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鱒子 哉
2019年7月16日 21:17
昼過ぎの目覚めに、ぼくはうんざりする。もっと遅くたってよかったのに、と。精いっぱい光を取り込んだ部屋で、ひとつ大きな欠伸をした。今日はやろうと思っていたことがある。それは手紙を書くことだった。二通のうちひとつはもうすでに――眠れなかった明け方をつかって――書き上げていた。だからあともうひとつだった。こっちは初めて出す相手だった。親交はずっと前からあったけれど、会ったのは数ヶ月ぶりな上にま
2019年7月13日 01:02
現実という言葉は、基本的に夢や理想の対として用いられるから、暗いイメージを帯びる。「もうすこしな、現実を見るというかな、」ぼくは愕然する。現実は見るものではなくてただ在るものだと考えていたから。そこにはぼくがいる現実と両親の見る現実に差異があったのだ。それはとても悲しいこと。ぼくが小説家を志していることが察されていることは、別にもうよかった。むしろ自分から言わなければいけないのよりはずっ
2019年7月10日 04:31
明日なんてなくなってしまえばいいのに。ぼくたちは強制的に朝を迎えさせられる。それは祈りでも叫びでもなく、ただ自然の事象として。慣れてしまうということは、有り難さを見失うということ。それがおそろしくておぞましくて、また眠れない夜を明かす。無数にあるなかでぼくの生活なんて無為に等しいだろう。それどころか人間の営みなんて。矮小さではなくて無限を感じるから、ぼくは戦慄する。たかだか八十年だか百年だかを