永遠の愛

ぼくは西城秀樹さんに夢中だ。
こうして文を紡ごうとしているのは
稀代の表現者を語らずにいられないからだ。

ぼくにとって秀樹さんの存在は大きく
うまく切り取り、総括して、焦点を明確に
した文章をまとめる自信はない。

彼の傑出した才能、数々の業績
デビューから50年を経て、いまだ
魅了される人がいる事実。

何から話せばいいのか途方に暮れる
ほどの巨人。
彼の活躍した足跡は、残念ながら
ぼくなどが語るより、豊かな経験と
知識をお持ちの方にお任せしたい。

いちファンとして思うところを
語ることで、浮かび上がる何かが
あればと思う。

恋する季節

秀樹さんを知ったのは、ファンを
名乗る人のSNSの投稿を目にしたことだ。

“西城秀樹さんのパネル展に来ています
彼の優しさや業績をみなさんに知って
いただけたらと思います“

添えられた写真は
パネル展の入り口の看板

ありがとう
西城秀樹展
〜ミスターフェスタ 永遠に〜

大きく手を広げた背中の写真
に目が止まる。
前年の5月の訃報に思い至る。

そうか
追悼展なんだ

パネル展の会場の写真には
若き日の“ヒデキ“の姿があり
美形で足が異様に長い 
アイドルのパネルの前で
ピースサインをする人たちがいた。

しかしなぜいま、西城秀樹なのか
この人たちはなんなのか
ヒデキといえば往年のアイドル歌手
その時は首をひねるばかりだった。

情熱の嵐

数日後、またしても
ヒデキに関する投稿を目にした。

“ヒデキはアイドル歌手のイメージで
括られ勝ちですが、洋楽のカバーも
しているんですよ“

We will Rock You
を歌う西城秀樹の動画
ヒデキがクイーンをカバー❔
信じられない気持ちで
動画を開く

少し掠れた声が
スタジアムに響きわたる

ボーカリストがカバーするロック曲は
いくつか聴いたことはあったが
日本人でこの声量、何より驚いたのは
こんなに太くハスキーがかった
カッコいい声が
西城秀樹だったことだ。

もしやと思い、YouTube動画を
開くとあるはあるは...

激しく歌い踊る姿は
激しい音楽であるハードロックの
ボーカル勢を軽々と凌駕し、
ロック以外の曲でみせる
きめ細かい表現に戦慄すら覚えた。

非の打ち所がない。
こんなボーカルを待っていた。
すごいすごい
スマホの電池がなくなるころ
周りが明るくなっていた。

恋の暴走

その日から、ひまさえあれば
スマホで“ヒデキ“の動画をみる日々が
続いた。

音源が欲しくなり
ベスト盤をレンタルして
クルマで聴く。

初めてDVDを視聴した日の
情熱は忘れられない。
豊かな声量、長髪をなびかせ
タキシードで歌い踊る姿
振り付けはキレキレで
動きまくっているのに
息も切らさず、
完璧なピッチと絶妙なタイム感
甘くハスキーがかった声は中毒性が
尋常ではなく、タバコがやめられない
ように、病みつきになった。

この素晴らしさを吐き出したい

忌避感があったTwitterで
初めての投稿をした。

熱病時代

“秀樹を聴かずにいられません
みなさんどうしてますか“

驚いたことに
即座に反応があった

“聴きたいことは我慢しなくても
いいのでは“

秀樹に入れ込み初めたぼくは
これに気を良くして
矢継ぎ早に投稿をした。

瞬く間に“イイね“がつき
返信も次々に来る
有頂天になり
“ヒデキ漬け“の日々
酩酊していたと思う



めぐり逢い

ヒデキのパネル展が開催される

Twitterの告知をみて
小躍りして喜んだ

SNSで知り合った人たちと
初めてあった。

秀樹さんが伝説のライブを
敢行した、大阪球場の跡地を
埋めたてた商業施設のビルの一室

秀樹さんは歌っていた。
大勢のファンの前で。
スクリーンの向こうでは
あったけれど。

同行したファンの方たちは
とても気さくで、勢いこんで
質問するぼくに嫌な顔ひとつせず
にこやかにご自身の秀樹さんの
思いでを語ってくれた。

「とにかく秀樹が、好きで好きで
たくさんコンサートに行ったよ
あなたのような新しいファンがいてくれるのは本当にうれしい」

和やかな歓談はあっという間に終わり
後ろ髪を引かれるようにして、再会を
約束して別れた。

帰りの電車の中で
数十年経った今でも
秀樹さんとファンの関係に
泣きたいような静かな感激を
噛み締めた。
ファンになって良かったと
しみじみ思った。

愛は限りなく

秀樹さんに入れ込むうち
人柄に興味を抱くようになった

Twitterで見かけるファンのコメント
や、著名人が語る秀樹さんの
人柄をあらわすエピソードは、単なる
美談では片付けられないものばかりだ。
それも膨大な。

後輩にステージ衣装をあげてしまう
アルバイトのサポートスタッフに
気遣いの声を忘れない
喫茶店でコーヒーを頼む時
「ホットコーヒーをお願いします」
リサイタルの口上
「今日はみなさんが主役です」

秀樹さんの70年代のライブドキュメンタリー
“ブロウアップヒデキ“
ファンの女の子がうれしそうに語る
「ヒデキのどんなところが好き❔」
「ファンに優しいところ」

表現者としての西城秀樹から
人間西城秀樹に思いを馳せるようになった

心響

輝かしい大スターは
大病をわずらい、苦闘する姿を
さらけ出したことを知った。

脳梗塞後に懸命なリハビリに
立ち向かいステージに立った姿

長年のファンがインタビューに答えている
「秀樹が頑張ってる姿に感動した」
目尻を拭いながら。

還暦を記念した
セルフカバーアルバム
“心響“
はそういった苦闘のなかで製作されたと
聞く。
内容は出色で作品単体でみても
名盤だとおもう
いのちを燃やした作品だと知ったいまは
ぼくにとっては
“命盤“だ

歌ある限り

西城秀樹さんとの出逢いは
ぼくにとって人生最大のインパクトだ

旅立った歌手を応援する。
以前は理解出来なかった。
永遠の不在。

人生最大の出逢いが旅立ちで
あったこと
運命の皮肉だろうか
そうは思わない

永遠のヤングマン

Twitterで見かけるファンの想いは
さまざまで人それぞれ。
生前の活躍を知る人の想い
ぼくのような後追いのファンの想い
人の数だけ秀樹像があるのだろう

陳腐かも知れないが
こころから思うので言っておきたい

秀樹さん
ぼくはあなたに逢えて
人の縁の不思議さを思います
あなたがファンを照らしたように
ファンもあなたを照らす限り
その愛は永遠でしょう

ありがとう
永遠のヤングマン
西城秀樹
そして愛するファンのみなさん

長い長いラブレター
ここまで読んでくれた人に感謝します





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