[Logos Sampling Series] Chapter2."十八分の一の人生"
都市と農村の分業がある。
地方と地方との間にも分業がある。
国と国との間にも分業がある。
分業は生産力を増加したが、分業は人生を留針の十八分の一に追い込んだ。
一人で働いては一日に、三本か五本しか造ることの出来ぬ留針を、十八の部門に分けて製造すれば、一日数千本の割合で生産することが出来る。
針の頭を附ける者は、終生、針の頭を天地としなければならぬ。
針の先を尖らす者は、此広い、美くしい世界に背を向けて、五十年の間、一心不乱に針の先ばかりを諦視て居なければならぬ。
分業の結果は如何。
農業と工業の衝突である。
地方と地方との衝突である。
国と国との衝突である。
黄金色の垂穂が露に濡れて居た沃土が、やがて煤煙と悪臭とに包まれるのである。
(山川均「農村と革命」より)