レジェンドの復活に見るリーダーの役割
キャプテン、遂に実戦復帰。
11月14日(土)の広島ドラゴンフライズ戦、ブレックスファンにとって突然のサプライズがあった。
約1年間、怪我のため実戦から離れていたキャプテン・田臥勇太選手が復帰を果たしたのだ。
「そろそろ出るか…?」という期待、雰囲気はややあったものの、どうせ復帰するならバイウィーク後のホームゲームでは、という勝手な思い込みがあり、意外にあっさりとコートに立ったので若干拍子抜けした、というのが正直な感想だった。
けれども、選手交代でコートインした瞬間の会場のどよめき、拍手は、アウェー会場であっても、コロナ禍において制限のある応援の中でも、明らかにひと際大きなものだった。
そして、その存在感をより強く感じたのは、コートに立ってからだった。
特に第2戦。前日の敗戦を経てディフェンスを修正してきた広島にダブルスコアの点差をつけられていたビハインドの場面、田臥選手がコートに立ってボールを持った瞬間、雰囲気が変わったような気がした。実際、田臥選手のコートインを境にゲームの流れが変わり、ブレックスは本来のリズムを取り戻して逆転勝利を収めることができた。
ポイントガードの仕事はスタッツには表れにくい。
2試合とも出場時間は短かったし、正直に言って、全盛期のスピード、テクニックに比べると、やはりレジェンドも年寄る波には勝てないのかな…と感じてしまう場面もあった。
だけど、シュートやパスといった目に見えるプレー以外に、田臥選手にしかできないことがある。
それは、試合の流れを読み、周りの力を活かし、チームの雰囲気を変えていくこと。これは誰にでもできることではなく、長年の経験と、日々の練習などの中で培われてきたチームメンバーひとりひとりとの信頼関係が必要なので、一朝一夕にできることではない。
田臥自身はシュートを放っておらず、アシストもなし。それでも田臥が入っただけでチームは本来の姿を取り戻した。
と、バスケットカウントの記事にもあるように、「この人がいれば大丈夫」と思える人がいることは強い。
もちろん、安定したボール運び、シューターやインサイドへの的確なアシスト、ヘッドコーチの意図を理解した上でのゲームコントロールなど、具体的なスキルも必要。でも、司令塔であるポイントガードにはそれと同じかそれ以上に、「存在感」「安心感」のようなものが求められているのかもしれない。
個人のスタッツに残らなかったとしても、周りの力を活かし、チームの雰囲気を作り上げ、ゲームの流れを変える、それがポイントガードの大事な役割のひとつなんだと、この試合を見て改めて感じた。
理想のリーダー像も、同じかもしれない。
そして、これは仕事の場面でも同じ。
「あの人、何やってるかよく分からないけど、いるだけでチームの雰囲気が良くなるよね」
「何か迷うことがあったら、とりあえずあの人に相談してみるといいよ」
こんな風に言われる人ってたまにいるよね。
こういう人って何もしてないわけではなくて、日々色んな人とコミュニケーションを取ったり、元気がなさそうな人がいれば声をかけてみたり、困っている人がいたら相談に乗ったり力を貸したり、必要な情報を必要な人に共有したり、見えない所で色んな動きをしているんだと思う。
リーダーの役割って、メンバーに具体的なタスクを振ったり、スケジュールを管理したり、プロジェクトを進行させるうえで必要な仕事が色々あると思うけど、いちばん大事なのは、プロジェクトの進行を円滑にすること。
プロジェクトを円滑に回す上で大事なことって、具体的なスキルというよりは、見えない仕事が多いんじゃないかなぁ。
この試合での田臥選手を見ながらそんなことを思った。
※画像は公式Facebookより拝借しました。