) と ( 6 ) の右辺は、互いに同じ値の別の表現であることを示す事が出来た。
他の方法でも出来る。補足説明の ( B ) を使って ( 7 ) を示してみると、( B ) より $${ \beta = \dfrac{\pi}{2} - \alpha }$$ であるから、( 7 ) 右辺から左辺を導くと、
$$
\begin{array}{lll}
\cos{ ( x - \beta ) } &=& \cos{ \left[ x - ( \dfrac{\pi}{2} - \alpha ) \right] } \\ \\
&=& \cos{\left[ ( x + \alpha ) - \dfrac{\pi}{2} \right]} \\ \\
&=& \sin{ ( x + \alpha ) }
\end{array}
$$
それ故 ( 7 ) が成り立つという分けである。式変形で余弦関数から正弦関数へ変わっていくところがあるが、これについては $${ y = \cos{\theta} }$$ グラフを正の方向へ $${ \dfrac{\pi}{2} }$$ 進めたものが $${ y = \sin{\theta} }$$ のグラフと重なることからも了解頂けると思う。
結局、三角関数の合成の式は ( 4 ) と ( 6 ) のどちらでも良い。
どちらでも良い、どうでも良い、どうにでもなれ? と云うのは冗談だが(しかし色々な事で、つい言ってしまいそうだ)、兎に角、
$$
a \sin{x} + b \cos{x} \cdots(1)
$$
この ( 1 ) の式の形を見る度に、正弦関数か余弦関数、どちらかの加法定理の式の形を思い出して下さると私は嬉しい(とても嬉しい)。
問題、その2
今、山羊乳がブームである。かなりのブームである(私の中で)。先日も札幌市地下街オーロラタウンにある山羊乳専門店のイートインコーナーで山羊乳2杯分を頂いてきた(勿論お支払いをして)。
別に物珍しさだけからでは無い。牛のゲップ(が含むメタンガス)のもたらす地球温暖化効果の話題を報道で見てからである。地球と牛乳と山羊乳の将来を考えながら美味しく頂いている。
それに食品は、品数豊富に頂く方が健康に良いそうではないか。ならば、私の頂く食品リストに山羊乳も加えようと思う分けである。何と、地球温暖化のせいで、頂く食品の品数が新たに一品増えたせいで、私の健康増進に役立っているではないか。
(これは皮肉か?)
更に私の考えは暴走し「メタンガスの温室効果が高いなら、部屋にメタンガスを充満させて、その温室効果で厳冬期の私の部屋の暖房費を抑えよう」と思い付いた(冗談です)。
こんな事迄書いてしまうとは、温暖化問題を含む環境問題の私の意識の高さからだろう(これも冗談かもしれない)。
お知らせ
この「問題その2」の解答解説につきましては、PDF版では「断腸の思いで(?)」カット致しますので、御了承下さい。
今月の問題
私の出題にお付き合い下さい。
問題、その1
$${\sin{x} + \cos{y}}$$ を三角関数の積の形で表現せよ。
$${\sin{x} + \cos{x}}$$ を三角関数の積の形で表現しようとすると、どうなるか?更に、三角関数の合成の式と比較せよ。
( 解答解説は次回に掲載予定です )
問題、その2
休憩しましょう。
マガジン「高校数学1ミリメートル」の次回の更新は、令和6年3月31日迄に致す予定です。
次回も宜しくお願い致します。
初稿 2024年 2月 8日
改訂 2024年 2月28日
高校数学1ミリメートル
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