【第6回垂れ流し数学模試】文型第5問・理型第6問 解答例
皆さんこんにちは。
今回は第6回垂れ流し数学模試の文型第5問・理型第6問の解答例です。
珍しく数列や数学的帰納法による証明をメインとして出題してみました。
問題
考え方1
(1)①は$${\displaystyle \sum_{k=1}^1{a_k}=a_1}$$等に気を付ければすぐです.
(1)②は条件Pの式で, $${n}$$を$${n+1}$$に置き換えた場合の等式から,
もとの$${n}$$の場合の等式を辺々引くことを考えます.
ちょっと簡単にするため,
$${\displaystyle S_n=\sum_{k=1}^na_k}$$, $${\displaystyle S_n=\sum_{k=1}^n{a_k}^2}$$
とおくと, 条件Pは
$${(1+S_n)^2=2n+1+T_n}$$
と書けて, これから考えるのは
$${(1+S_{n+1})^2-(1+S_{n})^2=\{2(n+1)+1+T_{n+1}\}-(2n+1+T_n)}$$
ということになります.
$${S_{n+1}=S_n+a_{n+1}}$$, $${T_{n+1}=T_n+{a_{n+1}}^2}$$に気を付けて変形すると
$${(1+S_{n+1})^2-(1+S_{n})^2=2a_{n+1}+{a_{n+1}}^2+2a_{n+1}S_n}$$
$${\{2(n+1)+1+T_{n+1}\}-(2n+1+T_n)=2+{a_{n+1}}^2}$$
がわかります.
したがって,
$${2a_{n+1}+{a_{n+1}}^2+2a_{n+1}S_n=2+{a_{n+1}}^2}$$
すなわち
$${S_n=\dfrac{1}{a_{n+1}}-1}$$ (…(☆))
がわかります.
目指すのは$${a_{n+1}}$$と$${a_n}$$の関係だったので,
$${n\geqq 2}$$のときに$${S_n-S_{n-1}=a_n}$$であることを利用して求めます.
ただし$${n=1}$$のときは$${S_{n-1}}$$が意味をなさないので別途確かめましょう.
(2)はどの解法を使うにせよ数学的帰納法がメインになるかと思います.
ただ, (1)②の通り, 最初にnとn+1, 次にnとn-1と隣接比較を2回やっているので、
そのまま(1)の逆をたどる場合は2段階に示すことになるかと思います.
解答例では上の(☆)を先に示してから, もとの条件Pを示していますが,
(i) n=1, 2の成立 (ii) n=k, k+1の成立からn=k+2の成立を示す
のパターンの帰納法を使う手もあります.
解答例1
(1)
①
条件Pより,
$${\displaystyle\left(1+\sum_{k=1}^1{a_k}\right)^2=2\cdot 1+1+\sum_{k=1}^1{a_k}^2}$$
すなわち
$${(1+a_1)^2=3+{a_1}^2}$$
これを解くと,
$${1+2a_1+{a_1}^2=3+{a_1}^2}$$, $${\boldsymbol{a_1=1}}$$
②
$${\displaystyle S_n=\sum_{k=1}^na_k}$$, $${\displaystyle S_n=\sum_{k=1}^n{a_k}^2}$$とおくと,
条件Pより $${(1+S_n)^2=2n+1+T_n}$$
したがって
$${(1+S_{n+1})^2-(1+S_{n})^2=\{2(n+1)+1+T_{n+1}\}-(2n+1+T_n)}$$
が成り立つが,
$$
\begin{aligned}
&(1+S_{n+1})^2-(1+S_{n})^2\\
=&(1+a_{n+1}+S_n)^2-(1+S_n)^2\\
=&(1+a_{n+1})^2+2(1+a_{n+1})S_n+{S_n}^2-(1+2S_n+{S_n}^2)\\
=&2a_{n+1}+{a_{n+1}}^2+2a_{n+1}S_n
\end{aligned}
$$
また
$$
\{2(n+1)+1+T_{n+1}\}-(2n+1+T_n)=2+{a_{n+1}}^2
$$
であるから,
$${2a_{n+1}+{a_{n+1}}^2+2a_{n+1}S_n=2+{a_{n+1}}^2}$$
すなわち $${S_n=\dfrac{1}{a_{n+1}}-1}$$ (…(☆)) が成り立つ.
