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【美術展2024#86】挂甲の武人 国宝指定50周年記念特別展「はにわ」@東京国立博物館 平成館
会期:東京国立博物館
2024年10月16日(水)〜12月8日(日)
巡回:九州国立博物館
2025年1月21日(火)〜5月11日(日)
埴輪とは、王の墓である古墳に立て並べられた素焼きの造形です。その始まりは、今から1750年ほど前にさかのぼります。古墳時代の350年間、時代や地域ごとに個性豊かな埴輪が作られ、王をとりまく人々や当時の生活の様子を今に伝えています。
なかでも、国宝「埴輪 挂甲の武人」は最高傑作といえる作品です。この埴輪が国宝に指定されてから50周年を迎えることを記念し、全国各地から約120件の選りすぐりの至宝が空前の規模で集結します。素朴で“ユルい”人物や愛らしい動物から、精巧な武具や家にいたるまで、埴輪の魅力が満載の展覧会です。東京国立博物館では約半世紀ぶりに開催される埴輪展にどうぞご期待ください。
東京都美術館の「田中一村展」からハシゴする。
この時期の上野公園はどの美術館も集客力の高い展覧会が開催されており、どこから攻めるか迷ったが、動線的に東京都美術館→トーハクにしてみた。
東京都美術館も混んでいたけれどこちらも混んでるなあ。
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トーハクの特別展にしては珍しく、今回は写真撮影可能。
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埴輪というと世代的にやはり「おーい!はに丸」がまず思い浮かぶ。
色々な形状の総称が「埴輪」なのだが、はに丸くんのビジュアルが強すぎて埴輪というとどうしてもあの武人と馬のイメージが焼き付いている。
埴輪国宝指定50周年の今年、我らが国立博物館はその埴輪をどのように我々に提示してくれるのだろうか。
会場に入ってまず対面するのが、埴輪界の雄《踊る人々》だ。
知名度に反して国宝どころか重要文化財ですらないのだが、そのゆるキャラ具合からかトーハクのマスコットキャクターにもなっている。
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2022年から修復作業を行い、今回修復後初のお披露目ということで、以前と何が変わったのか修復前の写真を探してみたところ、手持ちの写真で2016年のものがあったので見比べてみた。
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お腹や手のヒビが無くなり、細かな剥離も修復されている。
表面をクリーニングをしたとのことなので若干赤みを帯びて、最近作られたかのような新鮮さがある。
照明の当て方や展示の仕方にもよるのだと思うけれども、修復部分のphotoshopで修正したようなヌメっとした感じはいいのか悪いのか。
円筒部分は元々ほとんどが欠損していたとのことなのでそもそもクリエイティブ要素が多かったのだが、今回の修復にあたり「高さはほとんど差がなかったのではないか」との推測から円筒部分の高さを揃えた結果、2体の身長差は縮まったとのこと。
元々想像の産物だったとはいえいずれにせよ今現在は正確なことが判明していないのだから変にいじると更にわけわかんなくなってしまいそうな気もする。
ちなみにトーハクのミュージアムショップではこの埴輪のミニチュア版が常駐している。
あまり売れていないのかいつも在庫はあるようだ。
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収集癖がある私はけっこう前にこれらをアーカイブしており、その後も細々とコレクションが増え続けているというのは以前の記事で書いた。
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今回、埴輪展ということで、
「きっと大々的に埴輪レプリカを売り出しているのだろうな。困ったなあ、また嫁に怒られるなあ」
と、内心買う気満々でワクワクしていたのだが、会場ではこんなのしか売っていなかった…。↓
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…違う、そうじゃない。
しかも高ぇ。
(だけどしっかり完売してやがる…)
いやいやいやいや違うのよ。
私はもっと精巧なレプリカっぽいのが欲しいのよ!
絶対売れるって。
少なくとも私は買う気満々でいたさ!
