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◯畳用?ダメダメ!「ちゃんとつかえる」空気清浄機を選ぶための知識:CADR・ACHって知ってる?

世の中にはいろいろな空気清浄機があります。
「使える空気清浄機」を選ぶには、空気清浄機の評価基準を知らないと無理だと思いました。

以下で説明するCADRについては、詳しい測定方法をネットで見つけることはできませんでした。
また、ACHについては一般的な定義式を見つけることはできませんでしたが、筆者が根拠をもって適当と考える定義式を与えます。
不適当な箇所があったら指摘してください。


使える空気清浄機選択のための 3+1 つの基準

  1. CADR (”風量×フィルター性能”)

  2. ACH

  3. CADR/円

  4. フィルター交換費用を合わせたコスパ

後の節でこれら4つの基準は詳しく説明します。(年中エアコンを使っている家庭は、まず初めに「フィルター交換まで考えてコスパ最強な空気清浄機」の章を見てください。)

CADRは空気清浄機の性能を表します。極論これが最も重要です。
2はCADRから導かれるので、極論CADRが高いものを選べばよいのですが、それは値段的に厳しい人もいるでしょう。
そのとき、部屋の面積に応じてどれくらいのCADRの空気清浄機が必要になるかを計算するのにACHが必要です。

空気清浄機を買うときにコスパも気になるでしょう。
コスパを表すのがCADR/円です。
1円あたりのCADR値を表します。
なお、電気代は度外視しています。
また、フィルター交換費用も一旦無視していますが、実際にはフィルター費用はかなり高額になります
(国内メーカーは10年交換不要を謳っていたりするが、24時間運用しているなら長くとも1年もすれば交換すべきでしょう。クレアウィンフィルターで有名なクレアさんによれば、2ヶ月もすればHEPAフィルターの能力は落ちるとのこと。環境によるとは思いますがそれは困りますね。)

CADRとは

CADRとは米国家電製品協会(AHAM)によって規定された規格です。
CADRはClean Air Delivery Rateの略で、日本語では「清浄空気供給率」などと訳されます。
これはどれほどの効率で清潔な空気を供給できるかを表す値で、これこそが「空気清浄機の性能の数値化」ともいえます。
この指標を利用することで「フィルター性能は高いが、風量が低い」「風量は多いが、フィルター性能が低い」といった空気清浄機を選ばずに済みます。

つまり、デカければデカいほど良い数値です。

CADRは 煙、ホコリ、花粉の3つの項目でテストされます。
粒子径は主に
煙       →0.09~1μm
ホコリ→0.5~3μm
花粉    →5~11μm
です。
ですから、CADRの煙の値が大きければ、0.09-1μmの粒子の捕集率が高いということです。

なお、国内メーカーではCADRを公開していない(クソみたいな)製品が数多くあります。特に安い加湿空気清浄機はこの傾向にあります。
DysonもCADRを公開していないので信用していません。

CADRの定義

CADR (煙) は
1. 空気清浄機が除去する煙粒子の割合を r (1を最大とする割合)
2.空気清浄機が供給する単位時間あたりの空気の流量を m (単位は悪しき単位”フィート”を用いたCFM)
とするとき、 n=mr によって定義されます。
より正確には

$$
\text{CADR} [\mathrm{CFM}=\mathrm{ft}^3/\mathrm{min}]=(\text{フィルターの煙除去率}) \times (\text{風量}[\mathrm{ft}^3/\mathrm{min}])
$$

です。

CADR値に単位を付けずに公開しているところもあります。
おそらく何も書いていなければ単位はCFMなのですが、例えばlevoitは単位は $${ \mathrm{m^3/h}}$$ を用いています。(以下にCFMと$${ \mathrm{m^3/h}}$$の換算方法を紹介します。)
https://vesync.jp/products/levoit-airpurifier-core-300
不安な場合は問い合わせが必要です。

埃や花粉も同様です。

CADR値の換算 (m^3/h to cfm)

