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アリスの秘密の世界4

「さてと」

チェシャ猫も消えてしまって、アリスはとりあえずそう言ってみました。

言えば何かいい案が思い浮かぶんじゃないかと思ったからです。

でも、何も思い浮かばなかったので、先程のチェシャ猫のセリフを思い出しました。

「とりあえず暴れライオンと暴れクマは避けましょう」

「そりゃそうだ」

アリスの言葉に白兎が素早く同意しました。

「暴れクマと暴れライオンはやっぱり暴れているのかしら」

アリスは疑問に思って口に出してみました。

クマとライオンが暴れるなんて、とても怖いことになりそうです。

「暴れってついてるからには暴れるだろう」

兎はこわごわと暴れクマと暴れライオンがいる方角を見つつ言いました。 

「そうね、危険にわざわざ飛び込む必要はないわね。じゃあ、もう一方の、帽子屋のお茶会に行きましょうか。あれもひどくヘンテコリンだったけど」

アリスは、以前来たときの事を思い出しました。

すごく不愉快だったことは覚えています。


「でも、暴れるよりはマシよね。それに、帽子屋たちにお城の場所を聞けるかもしれないわ」

アリスが言うと、兎も頷きました。

「いいんじゃないか?早速向かおう。どちらだったかな?」

兎の問いにアリスは自信を持って答えました。

「白い花が咲いているあっちよ。行きましょう」

そうして、アリスと兎は、森の中をてくてくと歩いて行ったのでした。


しばらく歩いていくと、三月兎のお家が見えてきました。

「帽子屋さんたち、あのお家の前でお茶会してるのよね」

三月兎の家の煙突は耳の形をしています。

そして、相も変わらず、その前にはテーブルがあって、帽子屋、三月兎、ねむりねずみがお茶のないお茶会をしているのでした。


「あの、こんにちは、ご機嫌よう」

アリスは、思いきって声をかけました。

内心はここにはもう来たくないと思っていましたが、やむを得ません。

「これはお嬢さんこんにちは」

帽子屋がまっさきにかけよってくると、アリスの手の甲にキスをしました。

「なんと麗しい」

アリスはびっくり仰天していました。

帽子屋は、前はこんなことはしませんでしたし、前はまだ幼くて気にしてませんでしたが、とてもハンサムだったからです。


「え、ええ、どうも」

動揺していることを知られたくないアリスは、咳払いをして答えました。

「どこかで会いましたかな?」

帽子屋は、アリスの近くに来てまじまじと見つめました。

「ええ、前にもお邪魔しましたわ。私がもっと小さい時ですけど。いえ、年齢も身長もってことですけど」

アリスが説明すると、帽子屋は、肩をすくめました。

「とにかく席についてお茶でも飲みたまえ」

アリスがチラッと兎を見ると、兎は首を横に振りました。

「あ、お誘いありがとう。嬉しいですけど、お訊ねしたくて来ました。もしかして、お城へどういけばいいか知りません?」

「知ってる。でも、お茶を飲まないと教えない」

帽子屋は、そんなことを言い出します。

アリスはテーブルの上を眺めました。

三月兎は、カップをカチャカチャ熱心に重ねています。

ねむりねずみは、蓋の空いたポットの中で寝息をたてています。

お茶を飲みようもないお茶会なんて憂鬱極まりないと思いましたが、アリスも少しは成長したので付き合うことにしました。

振り返って兎に話しかけます。

「お茶会に参加すれば城への道を教えてもらえるみたい。私、参加するわ」

兎は顔をしかめました。

「もう、とりあえず進めるところまで進んだらどうだい?こんなところでお茶しているのなんて時間のむ無駄だと思うけどね」

兎が不機嫌に言うので、アリスも少し怒って言いました。

「あなたの進めるだけ進むのだって時間の無駄よ。どちらにすすめばいいのか分かってないんですからね。兎さんは参加しなくていいから待っていてちょうだい」

アリスがそう言うと、兎はぶつぶついいながらも、少し離れた岩影に腰かけました。


アリスはお茶会に参加しようと椅子に腰かけました。

「見たことある、見たことある」

アリスが座ると、三月兎が指をさして騒ぎました。

「前にもお邪魔しましたから」

アリスがすまして言うと、

「これ沢山重ねるんだよ、もっともっとカップをちょうだい」

三月兎は、積み重ねていたカップを指さしました。

「これでいい?」

アリスが目の前にあったカップを渡すと、三月うさぎはひったくって上に乗せはじめました。

「楽しんでいるかい?」

帽子屋がアリスに質問しました。

楽しんでいるかなんて、答えようがないわとアリスは思いました。

でも、お城への道を聞きたかったので、

「ええ」

とだけ答えました。

すると、

「お茶をもっとどうぞ」

と帽子屋が言います。

「カップがもうありませんから結構ですわ」

アリスは三月兎にカップを取られたのでそう言いました。

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