ミツバチはすごい!?何かと便利で美しいハニカム構造
こんにちは。和からの数学講師の岡本です。みなさんはハニカム構造って聞いたことありますか?次の図のような正六角形の敷き詰められた構造の事をいいます。美しいですね。
どこかで見たことありませんか?そうです。ミツバチの巣の構造に似ています。
「ハニカム」とはHoneycomb(ミツバチの巣)という意味で、由来は蜂の巣そのままだったのです。さて、この正六角形が敷き詰められた構造にですが、何かと都合がいい構造であることが知られています。今回はこの「都合のいい」性質についていくつかご紹介しようと思います。
1.無駄なく敷き詰められる
平面を同じ形、同じ大きさの図形で敷き詰めることを考えます。ただし2枚以上の図形が重なる場所や、逆に1枚も図形が載らない場所が出ないようにします。これは数学でいう「平面充填」という問題の、繰り返し模様を考えることと同じです。このような「繰り返し」によって描かれる模様は実際にアートの世界でも多用されており、マウリッツ・エッシャーの作品にも見ることができます。
最も単純な図形の種類として「正多角形」を考えます。例えば正三角形で敷き詰めたのが左、正方形(正四角形)で敷き詰めたのが右となります。
しかし、このような敷き詰めはどんな正多角形でもできることではありません。例えば正五角形の場合、以下のようにぴったりと平面に収まりません。
では、どんな正多角形のとき、うまく敷き詰められるのでしょうか。実は次のような事実がピタゴラスによって証明されています。
平面にうまく敷き詰められる正多角形は「正三角形」「正方形」「正六角形」のみである。
なんと3種類しかなかったのです!しかももう一つの敷き詰め可能な図形が正六角形、つまり、最初にお見せした「ハニカム構造」だったわけです。
2.丈夫な構造(力の分散)
では続いての視点ですが、次は、構造の丈夫さに注目していきます。実は形によって頑丈さが全く違ってくるのです。
例えば先ほどの平面敷き詰めであった正方形の敷き詰め、一見問題なさそうですが、一定の向きから力を加えられると一気に崩れてしまいます。例えば、厚紙を使ってできた四角い部屋のタワーを想像してみてください。斜めから抑えるとぺちゃんこになってしまいますね。
その点「正三角形」「正六角形」はぺちゃんこにはなりそうにないですよね。このような具合に壊れやすい構造とそうでない構造があります。
続いて「力の分散」についてです。内部に何かしらの力が加わったとき、力はどこかに伝搬します。その際例えば正三角形の場合、各3方向の辺に、正方形の場合4つの辺に等しく分散されます。一定の力が加わったとき、なるべく小さく全体に散らしたいとき、辺の数が多い方が有利になります。
「円」は正”無限”角形と考えることができ、この点においては「最強」です。しかし、平面にうまく敷き詰められる多角形の中では正六角形が最強となります。実際に蜂の巣は「いかに多くの部屋を」「以下に丈夫に」作れるかという点で最適な構造をしており、蜂たちはこのことを経験的に知ってるようです。自然界の数学的背景・構造というのはやはり美しいです。
また、「力の分散」に関連した話題として、サッカーのゴールネットが挙げられます。以前はいわゆる通常の四角い模様の網だったのですが、丈夫さ・衝撃吸収といった観点から、現在は「ハニカム構造」のネットが公式戦では主流です。
3.ソーシャルディスタンスの視点
さて、最近コロナの影響でよく耳にする「密」や「ソーシャルディスタンス(あるいはフィジカルディスタンス)」。飛沫感染を防ぐため、厚生労働省はなるべく密集すること(密)を避け、目安として約2mの距離を保つということを推奨しています。
では、ここで気になるのが次の問題です。
ソーシャルディスタンスの条件をクリアしつつ、どれぐらい密になれるでしょうか。
※もちろん密は避けましょう。
この問題は次のような円の敷き詰め問題(サークル・パッキング)に書き換えられます。
半径1メートルの円を、互いに重ならないように敷き詰めるとき、密度が最大になるような敷き詰め方を求めよ。
例えば、左下のような敷き詰め方がありますが、これは密度最大ではありません。右下の敷き詰め方の方が密度が高いです。実はこの右下が密度最大の敷き詰め方になっています。円の接しているところに線を入れてバリアを張ると、、、そうなんです。蜂の巣と同じ構造が現れるのです。
蜂の巣では、ソーシャルディスタンスも考慮されていることがわかります!ミツバチさん、すごすぎます。。。
4.さいごに
いかがでしたでしょうか。蜂の巣に隠された驚きの構造、それは想像以上のものでした。また、機能性とは別にデザインとしても正六角形というのは古来から様々な模様の中で使われてきました。デザインや幾何学模様に関するオススメの書籍として「世界一美しい数学塗り絵」をご紹介します。この本では、さまざまな数学的な平面敷き詰め模様やフラクタル模様など見るだけも十分に楽しめる内容になっています。実際に岡本も、この本をもとに切り絵の題材を考えることがあります。
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<文/岡本健太郎>
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