$${n\geqq 2}$$のとき,
$$
\begin{aligned}
a_n&=S_n-S_{n-1}\\
&=\dfrac{1}{a_{n+1}}-1-\left(\dfrac{1}{a_n}-1\right)\\
&=\dfrac{1}{a_{n+1}}-\dfrac{1}{a_n}
\end{aligned}
$$
であるから,
$$
\dfrac{1}{a_{n+1}}=a_n+\dfrac{1}{a_n}=\dfrac{{a_n}^2+1}{a_n}
$$
したがって, $${n\geqq 2}$$ならば, $${a_{n+1}=\dfrac{a_n}{{a_n}^2+1}}$$
$${n=1}$$のとき, 条件Pにより
$${\displaystyle\left(1+\sum_{k=1}^2{a_k}\right)^2=2\cdot 2+1+\sum_{k=1}^2{a_k}^2}$$
これと①の$${a_1=1}$$より,
$${(1+1+a_2)^2=5+(1^2+{a_2}^2)}$$
これを解くと, $${4+4a_2+{a_2}^2=6+{a_2}^2}$$より,
$${a_2=\dfrac{1}{2}=\dfrac{1}{1^2+1}=\dfrac{a_1}{{a_1}^2+1}}$$.
以上により, すべての自然数$${n}$$に対して,
$${\boldsymbol{a_{n+1}=\dfrac{a_n}{{a_n}^2+1}}}$$
(2)
(1)②における$${S_n}$$, $${T_n}$$を引き続き用いる.
まず, すべての自然数$${n}$$に対して,
(1)②の(☆)の等式 $${S_n=\dfrac{1}{a_{n+1}}-1}$$ が成り立つことを,
数学的帰納法で示す.
(i) $${n=1}$$のとき,
$${a_2=\dfrac{a_1}{{a_1}^2+1}=\dfrac{1}{1^2+1}=\dfrac{1}{2}}$$
であり,
$${S_1=a_1=1=\dfrac{1}{\frac{1}{2}}-1=\dfrac{1}{a_{2}}-1}$$
より(☆)が成り立つ
(ii) $${n=k}$$で(☆)が成立するとすると, $${S_k=\dfrac{1}{a_{k+1}}-1}$$.
$${n=k+1}$$のとき,
$$
\begin{aligned}
S_{k+1}&=S_{k}+a_{k+1}\\
&=\dfrac{1}{a_{k+1}}-1+a_{k+1}\\
&=\dfrac{{a_{k+1}}^2+1}{a_{k+1}}-1\\
&=\dfrac{1}{a_{k+2}}-1
\end{aligned}
$$
したがって, $${n=k}$$で(☆)が成立すると仮定すると,
$${n=k+1}$$でも(☆)が成立する.
よって, すべての自然数$${n}$$に対し, (☆)が成立する.
さて, 条件Pは, すべての自然数$${n}$$に対して
$${(1+S_n)^2=2n+1+T_n}$$ (…(★))
が成り立つことと同値である.
すべての自然数$${n}$$に対し, (★)が成立することを,
再び数学的帰納法を用いて示す.
(i) $${n=1}$$のとき,
$${(1+S_1)^2=(1+a_1)^2=(1+1)^2=4}$$,
$${2\cdot 1+1+T_1=3+{a_1}^2=2+1^2=4}$$
よって, (★)は成り立つ.
(ii) $${n=k}$$で(★)が成立するとすると,
$${(1+S_k)^2=2k+1+T_k}$$
$${n=k+1}$$のとき,
$${(1+S_{k+1})^2=2(k+1)+1+T_{k+1}}$$
すなわち, $${(1+S_{k+1})^2=2k+3+T_{k+1}}$$ (…(ア))
を示せばよい.
