いろいろな職種・立場の人に読んでほしい『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』 #ここアジャ
タイトルだけを見ると、「システム開発の現場の本かな?」と思ってしまいますが、これは「より良い組織を作るためのコミュニケーション」の本です。そして、IT業界にいる人が抱える悩みを解決してくれる本だと感じました。こういう視点の本はなかったな、と感じたポイントを紹介します。
IT業界にいると誰もが感じる不満
IT業界と言っても、システム開発やインフラ、ハードウェア、デザインなど幅広い職種がある業界です。システム開発を1つ取ってみても、SIerとWeb業界では全く雰囲気が異なります。
そんな中、この本では「アジャイルな組織のつくり方」というサブタイトルがあるように、組織をどう変えていくか、について書かれています。
IT業界で働いていると、仕事に対する不満よりも、組織に対する不満を持つ人は少なくありません。
・古い体制の会社で新しいことに取り組みたいけれど、上司や周囲のメンバーをどう変えていけばいいのかわからない。
・効率よく仕事をしたいけど、組織が大きすぎて自分には変えられない
どんな会社でも新しいことを始めるときは抵抗する人がいます。しかし、変えていかないと組織はよくなりません。
組織を変えるために必要なこと
難しいのは「組織」というのはすべて異なっていることです。ある会社で通用した方法が他の会社で通用するとは限りません。
組織論についての本はいくつもありますが、「その通りに動いてくれるなら楽だよな」「うちの会社はそんなに甘くない」と感じることも少なくありません。
この本では、ある会社での出来事が小説のようにストーリーで紹介されています。「あぁ、こんな現場ありそうだな」と感じた後、その対応案を「現場での実践ポイント」という形で整理されています。
そして、どうやって周囲を共感させ、巻き込みながら、時には納得させながら組織を変えていくのか、そのヒントが詰まった本です。
先の展開がある程度予想できてしまう部分もありますが、それはこの本が「リアル」だからなのかもしれません。
「そういえば自分にもこんなことを感じたことがあったな」「あの時こうすれば良かったのか」と感じられる、その身近さがこの本の特徴でしょう。
読み終わった後には、「ウォーターフォール市、アジャイル町」というタイトル、そして本書の帯にもある「現実的で幸せな共存のさせ方」という言葉が腹落ちする、納得感のある本です。
「今の組織に不満がある」「どうやって変えていけば良いのかわからない」「組織が大きすぎて自分の力ではできない」と思う人でも、小さな個人の力でもこうやってコミュニケーションを進めていけばできそうだ、組織が成長するとはこういうことなのか、と感じられると思います。
IT業界にいる人なら、手にとって欲しい一冊です。