【映画芸術の到達点】溝口健二「雨月物語 4Kデジタル復元版」('53大映)
溝口健二が1953年に発表した「雨月物語」です。主演は森雅之、京マチ子、田中絹代。撮影は人間国宝級の名カメラマン宮川一夫です。上田秋成の「雨月物語」のうち「浅茅が宿」「蛇性の淫」を元に、モーパッサンの「勲章」を加えて川口松太郎が小説化し、依田義賢が脚本化しました。
琵琶湖北岸の同じ村に暮らす陶工の源十郎(森雅之)と妻の宮木(田中絹代)、源十郎の弟の藤兵衛(小沢栄)と妻の阿濵(水戸光子)。
近くの長浜を羽柴秀吉の軍勢が占領して賑わっていると聞いた藤十郎は、町で一儲けを考えます。路上で焼き物を売る藤十郎の前に高貴な姿をした美しい女が現れ、彼の焼き物を沢山買う。屋敷まで運んで行った藤十郎を女は誘惑し、彼は妻を忘れて屋敷に留まることに。
一方、弟の藤兵衛は秀吉の陣に加わって侍となり出世を夢見る。こちらも妻を放ったらかし。藤十郎の妻の田中絹代は村に帰る途中で山賊に襲われて殺され、小沢栄の妻の水戸光子は夫を探すうちにゴロツキのような侍の集団に襲われて輪姦されてしまう。
そして藤十郎の森雅之は女の屋敷で夢のような日々を過ごすうち、通りで出会った高僧に呼び止められ、「お主には魔性の物が取り憑いておる」と言われます。
また敵方の侍大将が切腹した様子を物陰から見た小沢栄は、大将の首を秀吉の陣に持ち帰り、侍に取り立ててもらったばかりか配下の兵までもらいますが、その頃妻の阿濱は娼婦に身を落として消えた旦那を呪うのでした。
出演者は日本映画を代表する名優揃い。溝口健二の演出は「鬼」と呼ばれたほど厳しく、宮川一夫の撮影はまことに見事で、マーティン・スコセッシほか世界中の映画監督が最高傑作に選ぶだけのことはあります。
京マチ子の顔には能面をイメージしてメイクが施され、始めは柔和な顔ですが、ひとたび魔物の本性を現すシーンではカットを割るごとに般若のメイクに変じ、凄い迫力です。
この映画は1953年のヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞に選ばれ、世界映画の至宝として高い評価を得続けています。
この復元版はマーティン・スコセッシ監修のもと慎重にデジタル修復され、第69回カンヌ映画祭クラシック部門でワールドプレミア上映されたものです。
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