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ちいちゃんのかげおくりを感じる③
これまで見てきたことを振り返ると、あまんきみこさんは、この作品を通して伝えたい悲惨さや悲しみが浮き彫りになってきました。
最後に、あまんきみこさんが、どんな技法を用いてこの作品の悲しさをより強く読者に印象付けようとしたのか、考えてみます。
ちいちゃんのかげおくりという教材。悲しさが痛いほど伝わる作品だけれど、子どもたちにどう指導していけばよいか悩まれる方が少なくないようです。
例えば「この作品はどんなお話ですか。」と問い、「悲しい作品だ。なぜなら〜」と最終的に叙述用法をもとに、自分の言葉でまとめさせるなどの指導が考えられます。これには学習としての一定の価値があるでしょう。作品をどう捉えるかということを児童に委ねることで多様な意見を交換できるだろうと。
しかし、子どもたちの立場で考えてみると、これが悲しい作品でないはずはなく、「悲しみ」が圧倒的に強く感じられているのに改めて聞かれると「うん?それ以外の見方があるのか?」と余計な勘ぐりを招くことにも繋がりかねません。
まず、この作品のテーマが戦争である時点で、子どもからしたら、この世で最も恐ろしいものであることは間違いないことです。そして、その下で奪われるあらゆるものに対する悲しみはある種の前提となっているはずです。
そこで、指導の序盤において、悲しみをきちんと抑えた上で読み取りを進めてみてはどうでしょう。
悲しみを土台にして読み取ることで、初めて生まれてくる問いと読み方がありそうです。例えば、
「この作品はなぜこんなにも悲しい気持ちになるのだろう。」
と問い、作品の叙述の仕方や表現方法に注目して読んでいく。
そして、最終的には、
「戦争はなぜこんなにも恐ろしいものなのだろう。」
と現実の社会的テーマへ迫っていく。
このような視点で読解をしていけば、国語科として読むに値する価値を味わうだけでなく、この教材が読者へと訴えるメッセージから自己の生き方や社会への問題意識へと広げることができます。