…まあいい。話を戻そう。
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日本最大の埴輪。
正解の無いパズルを当てはめていくような気の遠くなる作業の末の産物。
天井部分は本当に広がっていたのだろうか?とか、実際は高さがこんなにあったのだろうか?とか、色々な思いが巡る。
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ピエロのような帽子と文様。
よくこんなきれいに色が残っていたなあ。
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家埴輪。
屋根がかっこいい。
構造計算的には理にかなってなさそうな形状のようにも感じるが実際はどうだったのだろう。
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キャンプ好きの私は左右の連結の雰囲気がこれに見えてしまった。↓
船埴輪。
実際の航海で用いた船の模型というよりは、王の魂を運ぶという象徴的要素が強いか。
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馬埴輪。
脚部分はほとんどが推測。
本当はスフィンクスのように座っていた、とかないかな。
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あごひげ埴輪。
ヒゲというよりアゴという感じだなあ。カイジ的な。
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そもそも「複数人物の破片を1体に復元している」ってもしかしたらアゴでもヒゲでもないパーツの可能性も微レ存か。
今回の主役《挂甲の武人》ファミリー。
そもそもこの埴輪の国宝指定50周年を機に今回の展覧会が企画された。
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推測部分も多いものの埴輪自体は概ねこのような形で作られたのだろう。
ただ、それがそもそも当時の武人を忠実に再現したものかどうかはわからない。
広がったスカート部分からパーフェクトジオングのように生える足の太もも部分を見ていると骨格的にかなり不自然なようにも思えてくる。
焼き物の構造上、上半身の重量を支えるためにあんなに不自然なほどボリュームを持たせただけで、実際の武人の服はそこまでボリュームはなかったのではないだろうかとか思ったりもする。
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いずれにせよ存在が確認されている5体の《挂甲の武人》が揃い踏みすることは史上初であり、「今後50年はないだろう」と図録内文章にて担当学芸員に言わせるほど貴重な機会だったことは間違いない。
今回はバンク・オブ・アメリカの支援にて解体修理、研究調査を行ったとのことだが、おい、我が赤・青・緑の銀行たちはどうした?
彩色復元を施した《挂甲の武人》
見慣れないということもあるが、侘び寂びのかけらもない。
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こちらは複合的な附としての扱いだが、もう一体の国宝《挂甲の武人》
しかし上半身なんかはほとんどが推測だな。
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「あ、何見てんだよ?」的なヤカラニキ埴輪。
顔の角度とかフェイスタトゥーとか柄服とか絶妙なヤカラ感。
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ヴェルサーチ的な柄服かと思いきや盾だったのね。
力士埴輪。
…とのことだが大事な部分がほとんど推測な気もする。
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マシュマロマンみたいな形状だが、ただの円筒だった可能性は本当にないのか?
これくらいの雰囲気があると安心する。
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何かを見上げているようにも見えるが、
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踊っているのか。盆踊り的な?
武士埴輪。
最後はエピローグとして近代へ。
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明治天皇崩御の際に制作されたとのこと。
長いこと忘れ去られていたようだが、埴輪は本来こういう意味合いのものだった。
この辺りのくだりは、現在東京国立近代美術館にて同時期開催している「ハニワと土偶の近代」への伏線のようにも思えた。
しかし確かにこれだけの数の埴輪が全国から集結するのは非常に貴重な機会だったのは間違いないのだが、みなさんそんなに埴輪が好きだったのですね、というくらい人が多かった。
平日午前中でこれだから休日の混雑は考えただけで恐ろしい。
特別展やってない時の平成館の一階なんかいつもガラガラで閑古鳥鳴いてるのに。
今回出品されていた埴輪たちも普通にいるよ。
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この埴輪機運高まりの流れで宮内庁管理の陵も本格的に発掘調査を行えば、4〜6世紀あたりの日本史の解像度が一気に高まるような発見がザクザクあると思うが。
もちろん墓を掘り返すという行為は背徳的ではあるのだが、そこに国宝級の超一級史料が大量に眠っているであろうと想像すると、やはり一日本人としてロマンを感じる。
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