(ア)の左辺は, (☆)より,
$$
(1+S_{k+1})^2=(1+a_{k+1}+S_k)^2=\left(a_{k+1}+\dfrac{1}{a_{k+1}}\right)^2
$$
一方, (ア)の右辺は, 再び(☆)により
$$
\begin{aligned}
2k+3+T_{k+1}&=2k+1+T_k+2+{a_{n+1}}^2\\
&=(1+S_k)^2+2+{a_{k+1}}^2\\
&=\left(\dfrac{1}{a_{k+1}}\right)^2+2+{a_{k+1}}^2\\
&=\left(a_{k+1}+\dfrac{1}{a_{k+1}}\right)^2
\end{aligned}
$$
したがって, $${n=k}$$で(★)が成立すると仮定すると,
$${n=k+1}$$でも(★)が成立する.
以上より, すべての自然数$${n}$$に対して(★)が成り立つことが示されたので,
数列$${\{a_n\}}$$は条件Pを満たす. (証明終)
考え方2 ((2)(☆)の証明のみ, 解答例省略)
(2)の(☆)がすべての自然数$${n}$$で成り立つことの証明として,
解答者の方からよい証明方法をお寄せいただいたので紹介します.
(1)②の途中で出てきた$${a_n=\dfrac{1}{a_{n+1}}-\dfrac{1}{a_n}}$$に注目します.
これ自体は, (1)②の$${a_{n+1}=\dfrac{a_n}{{a_n}^2+1}}$$と同値であることが示せます.
(というか$${n=1}$$の場合が別である点を除けば, (1)②の計算を逆順にすればよいだけです.)
この式で$${n}$$を$${1}$$から$${k}$$まで辺々足し合わせると,
$$
\begin{aligned}
S_k&=a_1+a_2+\cdots+a_k\\
&=\left(\dfrac{1}{a_2}-\dfrac{1}{a_1}\right)+\left(\dfrac{1}{a_3}-\dfrac{1}{a_2}\right)+\cdots+\left(\dfrac{1}{a_{k+1}}-\dfrac{1}{a_k}\right)\\
&=\dfrac{1}{a_{k+1}}-\dfrac{1}{a_1}=\dfrac{1}{a_{k+1}}-1
\end{aligned}
$$
となり, うまく消えてくれて数学的帰納法を1回分減らせます.
部分分数分解などで見たことのある和のとり方で,
$${A_{n+1}-A_{n}}$$の形の数列の和の場合,
$${(A_2-A_1)+(A_3-A_2)+\cdots+(A_{n+1}-A_n)=A_{n+1}-A_1}$$
と項がうまく消えるのは, 使えると非常に効果を発揮します.
まとめ
以上, 第6回垂れ流し数学模試の文型第5問・理型第6問の解答をお届けいたしました。
数列の単なる各項の和だけではなく, 各項の2乗の和が出てきたので
一筋縄ではいかないかもしれません。
ところで、よく問題として見かけるのは
条件から数項を求める → 一般項(今回は漸化式だけだが)を推測 → 数学的帰納法で示す
という方向性の問題もよく見かけます.
このうち
「数列の一般項を推測 → 数学的帰納法で示す」は、
この問題で言うと、どちらかというと(1)②に近いことです。
これは
「条件を満たす数列があれば、その数列しかない」
ことを示しています。
一方で、
「本当にその数列が条件をみたすかどうか」
は、この手の問題ではあまり重要視されません。
この問題では(2)に近いです。
本来はこの両方をやって初めて条件を満たす数列が求められたといえるでしょう。
それでも, 条件の式が単なる漸化式のように
$${a_n}$$から$${a_{n+1}}$$が決まることがすぐわかれば
「推測して帰納法」だけで十分だと思います。
あるいは、問題文で
「数列が○○の条件を満たすとき、その数列を求めよ」
とあれば、
その逆の「本当にその数列が条件を満たすか」は問題で問われていないので、必要ありません。
(書いたほうが丁寧ではあるが)
しかし今回みたいに、数列の項が決まることがすぐに判断できるかわからない場合で、しかも
「○○の条件を満たすような数列を求めよ」
と問われている場合は、
この2つをセットにして記述するほうがよりよいでしょう。
それではこの記事を終わりたいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。