屋久島の大学生一人旅。 | 19歳、孤独を楽しむ
2024年9月、私は屋久島を一人で訪れた。10代最後の一年を記念した、人生初めての一人旅だ。以下に、私の旅の軌跡を記したいと思う。ぜひ、一読してみてください。
きっかけ
きっかけはごく単純なもので、なんと言っても縄文杉に出逢いに行きたかったのだ。これからの年月、地球温暖化が叫ばれるなかで台風が威力をまし、いつ縄文杉だって見られなくなるか分からない。今年の夏にも台風によって高齢な弥生杉だって倒れてしまったのである。その件で縄文杉は生きながらたが、それも永遠に縄文杉が存続する保証なんてどこにも無い。ならば、若い内に一度は見てみよう、そう決心したのがきっかけだ。
他にも理由を付けるとしたら、離島を一人旅で訪れるのに対し、強いロマンを抱いていた。私は家族で旅行する機会に多く恵まれていたが、いずれも飛行機一便で行ける目的地ばっかりであった。国内旅行に関しても、ほとんどがご当地グルメを楽しみ、強いていうならば北海道でのスキーが唯一自然に触れる機会であった。でも、不便な中、敢えてその選択肢を取り、敢えてその離島に向かう事が不思議と私を屋久島へと導いてくれた。
前編・出発。飛行機乗り継ぎ、バスの便は悪し
出発は、東京の成田空港から。行きは節約のため、格安LCCのジェットスターを利用した。久しぶりの成田空港であったが、羽田空港と比べると、質素な感じであった。
鹿児島行きの飛行機は両側3列の飛行機でであり、早朝便のため多くの乗客は居ないようだった。朝早起きをしていたので、仮眠を取っていたらいつの間にか鹿児島空港に到着していた。
10時に到着し、次の便の予定は15時発。しかし、鹿児島空港は市内からも少し時間がかかる。少し調べると、なんと40分後に屋久島行きの飛行機が出発する。
すぐにゲートを出て、すぐさま運航会社のJALのカウンターへ直行。丁寧なスタッフさんの対応で、搭乗便を変更してもらって待ち時間ほぼなしで屋久島空港行きの便に乗る事ができた。
鹿児島空港から屋久島空港まではJALグループの日本エアコミューター運航の小柄のプロペラ機で向かった。
ゲートからはバスで向かい、乗り込んでいく。
こちらも景色を楽しみに窓際の席にしてもらっていたが、離陸直後気付けばウトウトして寝ていた。
次に目を覚ましたのは着陸の衝撃によるものであった。周りを見渡せば滑走路を走っており、本当に一瞬にして屋久島に着いていたのであった(実際、フライト時間は40分程度らしい)。
屋久島空港自体はそこまで広い空港ではなく、こじんまりとした(少しだけ年季の入った)空港である。滑走路も短いため、プロペラ機しか運航していないそう。
到着時は曇りで、島中央の山々も隠れてしまっている。しかし、それも屋久島の魅力であろう。
空港からは宿まで路線バス。
しかし、ここで一つだけ注意したいことが。バス、ほぼ一時間に一本しか運行していない問題である。事前調査でもこの事は気にはなっていた。しかし、実際に目の当たりにすると、旅行していても度々不便に感じる事が多かった。私自身はその不便さを楽しめる時間に余裕のある旅であったが、人によってはレンタカーの方が断然おすすめと言える。
島内の道路は島をぐるりと一周するように集落などがあるのだが、ほとんどは車移動だそうで、バスが使われることは少ないそう。
そのため、東京の路線バスに慣れてしまっていた私は田舎の洗礼を受けた。空港のカウンターで3日間のフリー乗車券を手に、バスに乗り込む。
其の一・息呑む、迫力満点の大川の滝(おおこのたき)
初日、バスに乗り込んで行きついた最初の目的地は、「大川の滝」という日本の滝100選にも選ばれている滝だ。
バスで一時間ちょっとで着き、歩いていく。
道を抜けると、そこには息を呑むくらいの滝が佇んでいた。ゴォーという轟音の中、おびただしい量の水が上から降り注いでくる。
近くには大川の滝の飲める湧き水もある。冷たくて美味しかった。
滝自体は壮大で自然の力を象徴しているように感じた。澄んだ空気と滝の音が合わさって、浄化されたような気分になる。
滝壺も目の前に見ることができ、とても大満足である。
其の二・海に落ちる全国有数のトローキの滝
お次はトローキの滝。とても可愛らしい名前でありながら、とてもレアな滝なのである。日本国内に二つしかない、海に直接流れ出す滝なのだそう。今回泊まった宿の目の前の脇道から入ることができ、少し山道っぽい道を通るが隠れ家的な立ち位置にある。
写真に写せなかったのが残念であるが、ある赤い橋も映えて、滝がとても綺麗に映る。
今回の旅で、実はここを三回くらい散歩で訪れた。夕方も綺麗、朝も綺麗。ずっと綺麗なのが、トローキの滝なのだ。非常におすすめしたい滝の一つ。
番外編・ゲストハウス屋久島
今回大変世話になった宿、それもゲストハウス屋久島である。場所は屋久島の麦生の近く、バス停「鯛の川」から徒歩少しの位置にある、ドミトリー形式な感じの宿である(貸切コテージもあるそう)。
