ベトナムにいったい何があるというんですか?~南国ワインを探す旅、おしゃべりダラット編~
さて、ベトナムワ旅を続けます。
ハノイから、ダラットへ
ハノイで1泊した我々は、いよいよダラットへと向かいます。国内線で2時間。曇り空を抜け出す、空の旅です。
ハノイのノイバイ空港からダラットのリエンクオン空港までは、ナショナルフラッグである「ベトナム航空」、そしてLCCの「ベトジェット」と「バンブー・エア」が結んでいます。
今回我々は、ベトナムカラーの真っ赤な機体がチャーミングな、ベトジェットに乗り込みました。
ちなみに2時間のフライト中、乗客たちはひたすらおしゃべりに興じていました。ベトナムの人たち、本当によくしゃべる。いったい何がそんなに楽しいのか、友達同士で、あるいは家族同士で、ひたすら笑い合っています。
そう思うと、東京の通勤電車の静けさは異様ですね。わたしもフライト中は日本人らしくイヤホンでラジオを聴いていましたが、それってもしかしてここでは不思議な光景に映るのかもしれません。場所が変われば、常識が変わる。わたしの常識って、いったい何なんだろうな。
そんな思いを乗せて、ひたすらにぎやかに飛行機は着陸します。
リエンクオン空港からダラット市街までは、車でおよそ50分。電車は通っていないため、タクシーかシャトルバスを選択することになります。今回はタイミングよくシャトルバスに間に合いましたので、これに乗り込むことにしました。
ちなみにこの年末年始は、ベトナムのなかではかなり「寒い」数日間でした。体感気温は、12、3度ほど。特に夜はぐっと気温が下がり、上着がないと、凍えます。
にも関わらず、なぜかバスのなかはクーラーがガンガンきいていて、芯から冷えていくのです。もしやこれ、ベトナム人は平気なのか…?と思って周りを見渡すと、みんな寒そうに肩をさすっているではないですか。ですよね?
さすがに途中から乗客が運転手に文句を言い始めましたが、クーラーは止まりませんでした。たぶん、そういう設定がないんでしょう。ホテルに暖房がないところも多かったし、ベトナムのこの、「今の時期の2週間くらい我慢すれば、あとは暑いからまあいいか」という適当さ。いやもうほんと、別にいいんだけどさあ、ほんとそういうところやぞ…!(好き)
というわけで、今夜はぐっすり眠りまして、明日にそなえることとします。こういうの、寝たら全部許せるんよな。
そういえば、日本は年越しですね。みなさん、2022年はお世話になりました。来年もどうぞ、よろしくお願いいたします!
ダラットの朝
さて、ダラットの朝。時刻は4時30分です。早くない…?
実はこの日、ワインブログ界隈の大御所『安ワイン道場師範』の呼びかけで、リモート初日の出(はつひので)会が催されました。日本全国をウェブで繋いで、初日を見ながらワインを飲もうじゃないかという、なんとも最高の企画です。
わたしも喜び勇んで参加……したのはいいんですが、日本とベトナムの時差は2時間。つまり、日の出も2時間遅れるわけですよ。
というわけで、出るはずのない初日を待ちながら、日本からお届けされる初日の出に拍手を送る朝。眠い…!そして、寒い…!
とはいえ、元旦からワイン界隈のみなさんと乾杯できて、縁起のいい新年の幕開けとなりました。今年もいいワインが飲めそうだ~!
さて、せっかく早起きしたので、ちかくの朝市を覗いてみることにしました。
夜更かし傾向のあるますたや家は、あんまりこういった市場やマルシェには行きません。午後もあいてる観光市場ならまだしも、こういう「地元の人が集う」市場は、我々が起きた頃には終わっていることが多いのです。
人でごった返すカオスな活気に、圧倒されます。ここではちゃんと物売りもやって来るし、それなりに声もかけられます。地面はもちろん水浸しで、市場を歩き終わった頃には謎の泥はねで足が汚れていました。いやあ、なかなかのディープ具合。
この混沌の中で買われた野菜たちが、今日もどこかのハイソなレストランで調理され、提供されている。そう思うと、なんだか不思議な気持ちになります。そうだよなぁ、「食」のはじまりって、意外とこういうところだったりするんだよなぁ。
というわけで、眠い目をこすりながら、ダラットの市街へと繰り出しましょう!
幻の「コピ・ルアック」が生まれる農園へ
さて、せっかくダラットくんだりまで来ましたので、ワイナリーの前にちょっと寄り道をします。タクシーで向かったのは、コーヒー農園。そう、ここダラットは本来、ワインなんかよりも断然、「コーヒー」で有名な町なのです。
実はベトナムは、コーヒー豆の生産量が世界第2位というコーヒー大国。そのなかでもここダラットは、日本人にもなじみ深い「アラビカ種」のコーヒー豆の、一大生産地として有名です。
さらに、今回おとずれる「メーリンコーヒー農園」では、コーヒー豆のなかでもっとも高級品と言われ、その希少性から高額で取引される「コピ・ルアック」が生産されているというではないですか…!
