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小説は一人称がおすすめ?三人称は難しい?その違いと書き方を解説!

小説は一人称と三人称どっちが良いのか?

これから小説を書こうと考えている方が悩むことの多くに、「語り部の視点をどうするか」ということがあります。

つまり「わたし」「あたし」「俺」「ぼく」という自分目線で進んでいく一人称視点で小説を進めるのか、それとも第三者の目線で、淡々とストーリーを書き進める三人称視点にするのか、ということです。

一体どちらがオススメなのでしょうか。

どちらの方法にもメリット・デメリットがあるので、それを知った上で書き進めなければ、途中で書きにくくなる上、読者も読みにくいという手詰まりを起こすことがあります。

小説を書き始める前に、それぞれの特徴をしっかり押さえた上で、どちらの視点で書くかを適切に判断して頂ければ幸いです。


一人称と三人称どっちがおすすめ?その違いと其々のメリット・デメリットは?

個人的には一人称がおすすめです。(後述します)

とはいえ、単純に得手不得手で選んでしまって差し支えありません。

苦手な手法で書くとやはり文章にも違和感が出てきますし、スムーズに筆が進まないと言うことも起こり得ます。

従って基本的には得意な手法を採用する方が良いです。

ちなみに一人称視点と三人称視点の違いは以下の通りです。

メリット・デメリットの観点から判断する場合、下記に要約を記載したので参考にしてください。

■一人称のメリット:
・語り部の考えや見聞きしたものをそのまま書くことが出来る
・語り部の感情をダイレクトに伝える効果
・読者が感情移入しやすい
・著者が執筆しやすく、また視点変更がないため文章の混乱が起きない

■一人称のデメリット
・語り部以外の登場人物の心理描写が書けない
・語り手が知り得ない情報や心理描写を書けない
・語り手と同じレベルの文章しか書けない
・客観的な文章を書き辛い(物事を語り手の主観で捉えなければならない

■三人称のメリット:
・第三者の立場で登場人物の考えや見聞きしたものを書くことが出来る
・登場人物の行動や思考を客観的に伝える効果
・語り部以外の登場人物の心理描写を書くことも可能
・語り手を切り替え、視点を変更することで、主人公が知り得ない情報を書くことが出来る

■三人称のデメリット
・一人称視点よりも読者と登場人物の距離が遠くなる
・読者が感情移入し辛い
・視点変更によって読者が混乱する可能性がある。視点の一貫性を保つのが難しい。


一人称と三人称は混在させるべき?混ぜるメリットとデメリットは?

アマチュア小説家の中には「一人称と三人称が混在させた小説」を書いている人もいます。

実際のところ、一人称と三人称が混ざるのは良いのでしょうか。

結論から言うと、一人称と三人称は混ぜるべきではありません。

一人称の強みは「地の文に感情を込められる」ため、読み手が感情移入しやすいことですが、三人称を混ぜてしまうことで感情移入がリセットされてしまい、一人称の強みを活かすことが出来なくなります。

また、単純に読み手の立場からして読みにくい小説になってしまいます。(書いている方は意外と気が付き辛いものです)

従って、地の文の人称は統一するようにしましょう。

ただし、どうしても視点変更をしたい場合は、コツとして、話の区切りごとに語り部を変えるようにしましょう。

ただしこの場合でも、あまりころころと語り部を変えないように意識し、また、語り部ごとの人称は単視点に統一させるようにしましょう。

同じ語り部にも関わらず視点変更が起きると読みにくいことこの上ありません。

特に登場人物の心情、心の声の吐露、独白などの際に人称を変えるミスを犯してしまう人が多いので、注意が必要です。

なお、ここまで読んで「流石にそんな簡単なレベルのミスをする訳ない、一人称と三人称を混ぜるわけがない」と思うかもしれませんが、初心者小説家の方は意外とこのようなミスを犯してしまいます。

執筆しているうちに、最初の地の文の人称を忘れてしまい、初めは「俺が」だったところ、気付いたら「彼が」になっていた、というのは往往にしてあるものです。(「小説家になろう」「カクヨム」「エブリスタ」のようなネット小説では時折見かけます。)

ちなみに、このようなミスは小説を読み直せば間違いなく気付くはずですから、このようなミスがある小説家の原稿を受け取った場合、出版社は「この小説家は自分の原稿すら読み直さないのか・・・」と思い、一緒に仕事をする気を無くしてしまいます。注意しましょう。


一人称の書き方で注意することは何?

