暴走列車の犠牲者たち
ずっと価値が下がり続けているのにも関わらず
気位だけが高い心のスタグフレーション国家よ
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この列車は遠い昔は世界に名を知られていたと
乗り合わせている人々は遠い過去の栄光だけを
心の拠り所として他の国の路線を見下している
今はもう誰にも乗りたいと思われていないのに
嘘や数字の操作をして客車の化粧板を直しても
剥がすと裏の骨組みはずっと前から腐っていた
斜陽と言われないために必死に太陽を追いかけ
走り続けるために多くの人の夢や希望や財産が
炎に放り込まれ燃料として使われ始めたけれど
さらに長く走るために少しでも軽くすべきだと
役に立たないと判断された者たちが呼び出され
最後尾の車両に詰め込まれた瞬間切り離された
このままではいつか運転が止まってしまうから
列車のためには誰かの犠牲が必要だという大義
動かすために火室に身を投げろとの指令が来る
その流れに歯向かったり嘘を暴こうとする者は
後ろ手に縛られ窓から次々と捨てられていった
そんな野蛮な思考も正当化されていく暴走列車
生産性のない存在に生産性を持たせてやろうと
無理に走る列車の炉に多くの命が投げ込まれた
人が燃える臭いが黒い煙となり周囲を覆っても
心を捨て何の感情も持たない運転士は知らぬ顔
ついに金色に輝く世界へ着いたと思ったけれど
そこはひとつの命も存在しない人骨砂漠だった
... ... ... ...
途中で運転士は破綻した列車を乗り捨てていき
何もなかったように別の豪華列車に身を移した