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「バッタくん町に行く」
ディズニー最大のライバルだったフライシャー兄弟が最後に作った長篇アニメです。
ニューヨークの街の中に小さな空き地があり、その草むらに昆虫たちが生活しています。この空き地を囲んでいたフェンスが壊れて、通行する人間たちが勝手に入るようになり、昆虫たちの生活が脅かされる。そこに旅に出ていたバッタのホピティが帰ってきて、昆虫の苦境を救おうと立ち上がります。
マックスとディブ・フライシャーの兄弟は1910年代からアニメを作り始めた最も古いアニメ製作者でしたが、ベティ・プープやポパイなどのヒットシリーズを制作し、ミッキーマウスのディズニーに対抗していました。
そのフライシャー兄弟が私財を投げ打って制作したのがこの長篇アニメ。昆虫たちは昔ながらの手描きアニメで描かれますが、人間は実写をもとにしたロトスコープで描かれます。アニメなのに実写みたいに見えるロトスコープには、動きはリアルなのにキャラに「感情移入が困難」という致命的な欠陥がありますが、ロトスコープの発明者であるフライシャーには百も承知で、手描きの昆虫キャラに感情移入させるために人間はロトスコープで描き、昆虫たちを脅かす人間たちを感情移入不可能な、圧倒的な脅威として描いてます。
フライシャーのアニメはディズニーとは明らかに違う、人生をシニカルに見る批評精神があり、それは「バッタくん町へ行く」にも顕著です。そして最後には、人間の足元で恐れ慄いていた昆虫たちが「人間を見下ろす立場になる」という、驚くべき展開になります。
この作品、宮崎駿のフェイバリットアニメとして有名で、随所に宮崎駿が影響を受けたであろう描写が出てきます。宮崎が「崖の上のポニョ」を製作するにあたり、この作品を何回も見返していたという関係者の証言もあります。
「ポニョ」公開後にジブリブランドから「バッタくん」のDVDが発売されています。