裁定取引から日経平均の上昇、下落トレンドを読んで取引のパフォーマンスを上げる方法
目次
このnoteでは日本株の株式取引を行う人に向けて、日経平均の上昇トレンドあるいは下降トレンドを読む方法を解説します。
今回、紹介する方法は「裁定取引」と呼ばれる特殊な取引の数字を利用してトレンドを見極めます。
直近2年間で、裁定取引からみた上昇あるいは下降トレンドのシグナルは3回発生しており、そのうち3回とも日経平均が2000円以上大きく変動しています。
この方法を使えば、上昇or下降のトレンドを読んで、株式トレードを有利に進めていくことができるはずです。
ただし、シグナルの発生する頻度は低いため、デイトレードなど高頻度で取引をする方には向かないかもしれません。
※note公開初日で620部突破!大きな反響をいただいてます。嬉しいかぎりです。
投資銀行勤務 たりたり社長さん
もみあげさん
レイザーさん
Ichiさん
また、1ヶ月で最もスキされた記事のひとつに選出されました!大好評なようで筆者として、とてもうれしいです。
◆この記事をおススメする人
・日本株の売買をする
・中長期的な取引を好む
・株取引のパフォーマンスを上げたい!
・株の買いや売りを行うタイミングがよくわからない
・裁定取引について詳しく知りたい
◆この記事をススめない人
・取引の頻度が高い(頻繁に売買する)
・日本株は売買しない
なお、今回のnoteで言う裁定取引は、「日本の現物株式と先物を利用した裁定取引」を指します。
※note購入者様に特典があります:裁定取引についての質問や、分からないことに対してtwitterのDMやメール(shameless.masterk@gmail.com)で回答します!
※noteの内容に満足いかなかった方は返金可能です(note規約による)
それでは本文にどうぞ!
※裁定取引の説明が長いので、この方法を利用したトレンドの読み方、株を売買するタイミングを知りたい方は、「裁定取引から日経平均のトレンドを読む方法」の項目から読むことをおススメします(有料記事部分です)。
※前半の裁定取引から日経平均のトレンドを読む方法の手前までは無料で読むことが出来ます。
●裁定取引の仕組み~どうやって儲けるの?
この章では裁定取引でどのように儲けるのか?を説明します。
通常、現物価格と先物価格には一定の価格差があります。
2018年10月~2020年2月の平均値では、先物のほうが平均して29円安い価格となっています。
通常、株式の先物価格は現物より高くなる(※)のですが日本の場合はそうはなっていません。
※先物のほうが高い理由は、将来の配当や価格上昇(通常は現在よりも未来の株価のほうが高くなるため)を織り込んでいるからです。
下図では現物と先物の価格差をプロットしています(先物から現物を引いたもの、黄色の線が平均値)。
短期的には現物と先物の価格差が平均値より大きく乖離することもありますが、長期的に見れば一定の価格差に収束しています。
この性質を利用して儲けるのが裁定取引です。
以下の図で具体例を見てみましょう。
※以降の説明では現物株式より先物が200円高い状態を基準としています。実際とは異なりますが、説明の簡略化のためです。ご了承ください。
下図では、現物が20,000円、先物が20,200円の場合をスタートとしています。
①現物に対して相対的に先物が高くなった場合(現物株価はそのまま)
②先物に対して相対的に現物が高くなった場合(現物株価はそのまま)
の2パターンを示しています。
①現物に対して相対的に先物が高くなった場合
裁定取引の原則は、「割高なものを売って、割安なものを買う」です。
①のケースでは、割高な先物を売って、割安な現物を買います(中図)。
その後、あるタイミングで本来の価格差に戻ります(右図)。
この時点で、反対売買(売ったものを買い、買ったものを売る)を行います。
つまり、先物を買って、現物を売るのです。
するとあら不思議・・・
自分は何も保有していない状態になり、利益だけが残ります。
次に②のケースを考えてみましょう。
②先物に対して相対的に現物が高くなった場合
もういちど、下に図を示します。
裁定取引の原則は、「割高なものを売って、割安なものを買う」です。
②のケースでは、割高な現物を売って、割安な先物を買います(中図)。
その後、あるタイミングで本来の価格差に戻ったら、反対売買を行います(右図)。
つまり、現物を買って、先物を売るのです。
するとやっぱり、自分は何も保有していない状態になり、利益だけが残ります(分かりにくいですよね?紙などで書いてみて計算してみることをおススメします)。
①、②いずれの場合でも儲けが得られることが分かると思います。
ただしこの例の場合、現物株価が変動していませんから、先物を売ったり買ったりしているだけとも言えます。次の例(より複雑になります)で、「現物や先物株価が変動してもこの取引が成り立つ」ことを説明しますね。
これはスゴイことです。
「本来の価格差に戻る」のであれば、現物株価と先物株価が下がっても、上がっても儲けることが出来る!ということですから。
???なぜそうなるのか、分からない!?って思いましたか。
それではまた、図で説明しましょう。
今度の図は、さきほどの現物に対して先物が高くなった場合(①のケースですね)で、(A)現物と先物の価格が上がったケースと(B)下がったケースを見てみましょう。
少し複雑になりましたね。
通常の状態(左図)から、現物に対して先物が高くなっています(左から2番目)。
ここでセオリー通り「割高なものを売って、割安なものを買い」ます。つまり、割高な先物を売って、割安な現物を買います。
(A)現物と先物の価格が上がったケースを考えてみましょう(右から2番目の上図)。
現物とか先物の株価が1,000円ずつ上がって、価格差は300円のままです。
この価格差はいつまでも続かず、200円に戻ります。
ここで、反対売買(=先物を買って、現物を売ります)します。そうすると・・・利益が100円残ります。
では、(B)現物と先物の価格が下がったケースを考えてみましょう(右から2番目の下図)。
どちらも1,000円ずつ下がったとします。
価格差は300円のままです。
この価格差はいつまでも続かず、200円に戻ります。
ここで、反対売買(=先物を買って、現物を売ります)します。そうすると・・・やはり100円(さきほどと同額)の利益が残るではないですか!