CADR値として、$${ \mathrm{m^3/h}}$$が与えられているときにcfmに変換する方法です。

$$
\text{CADR} [\mathrm{CFM}=\mathrm{ft}^3/\mathrm{min}]=\frac{\mathrm{CADR}[\mathrm{m}^3/\mathrm{h}]}{60[\mathrm{min/h}]}\times 35.315=\mathrm{CADR}[\mathrm{m}^3/\mathrm{h}]\times 0.5886
$$

cfmのほうが値としては小さくなるんですよね。数字のトリックを使いたければ$${ \mathrm{m^3/h}}$$を使うでしょうね。

ACHとは

ACHとはAir Changes per Hourの略で、1時間あたりに部屋の空気がどれだけ交換されるかを示す指標です。
ACHが5であれば、空気が5回交換されるものであると考えてください。

ACHの定義

以下は私が妥当だと思うACHの定義です。
妥当だと考えられる理由の一つとしては、目標ACHを達成するための必要なCADR値が

$$
\mathrm{CADR=部屋の体積\times 目標ACH \div 60}
$$

で与えられていることが多いというものが挙げられます。例えば下のプレプリント。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.08.09.22278555v8

なお、悪しき単位ftのせいで面倒な変換を施す必要があります。

$$
\text{ACH}\ [1/\mathrm{h}]
=1.7\times \frac{\text{CADR}[\mathrm{cfm}=\mathrm{ft}^3/\mathrm{min}]}{\text{部屋の体積}[\mathrm{m}^3]} \\
=\frac{1}{35.315}\times \frac{\text{CADR}[\mathrm{ft}^3/\mathrm{h}]}{\text{部屋の体積}[\mathrm{m}^3]}\\
= \frac{\text{CADR}[\mathrm{m}^3/\mathrm{h}]}{\text{部屋の体積}[\mathrm{m}^3]}
$$

これにより計算される値が、1時間あたりの空気の交換回数です。
(ただし、実際には部屋の中には空気が淀む場所が存在するはずです。何度もフィルターを通る空気と、そうでない空気が存在します。)

ACHの計算例 (Levoit core 300)

天井高2.4mの8畳間(ここでは江戸間12.36$${\mathrm{m}^3}$$)で、Levoit core 300を使うことを考えてみましょう。
これはアマゾンで人気のかなり安い空気清浄機です。

Levoit core 300はCADR値が $${260\mathrm{m^3/h} }$$と公表されています。煙なのかホコリなのか花粉なのかわかりませんが、とりあえずこれで計算します。

$$
\text{ACH}=\frac{260[\mathrm{m}^3/\mathrm{h}]}{12.36\times 2.4[\mathrm{m}^3]}=8.76
$$

ACHは8.76とわかりました。20畳用と書いてある空気清浄機の最強風量で8.76です。

少しわかりにくいので、CADR値をほかでも使われているcfmに換算してみましょう。

$$
\text{CADR} [\mathrm{CFM}=\mathrm{ft}^3/\mathrm{min}]=\frac{260[\mathrm{m}^3/\mathrm{h}]}{60[\mathrm{min/h}]}\times 35.315=153
$$

CADRは153cfmです。cfmの代わりに$${\mathrm{m^3/h}}$$を使うと値が大きくなりますね。

ACHの計算例 (ブルーエア Classic 680i/690i/605)

公称のCADR(煙)で計算しましょう。500cfmが公称値です。
https://www.blueair.jp/wp-content/uploads/2019/11/900088_CL500_600_A_UM_REV07_compressed.pdf

$$
\text{ACH}=35.315\times \frac{60\times 500[\mathrm{ft}^3/\mathrm{min}]}{12.36\times 2.4[\mathrm{m}^3]}=28.63
$$

ACHは28.63とわかりました。これ1台を最強風量で使えば8畳の部屋では1時間に28回空気がろ過されるということになります。
もちろん最大風量です。

ACHの計算例 (シャープ FP-T120)

シャープの家庭用空気清浄機として最高スペック(風量で見た場合)をもつモデルです。空気清浄機単機能で、加湿機能などはありません。(FP-S120とスペックは同じ。)
https://jp.sharp/kuusei/products/fpt120/spec/

煙CADR値は383cfmです。

ACHはどれくらいあればよい?