一人称にて小説を書くことを決めた場合、まずはその書き方を学んでおきましょう。

一般的には主人公の一人称において、他の登場人物を周囲の人と認識し、目の前に起きた出来事を本人視点から説明される形でストーリーが進んでいきます。

この一人称視点で書く方法で、一番大きな特徴は、主人公の知らない場所で起きた知らない出来事は、その段階では描写されないということです。

人づてに聞いた話により、いつどこで誰が言った、または何が起きた、と情報が主人公の耳に入らなければ、そのストーリーに絡む重要な要素であっても、なかなか作中には表現されません。

これは読者に情報が伝わらないデメリットともいえますが、後半にその情報が主人公のもとに一挙に集まる展開を書きたいとすれば、面白みをアップするためにメリットとして使うことができます。

一人称で書いてある小説は、読者目線ともいえます。

つまり読者が知りたいことは小出しにされているので、ミステリー要素を含む小説などでは、一緒に謎を解明していくワクワク感を加味して盛り上げる役割を果たします。

そして等身大の主人公に感情移入をしている読者がいるとすれば、主人公サイドに立ち、その目線で読むことで、一緒に失敗や成功を繰り返したりしつつ、同様の成長を感じる楽しみを得ることも可能になります。

こういった小説をうまく書こうとするためには、その「一人称」で語る登場人物をしっかり設定し、その年齢や性別、属性を矛盾なく表現しなければなりません。

一般的な女子中学生や女子高生の一人称に今時「わたくし」という表現をする人はほとんどいないと思いますが、これが箱入りのお嬢様を書くのであれば、その一人称を使うのは、キャラ設定をするために、重要なファクターとなります。

一人称をまずどうするか、「わたし」「私」「あたし」「ぼく」「僕」「俺」「俺様」なのか、これだけでも、話を進めていく主人公の立ち位置や属性が変わってきますね。

■余談:
おすすめの一人称は現実世界で使っても違和感がないモノです。つまり、「俺」「私」などがそれにあたります。
一人称を特徴的にすることで自分の色を出そうとする著者もいますが(「俺様」「ぼく」「あたい」など)、それを痛々しいと感じる読者も多いことは念頭に置いておいてください。

読者からの印象も違います。

一人称視点で書く場合、周囲の人物に対する感情や印象も描写を外せないため、主人公がどの人物をどういう感覚で見ているか、つまり単純な好き嫌いから損得において避けたいと思っている事情など、感情を絡めて個人目線で説明することとなります。

読者はそれに対して、やはり個人的感情で登場人物を判断しがちになるため、どこかで客観性を残して、主人公や他登場人物に嫌悪感や必要以上の肩入れ感覚がないようにしておくことが必要です。

一人称視点で話を進めることで、「叙述トリック」という、読者をひっかける方法を使うこともできます。

たとえば、「わたし」で進めていく主人公の性別や年齢を曖昧にして、ストーリーを進めていくことで、実は男性(逆に女性)だった、実は既に死んでいた、などという展開をラストにもってくるのが、叙述トリックです。

これは一人称視点で進めるストーリーで、より面白く活かされます。

一人称視点では主人公の知らないことを読者も知り得ないという側面があるものの、逆に主人公しか知らないことを最後まで隠しておくことができるという点も活用できるので、どんな小説を書きたいかにより「今回は一人称で書いてみよう」と選ぶのも、作品世界を広げる方法のひとつになります。


三人称はなぜ難しいのか?

三人称視点は、従来から多く使われてきた、第三者の視点によりすべての登場人物の行動を一巡して表現する方法です。

ミステリーやホラーの謎部分は隠しておくことができますが、登場人物たちが直面する場面においての描写は必要なので、主人公がその場にいないときに起きた出来事や、知らない人物が呟いた言葉なども、読者が知ることが出来ます。

客観的にストーリーを読み解くことが可能で、登場人物に対する好悪の感情も、そこに表現されている言動から読者が判断します。

第三者視点で書くときに、年齢の低い作者にとって難関となるのは、自分がまだ経験したことがない職業であったり、ずっと年上であったりする登場人物を動かそうとするときです。

若い作者が、高齢の登場人物の心理描写や行動を第三者視点で書くときに、リアリティに欠けるケースがみられます。

また、そうでなくとも、作者も一人の人間なので、色々な人間の立場をころころ移り変えながら文章を書き続けるのはなかなか難しいものです。

小説を書くためには多くの人物をバリエーション豊かに書き表す練習が必要になりますが、若い作者が一人称を好んで執筆するのは、この意味では正解かもしれません。

年長者は年下目線で見上げて描写すれば、大きな失敗はないので、こういった人物の描写に自信がなければ、個人的には一人称視点を使う方をおすすめします。

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