行き道は道から少し歩くが、宿への道が大変綺麗。早朝も、昼も、夕方もこれまたとても綺麗だった。川の音で癒される。
三泊泊まったのだが、一泊おおよそ3000円台ととても良心的な値段設定である。学生に優しい。
部屋は相部屋の二段ベッドが三台設置された、寮のような部屋であった。この時期は入れ替わる人々が時折いたが、向かい側のドイツ人はちょうど同じ日程で屋久島に訪問していて、散歩や食事などをほとんど共にした。
共有部屋みたいな部屋があり、そして共有のシャワー、洗濯機(有料)があった。Wi-Fiが無料で繋がるのも良い(LTE回線は繋がらなかった)。
しかし一つ注意したいのが、自然に近いので、蜘蛛が至る所にいる。蜘蛛や虫全般が苦手な人はこの島に来る前に覚悟は決めておこう。自然に近いという利点で言えば、ヤクザルを見かけたという人もいたそう。
其の三・3つの滝の合体、龍神の滝
名前がかっこよすぎる滝。滝が3つほどに別れており、それぞれが大きな音を立てながら沢山の量の水が流れていた。
これも非常に迫力が詰まっている滝である。しかし、大川の滝ほど近くに近づくことが出来ないのがちょっぴり残念だったかもしれない。こちらは川を跨ぐように建ててある橋の上からの眺めになっている。
其の四・歩きはほぼ登山、千尋の滝(せんぴろのたき)
ジブリ映画にちなんで「千尋」を「ちひろ」と呼びそうになるが、正しくは「せんぴろ」と読むらしい滝。こちら、徒歩で向かったのは非常に愚かだった、と言いたい。
千尋の滝は位置的には標高の高くなる屋久島の中心よりの場所にある。そのため、島の外周から向かう場合、勾配の急な斜面をほぼ登山のような感覚で登って行った。
こちらの滝はいろいろな場所から見えるそうで、写真がこちら。
本来、この千尋の滝には間近で見ることのできる登山道のような道があるのだが、この日は台風の影響で閉ざされてしまっていた。残念である。
少し先には吊り橋があるそうで、滝を楽しむことが出来るらしい、、、
うーん。台風よ、どこか行ってくれ。
しかし、気を取り直して少し遠目の展望デッキからの眺めがこちら。後ろの雲がいい感じに山にかかっている。台風襲来も、見方によっては福音だったのかもしれない(この後、しっかり土砂降りに見舞われました)。
其の五・二日目、屋久杉を目指して。
屋久島2日目。
この日は、とんでもなく早起きである。衝撃の4時半起きなのである。これまで正午が起床時間であった自分からすると、まだベッドにすら付いていない時間である。
屋久島の登山口についたのは夜明け直前の、まだ少し暗い時間。他にも登山客は多くいる。
意を決して、いざ入山。
屋久島の道のりは長く、時間にしておおよそ9から10時間ほどである。非常に長い。前半戦は昔使われていたトロッコ道を歩いていく。
絶景に次ぐ絶景、すべてが美しい。雨に打たれながら、山道をあるいていく。森林浴のように四方を木に囲まれ、身も心も浄化されるような感覚に見舞われた。空気も澄んでいて、東京という空気の淀んだ都会とは大違いである。
歩いていくと、どんどん雨は強くなっていく。
しかしその一方、緑は生き返るように雨の雫が輝いていた。
歩くこと3時間ほど、ここで中継地点に行き着いた。多くのグループが休憩を取っている。ここからが本番、ここからは実際に登山道を進むことになるのである。
中継地点の橋の下には、とてつもなく激しく流れる川が。ここも雨の影響か、水量がとんでもない。
近くにも湧き水(?)のような給水地点もあり、ペットボトルと水筒を補充。ここで持参していた魚肉ソーセージとプロテインバーを摂取。残り2時間の修行に備えた。
いくつか、急な階段を登る場面は緊迫した。雨で濡れた階段を一つずつ踏みしめていく。滑ったらどうなるかは考えたくも無くなるくらい断崖絶壁な場面もあったが、何とか無事に切り抜けることが出来た。
そんな中、道中にかの有名なウィルソン株とご対面することが出来た。巨大な切り株の中は、このようにめちゃくちゃ綺麗なハートの形になっていた。
思っていた10倍くらい形が整っていて、普通に驚いてしまった。
切り株の中には、世にも不思議なのもあった。都市伝説か、新海誠の作品にでも出てきそうだった。雨が引き続き降る中、切り株の中でさえも小さい川が流れていた。
では、気を取り直して登山を続行。少し心が折れそうなくらいの距離を歩いてきたが、ここで諦める訳には行かないと自分を鼓舞して何とか進む。
登山道も後半、どんどん樹齢が長い屋久杉が出てくる。こちらは仁王杉。他とは違った雰囲気を感じ取れるくらい、異様な存在感を放っていた。
其の六・屋久杉、ついにご対面
屋久杉を目指し始めてから4時間半、雨降り注ぐなか突き進んだ。体は冷え切り、疲れ切った思い足を運びながら最後の登山道を歩んでいく。
そしてついに、屋久杉とのご対面。
や、屋久杉!!!
