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レシピ通りに料理しない母は、子どもに決めさせてはいけないというアドバイスにばーか!と中指を立てた

私はレシピ通り料理しない。
レシピは見るが、作っているうちにいろいろ思いつき、調味料を足したり減らしたり。さらに、材料が足りないまま、または、材料を追加して作ることもある。
独自のアレンジをきかせて作るので、『正解』がわからないまま、自分の料理になることが多々ある。

10歳から台所に立ち40年以上になる。
女友達の結婚ラッシュが始まった20代後半で、すでに台所歴10年を超えていた。
結婚した彼女らが
「料理ができない」
「晩ごはんつくるのに3時間かかった」
と話すのを聞き、
「歯磨きできるなら、料理もできるやろ」
「え?なんでおかず2品と味噌汁で3時間かかるん?」
と言うたらムッとされたことが多々あった。

なんで出来んのか、それがわからん。

そう思っていた。

彼女たちからかなり遅れて、私は30歳を越えて結婚出産をした。
料理は全く問題なくこなせたが、子育ては違った。

息子がお腹の中にいる時も、お腹から出て、産院を出て、いよいよ私と息子父(夫)で育てねばとなった時も、

何を足して何を引いたらええん?
これはなくても大丈夫なん?
そもそもどうしたら正解なん?

と、何をどうしたらええのやら、全くわからなかった。

寝るか泣くか乳を飲むか排泄するかの息子に聞いても、わからない。
私と同じく、全くわからない息子父(元夫)と本を読み、ネットで検索をした。


「ますみちゃんがラクな方にしとき。そやないと続かんで」


様子を見にきてくれた義理姉(兄の妻)が、布おむつを見てこう言った。

「大丈夫。子どもは結構丈夫やし、いろいろありながらも育つもんや」

既に5歳男子2歳女子を育てる先輩の言葉は、私が頭に入れた知識を全て上書きした。義理姉のこの言葉は、子育てを肩書きに入れて、迷える新米両親にアドバイスするのが仕事の人の言葉より、どんな育児書より、パワーがあった。

あの日のパワーワードを時々取り出しながら、我が家の子育ては続いた。息子は私たちと同じものを食べ、会話できるようになった。おむつも外れた。だが、新たな『わからないこと』がどんどん出てくる。母レベル超初級な私は、迷うと図書館や書店の『育児コーナー』へふらふらと行っていた。

怒らないお母さん

怒り疲れたお母さんが、一度は出会う育児書だ。
ある時本屋で出会った私は、手に取り開き、目次を見た。

いや、無理無理。
私のメンタルがもたん。

すぐにその本をもとの場所に戻した。

私は、しっかりがっつり、怒るお母さんの道を選んだ。

自然派育児

タイトルにこの言葉がつく本は、息子を産んだ20年前、なかなか人気だった。
布おむつは早々と諦めたが、他は「できるだけ自然に」と諦めきれていなかった。
これは目次開いて購入して、読んだ記憶がある。
だが、それから20年近く、実践した記憶がない。

『自然』もこだわりすぎると、『不自然』になると息子を育てていたら気がついた。
外出先でファストフードを食べ、戦闘ヒーローに夢中になり、アンパンマンチョコをほぼ毎日食べるのが、息子の自然であった。

そして、どんなに「身体と心に良い」と言われることでも、ラクな方でないと続かないからだった。パワーワードが勝った。

子どもに何もかも決めさせてはいけない。

息子父と離婚し、3年ほど経った頃。息子は小学生になっていた。
携帯で検索していた時、画面にこの言葉が出てきた。noteの大見出しのようなポイント大太字に見えた。

ドキッとした。
なんだかやましい気持ちになった。
かなり記憶が怪しいが、

子どもはまだ判断力がないのだから、何もかも自分で決めさせてはいけない。
「自分で決めたんだから」と責任を問うのもよろしくない。

という内容だったと思う。

怒りすぎや、ファストフード、アンパンマンチョコレベルではないくらい、

やってもうてるわ

という気持ちになった。

私と元夫が離婚すること。離婚したら私が息子と住むこと。
それは息子の意に反して私が決めたが、息子に関することで息子が決める余地がある(と私が判断した)ことは、全て息子に

どうする?
どうしたい?

と決めさせてきた。
始めること、止めること。
それも「自分で決めな」と言ってきた。

もうちょっと、私が決めた方がよかったんかなあ。
レール敷いてあげた方がよかったんかなあ。
ちょっとしんどいこと、させてしもたんやろか。

だが2秒で私はその思いと画面を消した。

うちら親子のこと知らんくせに、何言うとんねん。
そんなん言われる筋合いないわ。

戦闘モード強めで生きていた私は、
専門家の正しきアドバイスであろうその一文に悪態をつき、
携帯を閉じた。

私は料理だけでなく、子育ても独自のアレンジをきかすことにした。

子育てについて、本を見ることも、検索することもなくなった。


今日息子は、スーツを着て成人式に参加した。
ラーメン食べ歩き大好きで、
スマホとパソコンでアニメと漫画を見まくり、
大学では友達はできていないが、授業は楽しんでいて、
本をつくる仕事に興味を持ち始めている。

育児書や専門家のアドバイス通りには育てなかったが、
義理姉のパワーワード通り、
いろいろありながらも育ち、
無事に二十歳を迎えた。

息子は、
好きなことを見つけて、
自分で進路を決めて、
そこに進むため
自分の頭で考えて、行動する人間になった。

あの日見た、

怒らないお母さんに、

自然派育児に、

子どもに何もかも決めさせてはいけない

という言葉を思い出した。

心の中で、「ばーか!」と言って中指立てた。

私の子育ては終わった。



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わたなべ ますみ
美味しいはしあわせ「うまうまごはん研究家」わたなべますみです。毎日食べても食べ飽きないおばんざい、おかんのごはん、季節の野菜をつかったごはん、そしてスパイスを使ったカレーやインド料理を日々作りつつ、さらなるうまうまを目指しております。