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【美術展2024#89】トプカプ宮殿博物館・出光美術館所蔵 名宝の競演@出光美術館

会期:2024年11月2日(土)~12月25日(水)

日本とトルコ共和国が外交関係を樹立して100周年を迎えた本年、両国の友好を記念した特別展を開催します。トプカプ宮殿博物館ならびにトルコ・イスラーム美術博物館から金銀や宝石で彩られた宝物、さらには中国陶磁などの至宝が集結。出光美術館からはトプカプ宮殿博物館の中国・日本陶磁と類似する作品をはじめ、当館が誇る中国・日本陶磁の名品や華やかなトルコ陶器を厳選します。世界の人々を魅了してきた名宝の競演にどうぞご期待ください。

出光美術館


帝劇ビルの建替計画にともない12月をもってしばらくのあいだ休館することになった出光美術館。
一年かけて行ってきたコレクション展「ここから、さきへ」の最終回「ここから、さきへIV 物、ものを呼ぶ 伴大納言絵巻から若冲へ」も記憶に新しいが、今度こそ本当の千秋楽。

今年が日本とトルコの外交関係樹立100周年ということで両国の友好を記念した特別展を開催とのこと。


私は20年前にトプカプ宮殿に行ったことがある
その旅では陸路でのアジア横断が一つの目標だった。
2004年1月、日本を出発し北京に入り、そこから列車やバスを乗り継いでアジアの西、トルコのイスタンブールを目指した。

真冬の中国を南下して、春になる頃に東南アジアに入り、ベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、ミャンマーを回った。
バングラデシュを経由し、夏の2ヵ月間を灼熱のインドで過ごした。
北上してネパールに入り、ヒマラヤ山脈を越えチベットに入り、秋に中国最西部の新疆ウイグル自治区へ抜けて、キルギス、パキスタン、イランを通過した。
そして季節は冬。
丸1年かかってようやく12月にイスタンブールにたどり着いた。
まさにちょうど20年前の今頃の時期だ。

イスタンブールは海峡を境にアジア側とヨーロッパ側にまたがっていた。
旧市街や安宿街などの街の中心部はヨーロッパ側に属しているため、アジア側の港からフェリーに乗り込みヨーロッパ側へ向かった。

左からスルタンアフメッドジャーミー
アヤソフィア
船の向こうにトプカプ宮殿

フェリーが終着点のヨーロッパ側の港に接岸され、船からゆっくりと一歩踏み出し、そして、ヨーロッパの土を踏んだ。
1年前にアジアの東に立っていた私が、確かにヨーロッパに立っている。
感無量だった。ただひたすら感無量だった。

早いものでその時からあっという間に長い年月が過ぎてしまった。
けれども、私は今でもふとこの瞬間のことを思い出す。
その記憶は私をもう一度あの場所へと連れていってくれる。
そして、今もなお自信と勇気をくれるのだった。

その旅では北京からイスタンブールまでのアジア横断を達成した後、そこから南下してシリアに入り中東諸国を巡って、エジプトまで行って中東縦断を達成した。
私のその後の人生に大きな影響を与え、今でも太い幹の一本となっているその1年2ヶ月の旅のディティールは今でも鮮明に覚えている

酒を飲みながらの旅の話はいつも饒舌になってしまう。
(きっとこうして煙たがられる爺さんになっていくのだろう…だけどビールうめえ🍺グビグビ


話を戻そう。

この風景ともしばらくお別れだ。

展示室内は写真撮影禁止

展示はトプカプ宮殿博物館から借りてきたガラスや金属の品々から始まる。
世界史のある時期にまさにイスラム世界の中心だったトプカプ宮殿には東西の粋を極めた品々が集まっていた。
当時のイスラム世界の最高の職人たちが制作した工芸品の数々。
世界に先駆け唯一磁器を作ることができた中国磁器の品々。
明から清への時代の移り変わりの影響で日の目を浴びることになった伊万里焼。

途中から出光美術館所蔵の作品が増えてくる。
「トプカプ宮殿にも似た型の品が所蔵されている」とかキャプションに書かれていたりするが、そのトプカプ宮殿の品とやらがないと自前のコレクションを見せられているだけという気がしないでもない。
まあそうであっても景徳鎮や有田の品々は今見ても本当に素晴らしい品々だと思うし、出光美術館のコレクションは間違いなく素晴らしいとは思うのだが。

最後のコーナーは出光美術館所蔵のトルコ製タイルや陶器が並ぶ。
私はトルコに行った時、陶器工房にも見学に行った。

工房の職人

トルコの陶器職人はイスラム世界の中では腕が立つ者が多くいたため、イスラエルの岩のドーム修復の際にも多数派遣されその外壁をトルコ産のタイルが飾ったという。

ただ、個人的には東洋の磁器の方が圧倒的に質が高いと思った。
特に宋〜明代あたりの中国磁器は本当に素晴らしいし、古伊万里も負けていない。
そしてそれらの価値を認めコレクションするトプカプ宮殿の審美眼も同様に素晴らしい。

今回の展示はタイトル通りトプカプ宮殿博物館と出光美術館所蔵の名宝の競演だった。
だが、ほぼほぼ陶磁器の展示物で少々単調だった気もする。
やはり前回の展覧会が実質フィナーレで、今回の展覧会はエピローグ的な位置付けだったのだろう。
主役級のコレクション作品群は前回までで出し尽くしているので、今回は名バイプレイヤーたちに花を持たせるようなそんな内容だった。
所蔵品や什器を移動させて館内をスケルトン化していくスケジュールの中でタイミングよく日本とトルコの外交関係樹立100周年だったので所蔵品を駆使して強引に最後の企画を立ち上げたような、まさに閉店セールのような寂しい空気感が漂っていたように感じた。

窓から皇居のお濠を望む


外に出たらすっかり陽も落ちてイルミネーションが煌びやかに輝いていた。
東京駅の周りでは今もビルが壊され、そして新しいビルが建てられている。

最新のスタイリッシュなビルも良いのだが、歴史ある昭和の名建築がどんどん姿を消していくのはやはりなんだか寂しいなと、ふと思った。



【美術展2024】まとめマガジン ↓


【アジア横断&中東縦断の旅 2004】↓


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