極論、あればあるほどよいです。
あればあるほどよいので、具体的な基準には興味ないですが、以下を見れば12ACH以上はほしいなという気分になります。

https://med.saraya.com/themes/gakujutsu@medical/guideline/pdf/kankyocdc.pdf

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.08.09.22278555v8.full

以下は各ACHに対して、粒子の99%および99.9%除去に要する時間です。

https://med.saraya.com/themes/gakujutsu@medical/guideline/pdf/kankyocdc.pdf 15ページ

目標ACHを達成するために必要なCADR

$$
\mathrm{必要CADR=部屋の体積\times 目標ACH \div 60}
$$

これで計算してみましょう。

CADRで算出したACH(換気量)と風量を用いて計算した換気量

ここでは、ACHをCADRを用いて計算しました。
それは、そのほうが「きれいな空気との入れ替わり」を正確に表現できていると考えられるからです。

では、単なる風量で算出した1時間あたりの換気量(つまり、フィルターを通る空気の量)はCADRで算出したACHとどう変わるでしょうか。

ブルーエア Classic 690i を例に考えてみます。

これは、最大風量で1時間あたり$${1105\mathrm{m^3}}$$の空気を供給します。

一方、CADR (ここでは比較のために単位を$${\mathrm{m^3/h}}$$に換算する)は、$${500\div 0.588=850\ \mathrm{m^3/h}}$$です(換算法はCADRの章にて記述)。

1105と850。だいぶ違いますね。
これのどっちを採用してACHを算出するかで必要な空気清浄機も大きく変わることでしょう。

目標ACHを達成するためにはどうすればよいか

目標ACHを達成するためには次の方法が考えられます。

・高性能(CADR値が高い)な空気清浄機を導入する
・中性能なものを複数個導入する

後者のほうが値段は安くなりやすいと思います。

CADR/円 で見るコスパの良い空気清浄機

値段は基本的に現在のアマゾンの価格で見ることにしますが、変動が大きいです。
また、CADRは煙で計算します。

さらに、実際にはフィルター交換費用がかかるため、それを考慮しなければいけません。

商品が少ないと思われるかもしれませんが、CADRを公開している製品が少ないのです。

調べた範囲内でコスパの良いものはこちらです。
幸い、上位の機種はフィルター交換費用もそこまで高くないです。
表のグレーになっているものは中古しか手に入らないもので、中古価格は現在のアマゾンの価格を採用します。

【1位】Levoit Core 300

⚠ levoitは CADRのスコアが煙なのか、ホコリなのか花粉なのか書いていません。したがって、実際には CADR/円 を煙の値で比較した場合は2位以下に落ちる可能性があります。

なお、 core 300S というスマホでも操作できるバージョンのほうが便利です。
https://amzn.to/41khjS9
(それを買うくらいなら2位のブルーエア blue max 3450i のほうがコスパいいです)

【2位】ブルーエア Blue Max 3450i

アプリを使って外出先などで操作したり、スケジュール設定もできる便利な製品です。
あとおしゃれ。

【3位】ブルーエア Blue Max 3350i

フィルター交換まで考えてコスパ最強な空気清浄機

エアコンを常に使っている家庭だとクレアウィンフィルターの導入がまず最初に挙げられます。

・エアコンにクレアウィンフィルター
・扇風機にクレアウィンフィルター

これらによって簡単に大風量の空気清浄機が手に入ります。
扇風機を使う場合は少し見た目が悪くなるのと、夏以外だと寒いかもしれない点には注意です。
(クレアウィンタワーという製品が以前クラウドファンディングで出されていたので、それが製品化されれば冬でも使えるものになります。)

クレアウィンフィルターというただのフィルターです。
これをエアコンの吸気口部分に貼るだけで大風量の空気清浄機が完成します。

なんといっても安いです。空気清浄機本体は家にあるもので良いのですから。
あとは「空気清浄機の要」ともいえるフィルター交換にその浮いた費用を回すだけです。(フィルター交換をケチってはいけません。)

クレアウィンフィルターのフィルター性能は中性能だが、風量でその性能を賄うという発想です。

フィルターはすぐ見えるので、汚れたら交換というわかりやすい指標。

風量などにもよりますし、CADRが公開されているわけではありません。しかし、どのくらいで空間の粒子を取れたかという実験結果はHPで公開されています。

参考

簡単な日本語の説明は下から読めます。(しかし、なんで定義を書かないんでしょうね。)


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