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言葉のアパルトマン 2023-06

・砕けるほどに歯を食いしばって必死に生きてきた、そんな人の顔を見て醜悪だと笑い罵る者

・ゆっくりと琥珀ができるようには待ってくれない今のこの世界

・まっすぐに空に伸びるマストが、揺れる水面では蛇のようにうねっている。どこを見るかで感じ方がまるで違う

・人の欠点を探して餌にする、ネットの海でしか生きられない貧弱で醜悪な生物

・死んで砂になって波打ち際で遊ぶあなたに近づきたい。足の指の間にとどまりたい

・傘がきかない。下から上に雨が降るようなこの時代では、今までの考えで作られたものが通用しない事がある

・AIを生むために、人間が生まれたのではないか。

・拐かす、手で刀を持って口の下に当てている字

・衝撃が続く液状化した世界では、軽薄なものが浮上してしまい、そればかり目についてしまう。どっしりと重たい物は見えづらい下にある事を覚えておこう

・本や音楽、そして言葉。時を超える通信装置。遠い星の光が時間をかけてここまで届くように。はるか昔に生きていた人たちの声が聴こえてくる

・自分の心の中の深い茂みを分け入り、やっと見えてくる暗い建物。戸を叩いても、名前を呼んでも、窓に小石を投げても、何も返ってこない。私の心の中なのにどうする事もできない私。自分に遠ざけられた自分、自分を遠ざけた自分、それこそがこの世界の中で本当のひとりぼっちではないだろうか

・私が私の心の秩序を乱している。不安になるのが怖くて先回りして考えてしまい、さらに不安になる

・雨だれのようなつたない言葉が、いつか世界を穿つ日

・窓から差し込む光が斜めに滑っていく。あれが刃なら目の前のロングシートに座っている人たちはみな即死だ、と想像する穏やかな各駅停車

・あの頃は良かったという古びた箱は時間が経つほど重くなる。それを後生大事にいつまでも持っていては前に進めない、遠くまで行けない。いつか手放さなくては


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