コピ・ルアック、ご存知ですか?
コピ・ルアックは、ジャコウネコのフンに混ざって出て来たコーヒー豆によって造られる、高級コーヒー。その希少性から日本で飲むと1杯数千円、ホテルなんかだと1杯8000円なんてこともザラです。
生産地はインドネシアが主ですが、実はここベトナム・ダラットでも生産されています。ただし、市場に出回るものは偽物も多く、また海外の販路にも乗っていないため、本物のベトナム産コピ・ルアックがいただけるのはまさに現地ならでは。
▶ 初めて「コピ・ルアック」を知ったのが、映画『かもめ食堂』だったという方もいらっしゃるはず(わたし)
ワイン好きの方のなかには、結構コーヒーがお好きな方もいらっしゃいますよね。豆の種類とその煎り方、そして淹れ方の方法のかけ算によって表情が変わるところに、オタク力(りょく)の発揮しがいがあるところが共通している……のかもしれません。知らんけど。
さらにこの農園では、なんとこのコピ・ルアックの「生みの親」(※本当の意味で)であります、ジャコウネコ大先生にお会いすることができます…!
えーっ、ほんとに?!
というわけで、テンションが一番上がったのが高級コーヒーよりもジャコウネコゾーンだった、ますたやだったのでした。
ほら、価値ってね…知ってないと見い出せないものだから…1杯数千円のコーヒー?そうね、ワインなら出せるよね…(身に染みる)
ベトナムワインに会いに行く
コーヒー農園をあとにした我々は、一度ダラット市内に戻り、今度は逆方向に向かってタクシーで1時間走ります。
そうです。ここからダラット・ワインが生まれる、「ラドフーズ・ワイナリー」へと向かうのです。ようやくかよ…!
ワイナリーには、事前にツアーの予約を入れていました。到着するとすぐに、スタッフの方のご案内がはじまります。うん、すごい素敵なホスピタリティなんだけど、ちょっと待って、先にトイレ行かせて…!(行った)
さて。気を取り直して、ワイナリーツアーのはじまりです。ツアーはまず、ワイナリーの地下セラーからスタートします。
ラドフーズワイナリーは、「ラムドン食品」が運営するワインの製造&販売企業です。そしてこの綺麗なワイナリーは2019年に、ベトナムではじめてヨーロッパ規格によって建築されたんだそう。
これから「ワイン・ツーリズム」を推して行こうという、気概と熱意を感じますねぇ…!
奥には写真撮影スペースなんかもあって、ツアーガイドさんが写真を撮ってくれます。「観光ワイナリー」としてもなかなか映えるラドフーズワイナリー。ベトナム人、写真撮るの好きだから、なんかこういうところ日本人と気が合うんだよなぁ。
地上に向かう階段が、そのままワイナリーの中へと続いています。お洒落~!
さて、ワイナリーに戻ってくると、まずはワイナリーの紹介映像が流れます。日本語が用意されているのでわかりやすく、これがまたなかなかおもしろいんだ…!ちょっと見てください。
もっともびっくりしたのが、ブドウが「二期作」であるということ。なんとベトナムのワイン用ブドウって、年に2回収獲されるんですって!
ワイン用ブドウの二期作、恥ずかしながらわたし、今回初めて知りました。
夫氏が絶賛受講中であるWSET Lv.3の教科書には、しっかり「トロピカル・リージョン」の記載があるんだそう。なんでも、赤道に近い産地ではブドウの樹の休眠期がなく、年に2回の収穫が行われる反面、ブドウの樹の寿命が短くなるんですって。いやあ、知らなかった。世界は本当に広いな…!
これら南国で生まれるワインのことを、「新緯度帯のワイン」とか、「第三世界のワイン」とか呼ぶこともあるようです。温暖化が進むなか「未来が明るい」地域では決してないですが、それでもワインを愛し、ワインを造りたいと思う情熱、つい応援したくなっちゃうんだよなぁ…!判官びいき、大いに結構!
さて、いい感じにベトナムワイン愛が高まったところで、いよいよお楽しみのテイスティングにまいりましょう!
まず1杯目は「スペシャル」シリーズのソーヴィニヨン・ブラン(2017)です。これが意外に「ちゃんと」していて、1杯目から面食らいました。
ソーヴィニヨン・ブランらしい、いわゆる草原のような青い香りもしますが、あくまでそれは柔らかめ。くちあたりはスッキリした柑橘系で、雑味が少なく、クリアな仕上がりになっていました。
これ、南仏のソーヴィニヨン・ブランとブラインドで出したら、どっちがどっちか答えられないかもしれないぞアタシ…!
