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みじか小説「2面のボスと6面のボスの遠距離恋愛」

拝啓:2面のボス  スピードホーク様

こんにちは。人間共の悲鳴が、北の山々から聞こえて参ります。きっとスピードホーク、貴方様のご活躍でございますでしょう。
我らが魔王様の侵攻が日に日に激しさを増し、それはそれは喜ばしいことですが、あなたにお会いする暇もない今日この頃を憂う日々でございます。
ああ、スピードホーク様。
あなたの華麗なる風さばき、さぞや鋭さに磨きがかかっていることでしょう。
噂に聞く、勇者なる野蛮な存在など造作もなく木っ端微塵にするさまが、容易に目に浮かびます。
ああ、この熱い愛を、直接伝えることができないのが残念でなりません。
使いの者に我が領地で採れる幻の鉱石オリハルコンを持たせました。
貴方様をお守りいただけますように。
お慕い申しております。
ああ、世界に混沌を。魔王様の名のもとに。

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拝啓:6面のボス  ボルケーノ・クイーン 様

お便りとても嬉しく存じ上げます。何ぶん、小生、文というものに慣れておらず拙文失礼します。
日々、剣の鍛錬に精を出す日々。魔王様のご期待に応えれるよう、砦のトラップを強化したり、モンスターたちの訓練を繰り返し、そして人間共の集落を襲い、恐怖と混乱をもたらすことも欠かしてはおりません。
それは貴女、ボルケーノ・クイーン様へ、勇者なる者を近づけさせないためでございます。
このスピード・ホーク、魔王軍最速のスピードを誇る体術から為せる剣技の数々、貴女へお見せできないことが非常に残念でございます。
先日、修行の成果でしょうか。とても大きなトルネード攻撃を出せるようになりました。
新たな技の習得と、貴女の美しさに乾杯したいほどです。
熱いでしょうが、お体ご自愛ください。
貴女を思わない夜はありません。
オリハルコン、初めてお目にかかりました。なんと美しい輝きでしょう。
貴女には、敵いませんが…。
この戦いが終わったらぜひ一緒にこの輝きを共に見たいものです。

あなたの剣  疾風の剣豪 スピード・ホークより

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拝啓:2面のボス  疾風の剣豪 スピード・ホーク様

お返事光栄で御座います。嬉しくて嬉しくて、火山を噴火させてしまいました。
先日の魔王軍の集会ではちゃんとご挨拶できず、失礼いたしました。どうやら1面のボスである ジャイアント・ゴーレムが勇者とやらに倒されたようで、魔王軍も混乱しています…。復讐に燃える貴方様のお顔を見ていると、何もお話することができず。
スピード・ホーク様の速さなら、勇者などおちゃのこさいさいでございます!噂によると、勇者は人間の子供と聞きます。子供に何ができますでしょうか。おつむが弱いジャイアント・ゴーレム、彼は魔王軍のボスの中でも弱い方に入ります。負けて当然です。貴方様とは違います。
自分からしといて失礼ですが、そんな話がしたいのではございません。お手紙の中では戦いのことは忘れたいのです。貴方様の事だけを考えていたい。
貴方様の書く魔物文字、とても気品を感じる美しい書き方ですね。拙文などとんでもない。
とても大きなトルネード攻撃の習得、おめでとうございます。ああ、溶岩の中を泳ぎたい気分。自分のことのように嬉しいのです。
きっと、勇者などひとたまりもないことでしょう。
ああ、見てみたい。
ぜひ、共にオリハルコンを見ましょう。
あなたの肩に身を任せ、月夜とともに.…。

あなたの炎  ボルケーノ・クイーンより

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拝啓:2面のボス  疾風の剣豪スピード・ホーク様

お元気ですか。
お手紙のお返事がありませんで、とても寂しく思っております。
きっと勇者との戦いに集中しておられるのですね。
ご武運をお祈り申し上げます。
最近、このフレイムマウンテンにバーニング桜が咲きました。
美しく咲いて、燃えカスになっていくそのさまは儚くも叙情的でもあります。
スピード・ホーク様にも見て欲しい。
ああ、スピード・ホーク様、
ああ、スピード・ホーク様…。

恋のマグマ  ボルケーノ・クイーンより

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拝啓:2面のボス  疾風の剣豪  スピード・ホーク

この手紙が届いておりますでしょうか。
もしかすると使いの者がヘマをしでかしてるのかしら。戦いが終わり、休暇をとられているのですね。
そのいとまに、お返事を書いていただけると嬉しいです。
3面のボス アナコンダ・ウィッチも連絡がつかないと魔王軍の連絡網で話題になっていたので心配です。アナコンダ・ウィッチは変わり者の蛇使いですから、黒魔術にふけってるだけだと思いますが。
自分からしといて失礼ですが、こんな話がしたいわけではないのです。
スピード・ホーク様、あなたの剣技で私の岩石に傷をつけてほしい。
あなたの証を刻んで欲しい。
あなたと燃え上がるようなキスをしながら。
もう気持ちを抑えられない。
ああ、どこにいるの、スピード・ホーク様。
お返事、お待ちしております。

愛の活火山 ボルケーノ・クイーン より

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拝啓:スピード・ホーク様

あなたと出会ったのは、3年前の人間討伐研修があったあの春でしたね。
いかに他の魔物を出し抜き、魔王様にアピールするかやっきになっていた私とは違い、ただ自分の剣技を磨き続け、下級魔物にも優しく接するその姿に私のマグマが煮えたぎったことを覚えております。
普段は火山で生活しているため、体が冷えてしまう私に上着をかけていただいたこと、今でも覚えています。
そして時は過ぎ、あなたは第2の砦がある風の谷へ。
私は第6の砦があるフレイムマウンテンを任されました。
反旗を翻す人間がたまに第1の砦を攻めては、ジャイアント・ゴーレムにミンチにされる日々でしたが、どうやら、時代が動いたのですね。
スピード・ホーク様、
貴方様の仇、必ずや討ってみせます。
私の炎は、絶対に消えることは無い。
愛の炎を、復讐の炎に変えて、私が勇者を倒します。
人間は哀しく辛い時、涙が出ると言います。
涙というものを流すことが出来ればこの感情も整理できるのでしょうか。
スピード・ホーク様、
愛しております。
それはこの闇の空が、晴れようとも..…。
きっとあなたが
私に翼を託していただいていると信じて。

あなたの想いも。  ボルケーノ・ホークより

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フレイムマウンテン山頂 第6の砦 にて。

ボルケーノ・クイーンもといボルケーノ・ホークの亡き骸が横たわっていた。

「いや〜やっぱ水属性の技使ったら余裕だったなw」

手を仰ぎながら、

「てか暑w さっさといくべw」

勇者一行は第7の砦がある、ブリザードキャッスルを目指すのであった。

「おい、いくぞスピード・ホーク」

スピード・ホークは冷たい岩となった彼女を背中越しに感じながら
「すまない、小生…人間との友情に目覚めたのだ」

 終

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