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なんにもない一日、君はなにをする?
4月1日、日本では新年度の始まり。なんとなく背筋がシャンとして、「新しい一年、頑張ろう!」てな気分になる日だと思うけど、我が家は特段の予定のない、なんにもない一日だった。
私には一応、来週入学式を迎える弟の防災頭巾カバーを作るミッションがあったので、布をジョキジョキ、ミシンをガーッ。作業を始めるとついつい集中してしまうので、兄弟のことはほったらかしにしていた。
皆が黙々と、好きなものに熱中すること30分。集中力が切れたところで兄弟の様子に目を遣ると、弟もなんやらハサミでジョキジョキ、のりでペタペタ。「何作ってるの?」と聞くと、「たからばこ!」と答えた。
先日購入した靴箱のロゴ表示が、切った厚紙で隠されていて、『たからばこ』と書かれていた。ふむ、確かにこれは宝箱だね。
作り主が「あけてみて!」と仰るので、早速オープン。中には丸めてゴムのかかった巻物のような紙と、鉛筆が入っていた。へぇ、なんだか聖なる巻物っぽいじゃない。
巻物を開いて見てみると、大好きなアプリ『Think!Think!』に出てくる、『レーザービーム』と『じゅんばんめいろ』のお題が書かれていた。
作り主自らが考案なされたということで、これもすぐに解けと仰る。「そろそろミシンに戻りたいのだけどな…」なんて、大人の戯言は通用しない。
仕方なしに取り掛かる。あんまりひょいひょい解いてしまうと、作り主の面目が立たないので、ちょっとわかんない風で。すると、「え?わかんないの?しょうがないな〜」と、ニヤニヤしながら私の手から鉛筆を取り上げ、チョチョイのチョイで解いた。そのドヤ顔がおかしくってしょうがない。
「え?わかんないの?〜」からの流れが欲しかっただけだろう。「すごい!」って、言って欲しいんだよね。
なんにもない一日、気分良く過ごしたいだけだ。お望みどおり「すごい!」と言ってあげた。すると、弟は満足気な表情で私の前から去っていった。君は褒めて伸びるタイプでしたね。ごきげんで良かった。さ、ミシンに戻ろ。
それから15分後、兄が突然、「レアチーズケーキ作ろう」と言い出した。
先日、給食のお便りに書かれていたレシピで、ベイクドチーズケーキを作った兄。その際、皆に出来栄えを散々褒められ、次回作を検討していたのは知っていたが、今なのね。暇になったら料理したくなるなんて、私よりよっぽど料理好きかも。
ファイリングしていた、クリームチーズのフタに書いてあるレシピを手渡すと、必要な材料をメモに書き写し、スーパーで買い出しも済ませてきた。こういう「好きなことをしているとき」の兄の行動力は、我が子ながらすごいなぁと思う。
計量も丁寧で、手順にしっかり従うので、大きな失敗は起きない。料理は兄の性格に合っているようだ。
スクラッチを使ったプログラミングも、たった一回の無料講習でやり方をマスターしてしまったし、完成に向けて手順がはっきりしている作業が好きなのかもしれない。そんなことを思いながら、お料理写真をパシャパシャ、洗い物をガシャガシャ。そこは私の担当ということで、お役目果たしました。
3時間冷蔵が必要なので、完成は夕飯時になってしまったが、見事な出来。
私も弟も、見た目の美しさと美味しさに感動していたら、グーンと伸びた鼻が見えるかのように喜び始めた兄。褒め言葉を欲しがる欲しがる。
「どんな感じに美味しい?」「今まで食べた中で1番かな?」「僕が作ると、どうしてこんなに美味しくなちゃうんだろう?」
自己肯定感の高さに、開いた口が塞がらないが、まぁいい。なんにもない一日、気分良く過ごしたいだけだ。一つひとつ、お望みどおりにお返事をして、ご満足いただけたようだ。そうそう、君も褒めて伸びるタイプでした。ごきげんで一日を終えられて良かったわ。ささ、私はミシン最後の仕上げ。
そのほか、各々好きなYouTubeを見たり、好きな本を読んだり、共通の習い事であるテニスの勝った負けたで思いっきり喧嘩しながらも楽しんだり。丸一日ほったらかしたら、兄弟が本当にしたいこと、好きなことが見えたような気がした。
春休みだからこその、のんびりな時間。年度の始まりに示しがつかない感じもしたが、ほったらかしは有意義だ。
私は防災頭巾カバーも完成して、無事に入学式を迎えられそうです。ホッ。