遂に会う事が出来た。いろいろな感情が渦巻いていたが、屋久杉を前にすると自然と体の疲れが一気に抜けていく気がした。ただ呆然とその姿に魅了された。
色々な角度から縄文杉を鑑賞する。場所によっては少し遠いが、依然とその佇まいから縄文杉は特異なオーラを放っていた。
自撮り写真を撮り、周囲にたほかの登山客にも写真をお願いした。少し雑談をしていると、もう少し上に行くと宿泊小屋もあるらしい。早朝の縄文杉も見てみたいものだ。
一通り見終わると、帰りの支度をした。そして、名残惜しく出発。人生最後になるかもしれない縄文杉を目に焼き付け、縄文杉を後にした。
帰りは行きより短い。何かと登山あるあるかもしれないが、今回もそうであった。少しだけ雨が和らいだというのも関係していると思うが、今回の下りはずっと早いペースで下山し、トロッコ道に戻ってきた。
トロッコ道からはお手のもの、大きな怪我なしに無事宿に帰ることが出来た。
其の七・屋久島最終日、水着禁止の海中混浴温泉へ。
2日目は屋久杉登山で幕を閉じた。当日の朝早起きとほぼ10時間の登山で体力は限界、帰宅してすぐに眠りについた。
3日目は屋久島最終日。厳密にはフライトは翌日なのだが、バスの関係上どこかへ観光へ行けるのは今日が最終日だったのだ。
向かった場所は、平内海中温泉。干潮の前後2時間しか現れないという、幻の温泉とのことだ。
しかし、ここは大自然の中の温泉。仕切りなどはなく、混浴らしい。さらに、あろうことか女性であっても水着は着用禁止とのことだ。現地のおじさんに聞いてみると、女性はたいていタオルを巻くか、パレオが許されているらしい。
いずれにしよ、女性には行くハードルが高いと思う(実際に数名は見かけた)。
温泉の温度は、ほとんどが激熱。ひとつ、まだぬるめのお湯があったので少し浸かりながら、現地のおじさんと観光客の外国人と会話してみた。
しかし、眺めは最高である。この日は珍しく晴れており、本当に綺麗な空と海を堪能しながら温泉に浸かることが出来た。実際、こんなに海の近くで温泉に入ったのは人生でも初めての経験になった。
帰り、綺麗な草原を見つけた。夏の暑さは残しつつ、爽やかであった。
其の八・福岡乗り継ぎ、そして東京の自宅へ
帰りは鹿児島経由ではなく、福岡経由を選択。屋久島からは一便しか出てない稀少なフライトであるが、当日予約でも何とかなった。旅行代を安く抑えるために、スカイメイトを使っていたからである(若者の当日割引サービス。JALもANAもある)。
福岡では無論博多ラーメンを食べない訳には行かないので、弾丸でShinshinラーメンを博多駅で頬張り、そして同じく駅ナカの激安豚骨ラーメンも普通に平らげてしまった。
弾丸で福島旅行も楽しみつつ、帰りの東京行きのフライトは爆睡をかましながら羽田に到着。もうすでに夜であったが、無事に遅延などなく帰宅する事が出来た。
総じて、屋久島では非日常を体験し、いろんな経験を積むことが出来た。いろんな人と交流をし、人生で一度は見たい縄文杉を拝むことだって出来た。自分一人で旅行の計画を立てれたし、自分で何をするかさえもすべてが自分に決定権がある。
さらに、このような労力を使って屋久島に向かえるのは学生という時間にも体力にも余裕がある今だけであり、社会人になってしまったら非常に難しくなってしまうのが現実である。
そして、10代としての時間が残り少なくなってきた今、私はこれからも多くの新しい経験をするためにも、多くの場所を旅行し、より多くの人に出会いたいと考える。これまで長かった3泊、屋久島にはお世話になりました。
そしてここまで読んでくれた貴方にもありがとうございます。
以下、旅行中のちょっとした写真集です。
また次の記事でお会いしましょう。
抹茶たいやき
其の九・カメラが写した屋久島 写真集
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