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アリスの秘密の世界3

アリスは腰をさすりながら、なんとか立ち上がりました。

そして、辺りを見回しました。


そこは大きな森でした。

周りには無数の木々がそびえ立ち、葉っぱが揺れて、そよそよと涼しい風が流れてきました。

足元を改めて見ると、柔らかい草が地面を覆っていました。

「いったいここはどこなのかしら?」

アリスが独りごとのように言うと、

兎が答えました。

「城の近くではないみたいだ。入り口がありすぎて、どこにでるのか予想がつかない」

「そうなの。じゃあ、どっちにいけばいいのかしら」

アリスは困って言うと、兎は地面を軽くピョンピョンと跳ねながら言いました。

「進んで城がなければ戻ればいい」

その提案にアリスの心は重くなりました。

「それじゃあ、いつ城にたどりつけるかしら」

いつまでもたどり着けない可能性もありそうです。

「2日後か、3日後か、あるいは45日後か」

「それじゃあ、困るわよ!」

一刻も早くたどり着きたいアリスは強い口調で言うと両手をぎゅっと握りしめました。

「誰か人に聞けばいいじゃない」

アリスは誰かいないかとキョロキョロと辺りを見回しました。

「ここには人は君しかいないみたいだけどね」

兎はそう言うと、呑気に胸元から扇子を取り出すとヒラヒラと仰ぎました。

アリスが困りきって立っていると、目の前に急にパッチリした両目だけがあらわれました。


「あら、チェシャ猫さんだわ」

アリスは嬉しくなって両手を打ち合わせました。

「お久しぶり。元気でした?」

チェシャ猫は目だけパチパチとまばたきしました。

「そうか、まだ目だけだから返事は出来ないのね」

アリスは納得してそのまま待っていると、そのうち鼻と口も出現しました。

顔全体があらわれるとチェシャ猫はニヤニヤ笑いをして、アリスの方をギョロっと見ました。

「やあ、お嬢さん、ごきげんよう。いつぶりだろう?また会えて嬉しいよ」

チェシャ猫は、半透明になったり、実体になったりを繰り返しながら挨拶をしました。

アリスはそれを眺めながらどちらか一方に出来ないのかしらと思っていました。

「ええ、だいぶ時間はたったと思うわ。あなたは、あの、相変わらずね」

そう言ってチェシャ猫の不思議な顔を眺めていると、スカートの後ろをくいくいと引っ張られました。

振り向くと、いつの間にか兎がアリスの後ろに隠れて、スカートを引っ張っていたのでした。

あら、兎って猫とは仲が悪いんだったかしら?

アリスがそう思っていると、兎が耳打ちしてきました。

「早くお城の場所を聞いて」

すっかりそのことを忘れていたアリスは、

「そうだったわね」

と、チェシャ猫の、今は半透明になっている顔を見ました。


「あの、チェシャ猫さん、私達お城へ向かいたいのだけど、どちらへ行けばいいかご存知?」

「そうさねえ」

チェシャ猫はまばたきをしました。

すると、突然ふわふわした猫の手だけが出現しました。

そして、

「あちらの方へいくと」

と白い花が沢山咲いている方を指差して、

「帽子屋たちがあいも変わらずお茶会をしてる」

と言ってから、反対の赤い花が群れて咲いている方を指して、

「あちらの方角では暴れクマと暴れライオンが暴れてる」

と教えてくれました。

アリスは、

「ご親切にありがとう。でも、出来ればお城へ行く道をお聞きしたいんですけど」

教えてくれた手前、出来るだけ感じよく話しました。

「必要なことはもう話したよ」

チェシャ猫はそう言いながら次第に消えていきました。

「ちょっと待ってよ」

アリスが呼び掛けても、消えるのは止まってくれません。

目と鼻と口と顔の順番に消え、最後に手だけ残っていたのもすぐに消えてしまいました。

「あーあ、消えちゃった」

アリスはがっかりしました。

「猫なんて、消えた方がいい」

兎はアリスの後ろでホッとため息をつきながら言ったようでした。

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