続く2杯目は、「クラシック・スペシャル」シリーズの赤ワイン。こちらはシラー主体で、いろんな品種が混ざっているものです。
なかなか「赤ワインらしい」テイストですが、これは取り立てて「美味い!」っていう感じではなかったかな。軽やかで、ごくごく行けちゃうタイプの赤ワイン。ただ全然嫌な感じはなく、むしろこれが現地価格1000円未満で買えるとなると、俄然「ごくごく飲む用ワイン」としての使いどころが出て来る感じです。
印象には残らないけど、なんの邪魔もしないし、安い。そういうワインが飲みたい日が、あるんですよ、ベトナム人だって、日本人だって、ますたやだって!
さて3杯目は、「スペシャル」シリーズのカベルネ・ソーヴィニヨンをいただきます。
これが、香りの時点で「ンッ?!」となります。なんだこの、フローラルお花ヨーグルトみたいな香り…!
ヨーグルト系の香り、つまり乳酸系の香りって、いわゆる「マロラクティック発酵」由来のものが多いと考えられますが、このワインはなんというか、それだけじゃない感じがするんですよ。
なんというか、ホントに南国のお花みたいな、カラフルで甘っぽい香り。そこに酸が乗って来るので、結果的にブルガリアヨーグルト・ブルーベリー味みたいな香りになってるような…
飲んでみるとこれが意外にも、「カベルネ・ソーヴィニョンらしい」味わいです。酸は柔らかくタンニンをしっかり感じる、軽やかで親しみやすいカベルネ・ソーヴィニヨン。えー、いやこれ、結構まじで、あなどることなかれかもよベトナムワイン…!?
すっかりワイナリーを楽しんで、小1時間の予定が1時間半ほどが経過していました。外で待ってくれたタクシーの運転手にチップを渡し、また1時間かけてダラットに戻ります。ああ、楽しかった!
そして旅が終わる
ホテルでワインを詰め替え、タクシーで空港へと向かいます。日本を出るときにはすかすかだったトランクが、いつの間にか重みを増しています。
たくさんの思い出と、ワインの重み。タクシーの運転手が渋滞を抜けようとして判断を誤り、ものすごいスピードで高速道路を飛ばすのに揺られながら、楽しかったベトナム旅に思いを馳せます。
ちなみに、リエンクオン空港には「ラドフーズワイナリー」のワインがある程度そろっています。え、ここで買えばいいんじゃね…?という心の声には目をつむりましょう。現地に行ってこそのワ旅だから…ッ!
さて、ベトナムワ旅に出ても、わたしが変わることはありませんでした。
人生を変える出会いもないし、いきなり聖人君子になれるわけでもない。別に英語もしゃべれないままだし、昨日と同じくらい、今日のわたしも、わがままです。
年を重ねるごとに、感動の幅は小さくなるような気がしています。それは、「前にもこういうことがあったな」と、比べることができてしまうから。
こどもの頃は、見るもの全部が新しかった。世界はキラキラしていて、グラウンドを走りまわるだけで何時間だって過ごせました。あの頃のはじけるような感性を、ふと懐かしく思うこともあります。
でも。それでもわたしは、旅に出ます。お金をかけて、面倒くさい準備をして、苦手な飛行機に乗って、緊張をしながら、それでも。
わたしが変わることはないけれど、そしてたぶん、この先もわたしはわたしだけれど、ほんの少しだけ「知っている場所」が増えていく。それは、イメージ力の乏しいわたしにとって、「自分のこと」として捉えられる場所が増えるということなんです。
ひとと会って、話して、笑って、「好きだな」と思うこと。
それはわたしがこの世界のことを、「好きだ」と思い続けるための、小さな努力、なのかもしれません――
知らんけど!
というわけで、前後編のベトナムワ旅、お付き合いいただきましてありがとうございました!いやあ、楽しかった、楽しかった!
持ち帰ったワインを元手に、2月後半には南国ワインを集めたワイン会も企画しております(案内はこれから出します)。ご興味がある方はますたやのTwitterをフォローのうえ、お待ちくださいませ🍷集客力弱そうだけど…!
▶ ますたやTwitterはこちら
それではあらためまして2023年も、どうぞよろしくお願いいたします🍷
今年もたくさんのワインと、ワインにまつわる「楽しい!」に出会っていきたいと思います🍷ご一緒よろしくお願いしまーす!😄
3000円ワインをこよなく愛する3000円ワインの民、ますたやがお届けしました♪
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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)、夫婦で1本を分けあって飲みます。2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得、2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパート・WSETLevel2(英語)を取得、現在はWSETLevel3(英語)に挑戦中の、ワイン大好き夫婦です!
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