●美術館の名作椅子#22●千葉市美術館
千葉市美術館
設計:大谷 幸夫
開館:1995年
・Barcelona Chair
デザイナー:ミース・ファン・デル・ローエ
発表:1929年
メーカー:Knoll
価格:¥1,474,000〜(張地による)(2025年現在)
ミース・ファン・デル・ローエは、ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトと共に近代建築三大巨匠の一人に数えられる。
この椅子は1929年のバルセロナ万博にてスペイン国王夫妻を迎えるためにドイツパビリオンの設計を依頼されたミースが建物ともにデザインした近代デザイン史において最も重要な椅子のひとつ。
結局スペイン国王はこの椅子に座る機会はなかったようだが、椅子の方はモダンデザインのアイコンとして世界中に広まり、以後の椅子のデザインに多大な影響を与えた。
今となっては座り心地や機能面において旧式なのは否めないが、そのデザインの美しさは全く色褪せない。
・Barcelona Day bed
デザイナー:ミース・ファン・デル・ローエ
発表:1930年
メーカー:Knoll
価格:¥2,970,000(2025年現在)
名作バルセロナシリーズのデイベッドバージョン。
構造もバルセロナチェア同様にシートの下にレザーバンドが張ってある。
レザーバンドなので使っているうちに伸びてくるのは避けられないし、劣化するとヒビが入って最悪切れたりと旧時代の仕様だが、デザインのアクセントにもなっているし、ある意味このシリーズのアイデンティティでもあるので改良するわけにもいかないか。
東京国立博物館本館にも置かれている。
・SOLO Stool
デザイナー:Studio Nitzan Cohen
発表:2012年
メーカー:MATTIAZZI
価格:¥89,100(2025年現在)
カフェやレストランでの使用を想定してデザインされたという、堅牢ながらシンプルなフォルムをもつチェア。
ここでは窓際の机に合わせている。
サイズが数種類あり、カラーも多色展開しているので多様な場面で適した選択ができる。
他階のバルセロナシリーズの重厚な雰囲気とは違う軽快な印象を醸し出している。
・Milo Chair
デザイナー:愛知株式会社(当時)開発本部
発表:1986年
メーカー:axona AICHI
価格:¥38,900(2025年現在)
axona AICHI(1992年に社名変更)は数々の世界初を誇る実力派業務用家具メーカーだ。
この椅子はなんと50脚まで垂直にスタッキングできるという優れもの。
グッドデザイン賞も受賞している。
・Spline Chair
メーカー:KOKUYO
価格:¥25,500(2025年現在)
この椅子も2018年度にグッドデザイン賞を受賞している。
・KYRRE Stool
デザイナー:Mikael Axelsson
メーカー:IKEA
価格:¥2,490(2025年現在)
IKEAの安価なスツール。
コスパ最高なので塗ったり切ったり削ったりと躊躇せずにアレンジできそうだ。
ワークショップルームで汚れや傷を気にせずに使い倒すにはある意味最適なのかもしれない。
ただしやはり安価なため強度は無いようだ。
デザイナーのMikael Axelssonは2013年からIKEAに所属しているようなのでローンチは2013年以降か。
IKEAのPBモデルだがデザイナー名を公表しているのは好感が持てる。
国内大手の某N社もデザイナー名を表に出すことで責任感やモチベーションの向上につながりデザインの質も上がるような気がした。
・イームズシェルチェア風
残念。
遠目だとイームズシェルチェアのウッドに見えたが、木目はプリントで安価なコピー品だった。
ここはハーマンミラーの本物を使ってほしい…。
元ネタ↓
・まとめ
千葉市美術館には名作バルセロナチェアやバルセロナデイベッドが置かれているが、そのポテンシャルを活かしきれていないように感じた。
バルセロナチェアは意外と大きく単体でもかなりの存在感があるので、狭いスペースだとその真価を発揮できない。
デザインは一見シンプルだが、脚の曲線美やフレームの構造美などからはやはりただものではないオーラを放っている。
本来は広い場所に背面にもゆとりを持たせつつ単体で置き、ゆったりと座って高みから遠くを眺めるような、そんな椅子。
まさに王のための椅子なのだ。
その他の椅子も文脈がばらばらで千葉市美術館としてのストーリーを感じなかった。
初代館長に辻惟雄を擁し、多くの名品コレクションを誇り、「さや堂ホール」や「ビル型構造」といった特徴を持ち、定期的に尖った企画展を行う個性的で素晴らしい美術館なので、ぜひ椅子や什器に対してもこだわりを見せてほしい。
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