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【美術館の名作椅子#04】東京国立博物館 本館

東京国立博物館本館

設計:渡辺 仁
開館:1938年




・Barcelona Day bed

縦に2台並べる
クッションを外し横付けで並べる

デザイナー:ミース・ファン・デル・ローエ
発表:1930年 
メーカー:Knoll
価格:¥2,970,000(2024年5月現在)

名作バルセロナチェアのデイベッドバージョン。
構造もバルセロナチェア同様にシートの下にレザーバンドが張ってある。
レザーバンドなので使っているうちに伸びてくるのは避けられないし、劣化するとヒビが入って最悪切れたりと旧時代の仕様だが、デザインのアクセントにもなっているし、ある意味このベンチのアイデンティティでもあるので改良するわけにもいかないか。
しかし輸入名作家具は毎年の値上がり率がエグい…。
トーハクでは展示作品の入れ替えに合わせて置かれ方がちょいちょい変わる。



・PK80

《PK80》

デザイナー:ポール・ケアホルム
発表:1957年
メーカー:FRITZ HANSEN
価格:¥2,923,800(2024年5月現在)

多くの美術館で採用されている名作ベンチ。
国立新美術館東京都現代美術館にも置かれている。
低い座面と固い座り心地が特徴。
PK22同様こちらもミース・ファン・デル・ローエのオマージュとのことだが、ポール・ケアホルムは完全に独自の哲学で全く別のものに昇華しているのは素晴らしい。
輸入家具はどのメーカーも毎年ガンガン値上げしており、2年前に250万円だったこのベンチも(それでもなかなかだが)、公式HPによるといつの間にやら最廉価のレザーでもなんと約300万円!
しかしさらっと置いてあるベンチが1脚300万円なんて知ってて座ってる人は何人いるかね。



・REFOLO Sofa

《REFOLO W1870》×2
《REFOLO W2330》×2

デザイナー:シャルロット・ペリアン
発表:1953年 
メーカー:Cassina
(ベース:W1870 座×2)価格:¥1,925,000〜
(ベース:W2330 座×3)価格:¥2,607,000〜(2024年5月現在)

ペリアンは1940年に坂倉準三の誘いで日本の輸出工芸指導の顧問として来日し、柳宗理らの案内で日本各地を巡り日本の近代デザインにも大きな影響を与えた。
その後も日本との関わりは深く、このベンチも東京で発表された。
史料にもその姿が残る。

「シャルロット・ペリアンと日本」公式図録より

トーハクの一階のREFOLOは薄暗い場所に置かれ扱いが雑な感じ。
現行品であれど美術館・博物館に置かれる名作椅子や家具はキャプションとか解説文とか付けてもっとアピールすべきだと思うのだが。



・FOSTER 510 Bench

デザイナー:ノーマン・フォスター
メーカー:Walter Knoll
価格:¥1,889,800(参考価格)(2024年5月現在)

プリツカー賞も受賞している建築界の巨匠ノーマン・フォスターデザインのベンチ。
Walter Knollはドイツの名門高級家具メーカー。
日本支社が無いので日本での知名度は低いメーカーだが、ドイツならではの堅実な作りと最高級の革質に定評がある。
このベンチにはいくつかのサイズがあるようだ。
トーハクのサイズのものは見つからなかったので参考までにワイドサイズのものを。
ちなみにアメリカンミッドセンチュリーの雄「Knoll」はこのウォルター・ノルの息子のハンス・ノルがアメリカに渡り創業した。



・Together Bench

《Together Bench》

デザイナー:EOOS
メーカー:Walter Knoll
発表:2004年

こちらもWalter Knoll。
日本ではYAMAGIWAが正規代理店だが、いろいろ調べてみたがこのモデルは日本では正規展開していないか。
本国では様々なバリエーションがある様子。
この写真でも奥に別バリエーションが見える。



・Roundish アームチェア

奥には《セブンチェア》が並ぶ

デザイナー:深澤 直人
発表:2018年
メーカー:MARUNI
価格:¥126,500(2024年5月現在)

アップル新本社「Apple Park」にも大量に採用された名品《HIROSHIMA》の生みの親でもある深澤直人のデザイン。
元々高い技術力を有していたのだがいまいちパッとしなかった印象のマルニ木工を、深澤氏はデザインの力で世界に羽ばたかせた。
素晴らしい。



・CH07 Shell Chair

デザイナー:ハンス J. ウェグナー
発表:1963年
メーカー:Carl Hansen&Søn
価格:¥507,100(2024年5月現在)

発表当時、その斬新すぎるデザインから受け入れられずに数台しか製作されなかったとのこと。
1998年にカール・ハンセン&サンが復刻すると大きな反響を呼び、今では名作椅子のひとつとして名を馳せている。
この椅子は国立新美術館にも多数採用されている。
上質なレザークッションと木製のフレームがしっかりと体重を受け止める。
低い座面と背中の角度が体にフィットして安定感がある。
美しいフォルムと安定感のある座り心地が素晴らしい。
同じくウェグナーの《Coffee Tables》も置かれている。
写真をよく見ると奥にはやはりCarl Hansen&SønのCH33Pが。



・Swan Chair

《スワンチェア》

デザイナー:アルネ・ヤコブセン
発表:1958年
メーカー:FRITZ HANSEN
最廉価仕様 ¥558,800(2024年5月現在)

デンマークのSASロイヤルホテルのためにデザインされた。
美術館やホテルのような公共の場にとてもよく合う。
張地の仕様がわからず。
ファブリックでもランクによって価格に差が出るので参考価格として再廉価仕様のものを記載。



・E016 Embrace Footstool

デザイナー:EOOS
メーカー:Carl Hansen&Søn
価格:¥196,900(2024年5月現在)

階段の踊り場にひっそりと佇むスツール。
合計すると結構な数が置かれているのだが、ただ置いてある感が否めない。
名作椅子がもったいない。



トーハクの椅子ラインナップは古今東西の名作揃いなのだが、ごちゃ混ぜすぎていまいち全体の計画性やストーリーを感じず。
長期的な見通しを立てずに場面場面でその都度増やしていったような印象。
せっかくの名作椅子揃いなのに、ただなんとなく置かれているだけのものが多く運用しきれていないのが非常にもったいない。

日本を代表する博物館なのだからいっそのこと日本人デザイナーのものだけで揃えてみるというのも良いのではないだろうか。
外国人の来館も多いのでジャパニーズデザインのいいアピールになると思うのだが。



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