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帽子をかぶって(短編小説)
題 帽子をかぶって
帽子を目深に被って。
誰にも見られたくない。
だってさ、私みたいな醜い人間、見たらみんな嫌な気持ちになるでしょ?
暗いし、話せないし、友達いないし、いつも考え込んで何も結局行動できないし、嫌いなんだ、自分なんて。
何度も否定してしまう。
そうして自分の顔を隠して、みんなから隠れて、少し安心する。
人と関わるとどう思われてるかいつも気にかけなきゃいけないんだもん。
1人でいれば、誰とも関わらなければ悩むことはないでしょ?
…でもさ、寂しさもあるんだよね。
それがもどかしい。
寂しさって人と関わりたいってことだから。
1人でいる事が嫌だってことだから。
人と関わると落ち込むって分かってるのに、そのままにはさせてくれないんだ、心のどこかが。
だから希望を持ってしまう。
いいのかな?希望を持って。
誰とも関わらないのは確かに楽なんだけど、なにも無いことは一種の幸せなことでもあるんだけど、求めてる心の奥の寂しさが浮き彫りになるんだ。
いつも一緒にいてくれなくてもいい。
少しでも優しい言葉を交わせればいい。
自分って存在を気にかけてくれればいい。
そんな気持ちが湧き上がってくるんだ。
私は帽子を少しだけ浅く被り直す。
そして、世界を見てみるんだ。
怖いけど、怖くてたまらないけど、私の求めている心の寂しさを埋めてくれる世界。
帽子はもしかして私の心の壁だったのかもしれない。
浅く被り直した事で、少しでも壁が崩れているといいなと思いながら、私はこわごわと1歩を踏み出したんだ。