【美術展2024#49】カルダー:そよぐ、感じる、日本@麻布台ヒルズギャラリー
会期:2024年5月30日(木)〜9月6日(金)
こけら落としのオラファー・エリアソンに続くカルダー展。
オラファー・エリアソンの時は水をびちゃびちゃばら撒いていた作品《瞬間の家》が印象的だったが、今回はどのような会場構成になっているだろうか。
入口すぐの作品。
抽象的ではあるが、(後付けかもしれないが)モチーフが存在する作品。
もちろん作品には触れないが、なんとか動かそうとこっそりふーふー息を吹きかけている微笑ましいおじさんを横目にまじまじと観察。
しばらく見ていると、会場の空調の影響で緩やかに動いているのに気づく。
基部が足や尻尾のような形状をしているため本当に生物が息づいているかのように見えてきた。
カルダーは平面作品も手掛けているが、個人的には左のような絵画にはそれほど魅力は感じなかった。
岡本太郎の立体は好きだが平面作品はそれほど好きではないみたいな感覚(あくまでも私の個人的な感覚)。
右の作品は好き。
《My Shop》は、平面立体各作品が所狭しと並ぶ自身のアトリエを描いている。
カルダーにしか描けない、カルダーが描くことに意味がある作品。
墨染めの紙でしつらえた空間。
当初財団側は黒い壁に難色を示したようだったが、結果緊張感漂う新鮮な空間になっている。
さくらの木でしつらえた空間。
今回の展覧会のタイトルの元にもなった《Un effet du japonais》が展示される。
先日、Tokyo Gendaiで行われた、カルダー財団理事長らと片岡館長のシンポジウムにて、この作品《Un effet du japonais》も話題に上がっていた。(モニターの写真↓は別作品)
カルダー財団理事長は「この作品《Un effet du japonais》は我々アメリカ人にとってはタイトルの通り日本的に見える。日本人の皆さんにとってはどうでしょう?(意訳)」と言っていた。
この作品は棒に重りをつけずに片側に支点を寄せその集積のバランスと最終的な一つの重りで均衡を保っている。
対して他の作品は棒に対し左右に重りがついて比較的中心付近でバランスをとっている。
会場全体を見渡してもこのような均衡の保ち方をしている作品はこの作品くらいだった。
結果、その棒部分が、歌川広重が「大はしあたけの夕立」で表現した雨の軌跡のようにも見え、日が沈んでいく(もしくは物体が落ちていく)時間が可視化されているようにも感じる。
広重の表現が19世紀ヨーロッパの人々にとって新鮮に見えたように、そのような感覚がアメリカ人にとっても日本的に見えたのかもしれないと思った。
会場後半は大型立体作品、絵画、モビールと各種作品が並ぶ。
出口付近にぶら下がっていたこのモビールが個人的には一番好き。
リズム感やバランスが秀逸。
この作品の財団公式の模型とか欲しいな。
帰りにミュージアムショップでチェックしていこう。
前述のカルダー財団理事長らと片岡館長のシンポジウムにて、後半のQ&Aでカルダー作品は動いている状態と止まっている状態のどちらが美しいか、とのQに「カルダー作品は再生可能な絵画である。どちらも美しい。」と財団理事長の回答だったが、なるほどと思った。
カルダー作品は「動く彫刻」とも言われるが、理事長の言う「再生可能な絵画」の方が腑に落ちた。
地階のミュージアムショップは前回は半分がショップで半分がカフェとなっていたが、今回は全面カフェになっていた。
スタッフにショップは無くなったのかと聞いたら、その時々で流動的にショップになったりカフェになったりするとのこと。
そんなわけで、今回グッズ関連はギャラリー脇の壁面に数点のみの扱いのみ。
モビール模型があったら欲しいなと思っていたがそんなものは微塵もなかった。
グッズは(変な)帽子と(変な)トランプのみで(※あくまでも私の感想)、なんかいまいちピンとこなかったので、図録だけ買って帰ろうと思って値段を見たら、
¥8,580!
ブフォッ、た…高ぇ!
スタッフに「た、高いんですね、ボソッ」と呟いてみたところ、今回はPACEギャラリーの編集なので円安もあって云々うんぬんウンヌン…とのことだった。
なんで最先端のギャラリーで今更カルダーをやるのだと思っていたのだが、カルダーを扱うPACEギャラリーが麻布台ヒルズにオープンするとのことなのでその辺の大人の事情も込みか。
訪れた美術展の図録は基本買う主義の私も、今回は買わずに(買えずに)帰宅…
麻布台のセレブな大人たちに軽くあしらわれた気がしてその夜は涙で枕を濡らした。
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