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【美術展2024#93】松谷武判@東京オペラシティアートギャラリー
会期:2024年10月3日(木)〜12月17日(火)
松谷武判(1937-)は、60年を越える活動を通して、物質が示す表情や肌理、存在感と生命の波動、流動を交錯させる優れた制作を続けてきました。1960年代前半に当時の新素材であるビニール系接着剤(ボンド)を使って有機的フォルムを生み出すレリーフ状の作品で具体美術協会* の第2世代の俊英として名を馳せ、1966年に渡仏。パリを拠点に、当時現代アートの最前線であった版画の領域で新たな取り組みを開始します。平面メディアにおける空間性と時間性の探求から、やがて表現は幾何学的であると同時に有機的なフォルムと鮮烈な色彩を特徴とするハードエッジの表現に移行。1970年代後半からは紙と鉛筆という身近な素材を用いて制作行為の始原へと溯行し、黒のストロークで画面を塗り込めて生命的な時間を胚胎させる表現を確立。ボンドによる有機的な造形にも改めて取り組み、そこに鉛筆の黒を重ねた作品で新境地を拓きます。作品は建築を取り込んだインスタレーションの形をとることも多くなり、同時にパフォーマンスでも独自の個性を発揮します。現在もパリを拠点に旺盛な制作を続ける松谷は、2017年のヴェネチア・ビエンナーレ、2019年のパリ、ポンピドゥー・センターでの回顧展など、改めて国際的な評価を高めています。近年はひとつの手法や表現にとらわれることなく、その制作はますます自由で大らか、大胆にして密やかな繊細さをたたえて進行しています。さまざまな物質が示す表情に生身の身体と五感で対峙することで生み出される松谷武判の作品、その豊かな多様性は、見るものに語りかけてやみません。
本展は、最新の調査に基づいて構成される初期から最新作を含む作品、資料、映像など200点以上によって松谷武判の全貌を紹介します。
夏に「髙田賢三 夢をかける展」で来たオペラシティアートギャラリー。
今回は「具体美術協会」出身の松谷武判氏の展覧会。
単品としてはいろいろな場所で見たことはあったけれども、まとまって見る機会は初めてだ。
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展示は回顧展のように年代ごとに作品が並ぶ。
変遷がわかりやすい。
1950年代。
キャリア初期の頃は時代を感じさせる変哲のない平面作品。
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なんだかよくわからないが、なんかやろうとしてる感はすごい。
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1960年代初頭。
この辺りから世界観は一変していく。
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当時の新素材であるビニール系接着剤(ボンド)を用いて制作。
当時は画期的でさぞ新しい表現だったのだろう。
だが今見ると見慣れない素材が新鮮だっただけで作品としてはその場のノリと自己模倣の繰り返しで素材や技法に踊らされている感がなくはない。
1963年「具体美術協会」に参加。
1966年渡仏。
パリを拠点に当時現代美術の最先端であった版画領域にて新たな表現を開始する。
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とはいえこの一連の版表現も今の松谷氏が無ければ歴史の狭間に埋もれていた作品群だっただろう。
この辺りの作品のほとんどが芦屋市立美術博物館所蔵だ。
ご当地作家の作品を所蔵し考証して価値を作り出し美術史に位置付けていくことは地道な作業で日の目を見ないことも多々あるだろう。
だがそれこそがご当地美術館に課せられた使命でもあり、存在意義の一つでもあり、やっぱり大切なことだよなあと思ったりする。
1970年代。
また大きく表現が変わる。
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もの派的な雰囲気も感じる作品群。
まあそういう時代の空気感だったんだろうなあ。
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この辺りからボンドと鉛筆を融合させた作品群が始まる。
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個人的にはこの辺りの時代の作品が一番好きかな。
偶然性と手作業がいい感じにミックスされつつマチエールや色に日本的な侘び寂びを感じる。
鉛筆の質感もいい。
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表現が洗練されていく。
やがてヴェネチア・ビエンナーレやポンピドゥー・センターでの個展などを行うようになり作家としての地位を不動のものにしていく。
下階終盤では近年のドローイングが並ぶ。
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上階ではガラスケースに資料が並ぶ。
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「セメダインサークル」創刊号の表紙を飾る。
マニアックな冊子だなあ。誰が読むんだこれ。
そしてよく残ってたな。
10代の頃のスケッチまで並ぶ。
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正直今までそれほど関心を持っていた作家ではなかったし、展覧会を見た後もそれほど心動かされることはなかったけれども、日本近代美術史の1ピースを担った作家の知らなかった一面や変遷を知れたのは勉強になった。
コレクション展では企画展に合わせているのだろうか、松谷氏を挟むように日本近代美術の先輩や次世代の作家作品が並べられていた。
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具体のパイセン。
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次世代(だったがだいぶ前に若くして亡くなってしまっている)
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同い年。
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脅威の10連AIR FRAME!
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そしていつもの場所にゴームリーが一人佇む。
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