
「それ、必要?」議論を深める愛すべき「前提クラッシャー」の取扱説明書
「え、そもそもそれって本当に必要?」
会議や議論の最中に、流れをズバッと止めるこんな問いかけを、あなたは投げかけたことがあるでしょうか? あるいは、誰かにやられて「おいおい、いまさら何言ってんの?」と空気が凍った経験は?
今回の白米FMは、以前ゲストとして出演してくれた“そうまさん”からのお便りをきっかけに、前提を破壊する人々――いわゆる“前提クラッシャー”について考えてみました。
なぜ、当たり前のように進んでいることに「ちょっと待って」と水を差し、そもそも論で問い直すのか? それで空気感が微妙になるかもしれないのに、なぜ彼らは(私たちは?)その“壊す”行為を楽しんでしまうのか?
ここでは、前提を破壊する行為が生むプラス面やリスク、そして“上手な使いどころ”について、実例を交えながら掘り下げてみましょう。
※この記事は、日米のIT業界で働く友人同士で対話したポッドキャストの内容を元に文章化しています。実際の音声へのリンクは最後に掲載しておきます。
そもそも「前提を破壊する」ってどういうこと?
一度決まった話の流れ(前提)を疑う
会話や会議などで、暗黙の了解としてみんなが「こういうゴールで進めましょう」と共有しているとき、そこに「本当にそれ必要?」とツッコミを入れるのが“前提破壊”。
たとえば、会社のプロジェクトで「Aプランをやるぞ!」が決まっているのに、「そもそもAプランで成果出るんでしたっけ?」と疑問を投げかける
いま進行中の企画自体に「これってやらなくてもよくない?」と言ってしまう
こうなると、周囲は「いやいや、もう走り出してるのに…」と動揺してしまうかもしれません。まさに空気を読まずにストップをかける行為ですね。
なぜ人は前提破壊に惹かれる?── 可能性が広がる楽しさ
新しい可能性が生まれる
前提が固まると、ゴールや手段も固定されがち。だけど、前提自体を壊せば「もっといいやり方があるかも」と別のルートを発見できるかもしれない。
「A方針でいく」と決めていたところを壊して、「B方針も試してみたら?」となる→新しい結果が得られる可能性
“一旦ストップして根本から見直す”ことで、大きなリスク回避や大発見につながるケースもある
探索や未知の発見が好き
前提を壊す人は、たいてい「そもそも論が楽しい」タイプ。自分が腑に落ちないことを放置できない性格の人もいるし、単純に「もっと面白い展開を見たい」という好奇心から“壊し”にかかる人もいます。
「目的地までまっすぐ行くのもいいけど、寄り道して何か面白いもの見つけたい」的なハイキングマインドを持っている
これが思考やコミュニケーションのトレーニングにもなり、快感になっている場合もある
前提を壊すと、なぜ周りは“心地よさ”を失うのか?
暗黙の合意が崩れる不安
前提破壊は、言い換えれば「せっかく固めた方向性を揺らがせる」こと。周囲は「ようやくまとまったのに、また振り出しか…」と混乱したり、不安を感じたり。
「このまま走ればよかったのに…」
「時間も予算も限られてるんだから、いまさら疑うのやめてよ」
自分のアイデンティティを揺さぶられる
前提には、その人なりの“こだわり”や“安心感”が埋まっていることも多い。そこを否定されると、「自分が信じてきたものを否定された!」とショックを受ける。
会社の方針や文化を“疑われる”と、社員のモチベーションも落ちる
「私の選択が間違ってた…?」と自信をなくす人も
社会人生活では敬遠されがち
前提を崩すと、「大再考」が起きる可能性がある一方、短期的にはプロジェクトが停滞し、衝突も起こりやすい。スピード重視の現場では嫌われることもあるわけです。
それでも破壊してしまう理由と“使いどころ”
納得しないと動けない性格
典型として、自閉症スペクトラム(ASD)っぽい「納得最優先」傾向が指摘される場合があります。自分が腑に落ちないと先に進めないから、つい「何のため?」と止めてしまう。
リスク回避 or 探索の喜び
リスク回避: 前提を疑うことで、大失敗を防ぎたい
探索の喜び: 「もしかしたら別ルートのほうがリターンが大きいかも」と思うワクワク感
“山登り型”か“ハイキング型”か
山登り型(とにかく目標地点があって一直線に進む): 前提破壊は邪魔になりやすい
ハイキング型(寄り道OK、面白いルートが見つかればそちらへ): 前提破壊が大歓迎されやすい
結局、「目指すゴールがどれぐらい合意されているか」や「その場の空気が柔軟かどうか」によって、前提破壊が歓迎されるか排除されるかが変わるんですよね。
前提破壊への向き合い方 ── “慎重さ”と“柔軟さ”の間
破壊にはエネルギーがいる
前提を壊すのは、周囲との軋轢を生むリスクも高い。必ずしもいつも有効ではないので、やりすぎると「面倒くさい人」扱いされる可能性大。
自分の“納得感”と周囲の“速度感”を調整する
もしあなたが「納得しないと進めない」タイプなら、“破壊衝動”を少し制御する工夫も必要かもしれません。無造作に「ちょっと待った!」をかけるのでなく、「今のタイミングなら大丈夫か?」と周りを見極めて伝えるなど。
楽しめる場で試す
前提破壊は全部が全部悪いわけじゃなく、ディスカッションやブレストが主目的の場ならむしろ歓迎される場合が多いでしょう。「ここなら持ち味発揮していいや」と思える空気があるかどうかが大事。判断力のある“そもそも論”は、イノベーションのきっかけにもなるのです。
まとめ
前提破壊 = 当たり前を疑う行為
会議や議論の流れを止め、「そもそも何のため?」と問い直す
可能性を広げるメリット
別ルートや未知のアイデアに行き着く
本当に腑に落ちてから進めるので、後々の納得度が高まる
短期的には周囲が不快に感じるリスクも
せっかく合意していたものが壊れる
「面倒だし時間がない」という現場では煙たがられやすい
タイミングと場選びが重要
“山登り型”の最中にやると嫌われる
“ハイキング型”の探求の場なら大歓迎される
なぜ人はそれを楽しむのか?
リスク回避や納得のため
単純に「そもそも論が面白い」から
新しい可能性を模索するのが快感だから
「なぜ人は前提を破壊すら楽しむのか?」
結局、私たちの中には「もっと面白い道があるんじゃないか」「本当にこれでいいのか?」という欲求が眠っていて、思わず破壊衝動に駆られてしまうんですよね。もちろん、場の空気をぶち壊してしまうリスクは大きい。でもそれを分かったうえで、新しい景色を見たい・より良い納得感を得たいと思うからこそ、“そもそも論”を仕掛けてしまう――そんな心理があるのでしょう。
この“前提クラッシャー”の才能(?)は、場やタイミングを選べば、イノベーションの源泉となります。逆にゴール直前のプロジェクトでやると周囲から総スカンを食らうかも。だからこそ、「今は破壊してもOK?」という見極めが大切。
あなたはどうでしょう? もし前提破壊をする側なら、“最適な場”を見極める工夫をすると周囲との衝突が減るかもしれません。反対に、「破壊されるのが苦手」という人は、たまには“そもそも論”を受け入れてみると意外な発見があるかも――お互いがうまくバランスを取れれば、前提破壊はただの妨害ではなく、“未知の扉”を開く鍵にもなるのです。
こちらの記事の、元となった対話音声はこちら↓
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