Vol.53 全日本教育工学協議会全国大会の参加報告
全国教育工学協議会に参加して感じたこと
先月、第50回全国教育工学研究協議会に発表者として参加してきました。10年前の自分がこんな会で発表するなんて、考えもしなかったでしょう。
少しずつ成長してきたんだなと実感しました(笑)。
この2日間は非常に充実しており、1日目は授業参観と公開授業、学校での研究紹介や基調講演、2日目は研究発表とパネルディスカッションが行われ、どのプログラムも刺激的でした。
まず感じたのは、日本の教育のレベルの高さです。
全国から多くの情熱を持った先生方が集まり、発表や意見交換をされている姿を見て、私も大いに刺激を受けました。
今回は1日目の授業参観で感じたことをまとめてみました
授業参観で見た赤坂中学校の取り組み
授業参観では、赤坂中学校で行われていた小4から中3までの授業を見学しました。
どのクラスも情報活用能力が非常に高く、ICT機器だけでなく、教科書や資料集、ネット上の情報も駆使して課題解決に向けて取り組んでいました。
友人と机を組み合わせて議論したり、一人で集中して作業したりと、生徒たちは目的意識を持って学びに向き合っている姿が印象的でした。
自分で学ぶことを決定し、進め方を自己選択し、計画的に取り組む姿勢が定着している。
こうした姿はまさに「自己調整学習」を行なっている子との現れてではないかと感じました。
ICTの活用と自己調整学習の定着
観察学習の段階にある生徒のために、ICTがうまく活用されている場面も多く見られました。
例えば、GoogleスプレッドシートやFigmaの操作が全員一定のレベルで行えるよう指導されており、行き詰まった時や他の生徒と協議する際にも役立っていました。
最初は人の操作を真似る子もいるのではと心配していましたが、参観した限りではそういった生徒は見られず、各自が自分なりのやり方で学びを深めている印象でした。
心に残った「技術」の授業
特に心に残ったのは、技術の授業で行われたエネルギー分野のディベートです。
各班でエネルギーの種類について調べ、メリット・デメリットをまとめた後、それらをもとにディベートを行うというものでした。
生徒たちは図書館のPCやタブレットを使って資料を作成し、複数の情報源を組み合わせて説得力を高めていました。
情報のファクトチェックも自然と必要になる授業設計で、生徒たちは情報の信頼性について考える良い機会を得ていたようです。
この授業が特に印象的だったのは、各教科の学びがつながっていると実感できる点でした。
ディベートには国語的な要素が必要で、情報整理には数学的なスキルが活かされ、また地理的・歴史的な視点も求められました。
教科横断型の学びの実践として優れており、生徒にとっても教科の枠を超えた知識の活用を経験できる貴重な機会だったと思います。
ICTとともに進化する教育
今回の授業参観を通して、教師が全てをコントロールするのではなく、生徒たちが自ら学びを進められるようにICTがサポートしている姿がとても印象的でした。
従来は、今日の学習内容や進行状況を瞬時に把握するのは難しかったですが、ICTの活用によってこれが可能になり、生徒一人ひとりへの支援がしやすくなりました。
グループ活動も、ICTの支援により質が高まり、学びの主役がしっかりと生徒に移っているのを実感しました。
私たち教師の役割は、この学びをICTで支援し、生徒が自ら考え行動できる環境を整えることなのだと、改めて気づかされました。