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【美術展2024#94】VR作品『アンコール遺跡バイヨン寺院 尊顔の記憶』@東京国立博物館 東洋館
会期:2024年10月16日(水) ~12月22日(日)
デジタルアーカイブの先駆的作品をリバイバル上演
巨大世界遺産をデジタル再現!今なお色褪せぬ、バイヨンへの旅
世界遺産アンコール遺跡群の中でも異彩を放つ、バイヨン寺院。この圧倒的な規模を誇る文化遺産を後世へと守り伝えるため、今から約20年前、ドローンも無い時代に、研究者たちは巨大な遺産を計測する技術を開発し、デジタル計測に挑みました。本VR作品は、その情熱の結晶と言えるでしょう。
カンボジア王国政府の承認を得て製作した本VR作品は、100万m³のバイヨン寺院をまるごとデジタル化し、9世紀から15世紀に栄えたクメール王朝が築いた、穏やかな微笑みをたたえる尊顔像や当時の人々の暮らしなどをいきいきと描写したレリーフをそなえる非常にユニークな遺跡を再現しました。
デジタルアーカイブの草創期に、これほどまでの臨場感にみちたコンテンツを作り上げた、先駆的存在と言える作品を改めてお届けします。
トーハクは本館、平成館ともにいつも混んでいるが、東洋館や法隆寺宝物館はいつも空いている。
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東洋館は私の大好物である東洋美術を集めた別館で、ここへ来れば中国からエジプトまでのアジア〜中東の美術文化を一通り抑えることができる。
まさに私が旅をしてきたルートと丸かぶりするエリアの品々は訪れるたびに昔の旅の記憶を蘇らせてくれるので、トーハクに来た時は特別展で疲れていても東洋館はざっくり一巡することにしている。
谷口吉郎設計の建物も素晴らしい。
息子谷口吉生設計の法隆寺宝物館と合わせて共に大好きだ。
今回の件であるクメール美術のエリアは東洋館を地下に降りてすぐに広がっている。
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カンボジアの美術はイコールアンコール美術だ。
1970年代にポル・ポト率いるクメール・ルージュが荒ぶって知識層や文化人を粛清しまくり国内を地獄の底に叩き落としたせいでカンボジアはその前後の歴史や文化が半ば断絶している。
当時のカンボジア情勢はISが支配していた頃のシリアやイラクですら及ばない程のヤバさだったことだろう。
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忘れてはならないカンボジアのもう一つの歴史
1990年代前半にUNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)がPKO活動を行い治安は回復しつつあったが、まだ私が初めてこの国に行った1990年代後半は、独裁者ポル・ポトが死去してから数年しか経っておらず、夜間は絶対に宿から出るなときつく言われていた。
事実、夜間には町中で銃声が響いていたし、郊外ではトラックや船が襲撃されたといった話はよく耳にした。
町には多くの銃が出回り、タイ国境に近い西部にはまだポル・ポト派の残党が多く潜んでいた。
警官ですら夜間には強盗と化すと言われており、彼らは合法的に銃を持っている分タチが悪いので、町中で警官を見かけても絶対に目を合わせるな、といった話もまことしやかに囁かれていたほどの不安定な治安情勢だった。
もちろん注意を怠らずに常識的な行動をしていれば普通に旅をする分には問題ない程度の治安は保たれていたが、当時まだ学生で旅の初心者だった私はドキドキしながら旅の先達の教えを遵守して日が沈んたら宿から出ることはなかった。
今までアンコール遺跡群には数年おきに計3回行ったことがある。
その中でも主役級のアンコールワットは今まで見てきた数々の世界遺産の中でもトップクラスの凄い建築物だ。
密林の中に数百年前から威風堂々とそびえ立ち、今もなお圧倒的な存在感を放っているこの巨大遺跡。
そして、これほどの建造物を人力で作ってしまうことのできる人間の想像力や美意識。
共に素晴らしいと訪れるたびに深く感動したものだ。
アンコールワットは元々ヴィシュヌ神を祀るために建てられたヒンドゥー教寺院だった。
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アンコールワットは後に仏教寺院に転用されて今に至る。
今でも内部にはヴィシュヌ神が祀られているが仏教の袈裟を着させられているのは東南アジアならではのご愛嬌。
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それに対して今回のバイヨン寺院は当初から仏教寺院として建立された。
城壁に囲まれたアンコール・トムの中心に建つ須弥山を模したその寺院はまさに宇宙の中心を意味する。
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タイのほっそりしたブッダの顔立ちとは違い、クメール人の顔立ちの特徴的な要素を含んだクメール顔のブッダになっているのは非常に興味深い。
宗教としては隣国タイ、ラオスと同じく上座部仏教で現在カンボジアの国教になっている。
そしてトーハクにはアンコール美術の美味しいところをつまみ食いするように、なかなか見応えのあるものたちが並んでいるのだ。
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2008年のバイヨン寺院。
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今回の映像は今から20年前に作られたものということで、私が2回目に行った頃の作品だ。
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映像は素晴らしい出来栄えだった。
当然ドローンなど無く、なんならデジタルカメラもまだまだ画質が悪くて使い物にならなかったような時代によくこれだけ高精細のデジタル映像を作成したものだ。
映像はもちろん録画・撮影禁止だったが最後に静止画での撮影タイムがあった。
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ということで、映像自体には満足だが、やはり実物を前にした感動には遠く及ばない。
アンコール遺跡群は人生で一度は必ず行かなければならない場所だと思う。
今はかなり行きやすくなっているし旅をする上で困ることは無いだろうから、まだ行ったことが無い方はぜひ訪れていただきたい。
東洋館一番奥の部屋ではイラン・パキスタンあたりのテキスタイル特集を行なっていた。
この辺りのエリアも大好物な私にとっては非常に興味深い展示だったが、やはりガラガラに空いていた。
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鑑賞する分には空いている方がじっくり見ることができるので良いのだが、もっと多くの方々に興味を持っていただきたいなあとも思う。
我が家のイラン産カシュガイ族のギャッベ
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