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●美術館の名作椅子#05●東京国立博物館 法隆寺宝物館

東京国立博物館 法隆寺宝物館

設計:谷口 吉生
開館:1999年




・Cab 413 Chair

《Cab 413》

デザイナー:マリオ・ベリーニ
発表:1977年
メーカー:Cassina
価格:¥418,000
(2024年現在)

アームなしの412とともにMoMAにも収蔵されている名作椅子
この椅子は東京国立近代美術館にも大量に採用されている。
ここ法隆寺宝物館ではエントランスに数脚並ぶが、なんとこの椅子の脚が置かれた床には位置がズレないように脚の設置面に溝が掘られている

床の溝

この椅子をこの場所にこの間隔で設置することまで含めて空間を設計した谷口吉生氏のこだわりに感動。
ちなみに谷口吉生氏は同敷地内に建つ東洋館の設計者である谷口吉郎氏の息子だ。
さらにその吉郎氏は東京国立近代美術館の設計者でもある。
ここ法隆寺宝物館のCabチェアは吉生氏が選定したのだろうが、東近美のCabチェアは吉郎氏が選定したものなのだろうか。
そうならば椅子つながりの文脈も生まれて興味深い。

我が家のダイニングではこのCab413とアーム無しの412を愛用している。
美しさ、佇まい、座り心地、机との相性など全てお気に入りの逸品
我が家のものはCab35周年記念の2012年限定シボ革仕様。

2012年限定モデルの《Cab_C》

この革は汚れや傷に強いのでデイリーユースにとても良いが、ノーマルタイプに比べ柔らかく若干伸びやすいのが玉に瑕。

テーブル



・Wiskey Chair

デザイナー:マリオ・ベリーニ
メーカー:Cassina
価格:¥512,600
(2024年現在)

Cabと同じくこちらもマリオ・ベリーニがデザイン。
MoMAに6点の作品がコレクションされているイタリアモダンデザインの巨匠。
座り心地はLC2の沈み込みを若干弱めたような感じだが、アーム部がシンプルな分、長時間リラックスするというよりは、ちょっと座って短時間の休憩をするという用途に向いている気がする。
公共空間のかしこまった場所によく似合う。



・2 FAUTEUIL GRAND CONFORT, PETIT MODELE (LC2) Single Sofa

《LC2》

デザイナー:ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアン
発表:1928年
メーカー:Cassina
価格:¥1,397,000
(2024年現在)

こちらもMoMAに収蔵されている20世紀のマスターピース
「住宅は住むための機械である」というコルビュジエの言葉は、装飾を排し機能性を追及したこれらの椅子にも当てはまる。
同構造でサイズの比率が異なるLC3に比べるとLC2は幅狭で座面が高く沈み込みが大きいため包まれ感がある。
LC2とLC3で好みが分かれるが、座高が低くてゆったりとしたLC3の方が私は好きだ。



・EAMES ALUMINUM GROUP CHAIR MANAGEMENT Chair

デザイナー:チャールズ&レイ・イームズ
発表:1958年
メーカー:Herman Miller
参考価格:¥331,100〜
(2024年現在)

受付用の椅子はイームズの名作アルミナムグループマネジメントチェア。
ファブリック仕様だが、現在ハーマンミラーのHPにはレザー仕様しか出ていない。
ハーマンミラーは細かいところまでカスタマイズできるのでショップに行けば様々な仕様に変更できるはず。
ちなみに東京なら静嘉堂文庫美術館のすぐ隣にハーマンミラー丸の内店があるので美術館に行くのに合わせてショップを訪問してみるのもよい。



・まとめ

法隆寺宝物館は本館や東洋館に比べて新しい竣工(とはいえ1999年)のためか、採用される什器についても館に合わせたこだわりの選定をしているように思う。
特にエントランスの《Cab 413》に関しては椅子の置き場所についてもミリ単位でこだわっており、この椅子でなければ成り立たないくらいの緊張感や必然性を感じる。
このようなこだわりは大好きだ。

2024年末にこの法隆寺宝物館の設計者である谷口吉生氏が亡くなった。
日本建築史に名を残す偉大な建築家だった。
心よりご冥福をお祈りする。



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