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●美術館の名作椅子#10●横浜美術館
横浜美術館
設計:丹下 健三
開館:1989年
・Barcelona Stool
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デザイナー:ミース・ファン・デル・ローエ
発表:1929年
メーカー:Knoll
価格:¥739,200〜(2024年現在)
ミース・ファン・デル・ローエは、ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトと共に近代建築三大巨匠の一人に数えられる。
1929年のバルセロナ万博にてスペイン国王夫妻を迎えるためにドイツパビリオンの設計を依頼されたミースが建物ともにデザインした、近代デザイン史においても最も重要な椅子のひとつである名作バルセロナチェアとともに置かれることの多いスツール。
世に出回るバルセロナシリーズはブラックレザーの品が多いが、横浜美術館のものはあまり見かけないグレーのレザー。
東京国立博物館本館にはバルセロナシリーズのデイベッドが複数台設置されているが、構造はそれらと同様にシートの下にレザーバンドが張ってある。
レザーバンドなので使っているうちに伸びてくるのは避けられないし、劣化するとヒビが入って最悪切れたりと旧時代の仕様だが、デザインのアクセントにもなっているし、ある意味このシリーズのアイデンティティでもあるので改良するわけにもいかないか。
・Suzanne Bench
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デザイナー:高浜 和秀
発表:1965年
メーカー:Knoll
横浜美術館がメインで用いているベンチ。
館内に多数設置されている。
取り立てて何がどうというデザインではないが座面は広くフラットで座りやすい。
高浜氏について詳しく存じ上げなかったので調べてみた。
イタリアで活躍された方だったのですね。
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・model 591 Sculpture Chair
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デザイナー:プレベン・ファブリシャス、ヨルゲン・カストホルム
発表:1964年
メーカー:Bo-ex
北欧デンマークの椅子。
メタル部は同じくデンマークのポール・ケアホルムを彷彿とさせる。
現在は廃盤か。参考までに ↓
・LAPIS Chair
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デザイナー:シルッカ & ティモ・サールニオ
発表:1996年
メーカー:カンディハウス
参考価格:¥44,000(2022年)
「国際家具デザインコンペティション旭川1996」の受賞作。
3つのパーツからなるシンプルな構造で、軽量なうえスタッキングも可能。
カンディハウス公式の2022年カタログの中には見つけたが、最新のカタログには掲載されていなかったのでストアに確認してみたところ現在は廃番になってしまったとのこと。残念。
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・03 Chair
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デザイナー:マールテン・ヴァン・セーヴェレン
発表:1998年
メーカー:Vitra
価格:¥81,400(2024年現在)
21_21 DESIGN SIGHTや他美術館でも監視員用椅子として使用されている。
背もたれから座面の素材は程よく弾力があって気持ち良い。
歴史に残る名作椅子というタイプの椅子ではないが、名バイプレーヤーといったところだろうか。
・まとめ
横浜美術館の椅子は現在廃番になっているものがいくつもあった。
歴史に残る名作椅子もあったがそれぞれの文脈はバラバラでいまいち選定基準がわからなかった。
せっかく数年間の休みを経てリニューアルしたのだから、椅子や什器もこだわりを持って再選定し、横浜美術館としての何らかのストーリーやメッセージを盛り込めばよかったのに、と思う。
丹下健三も椅子をデザインしているが、横浜美術館の雰囲気とはニュアンスが違うか。
丹下健三の事務所出身で現在活躍している面々の中で椅子もやっている方の作品を選ぶとかすればストーリーが繋がると思うのだが。
もしくは横浜美術館に合うようなデザインを各人に新たに依頼してみるのも面白そうだ。
ところで以前あったはずの川久保怜(コム・デ・ギャルソン)の椅子はどこ行った?
ざっと探してみたけれど見つからなかった。
貴重な椅子なので処分してしまったということはないだろうが、今はバックヤードで休憩中だろうか。
次回訪れた時にもう一度探してみよう。
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