もう分かりましたか?
裁定取引は最初の取引を行ってから反対売買をするまでの間に、どのような価格になっても(つまり株価が上がっても、下がっても)、最終的な「価格差」が目論見通りであれば儲けることができるという魔法の取引なのです。
※ここも分かりにくいので、何度も紙などで計算してみてください。
さて、ここまでで裁定取引のスゴイところの一つ目を説明し終えました。
次に二つ目を説明しましょう。
これまで、「現物と先物は、長期的に見れば一定の価格差に収束します」と言ってきました。
これは「普段」の価格の話です。先物には特別な日があり、その日は現物と先物価格が等しくなります(つまり価格差がゼロになります)。これまでの説明を理解していれば、これを利用することで、ほぼ確実に儲けられることが分かりますよね!?(なぜなら必ずある価格差に戻ることが分かっていればそれを利用して裁定取引を行うことが出来るからです)
それでは、この特別な日について説明します。
先物取引をしたことがある方は分かりますが、先物には期限があります。
先物を買う、あるいは売った場合、期限までに決済します。決済しない場合は、期限日に強制決済されます。
この期限日をSQ日(特別清算指数算出日)、決済されるときの価格をSQ(特別清算指数、Special Quotation)値と呼びます。
SQ値は、SQ算出日の指数(例えば日経225)構成銘柄の寄付価格(※)をもとに計算されます。
※株式市場が開いて最初に付く値段。市場開始前に成行(価格指定なし)で注文すると寄付価格で売買される。
これが何を意味するかわかりますか??
現物株をSQ日の朝に成行で売る、あるいは買えば、現物価格と先物価格が等しくなるのです(価格差がゼロになる)。
だから、SQ日を利用すれば裁定取引で確実に利益を出すことができるのです。
さて、ここまで理解したあなたなら、こんな疑問が浮かぶでしょう。
「確実に儲けることができるなら、自分も裁定取引で儲けられるのでは??」
「確実に儲かる裁定取引業者はズルい!! なぜこんな取引が許されるの?」
以降ではこの疑問に答えていきましょう。
●個人投資家は利用できないの?
個人投資家が裁定取引を行うことは不可能ではありません。
しかし、多額な資金が必要です。また、リターンが少ないことから個人投資家が利用するメリットはほぼないと言えます。
裁定取引は、日経平均と連動するように多数の現物株を同時に(時間差なく)買う、あるいは売る必要があります。
これに必要な資金は数億円と言われています。まぁ、ユニクロの単元株が620万円、任天堂の単元株が499万円(2020/6/18現在)ですから、推して知るべしですよね。
裁定取引で得られるリターンは、せいぜい1%といったところです。また、個人投資家は、大口機関投資家と較べて売買手数料が高いことからさらにリターンが低くなります。
裁定取引は確かにリスクが低いですが、数億円の資金を拘束(最大で数か月)された上、リターンが僅かであれば、個人投資家が裁定取引を行うメリットはないと言っていいでしょう。
なお、大口機関投資家は数千億円規模の裁定取引を行っているので、1%の利益であっても十億円規模の利益を得ることが出来ます。スケールメリットですね。
次に、なぜ機関投資家にこのようなおいしい取引を許しているのか?を説明します。
●なぜ裁定取引が許されるのか?
なぜ裁定取引が許されるのか?それは、市場の調整機構として必要だからです。
先物は市場を安定させるために存在しますが、現物に対して極端に高くなったり、安くなったりしてその役目を果たさない(目的とは逆に不安定になる)懸念を秘めています。
裁定取引が行われることにより、割高なものが売られ、割安なものが買われます。そうすることで、現物価格と先物価格差が極端に乖離することなく、適切な先物価格が維持されます。
また、裁定取引が行わることで市場の流動性が高まります。
裁定取引は、市場の健全な価格形成を維持・調整するという役割を持っているのです。
さて・・・・裁定取引の仕組みの説明長かったですね!
お待たせしました。いよいよ裁定取引から日経平均のトレンドを読む方法の解説です。
この記事が参加している募集
もしサポートいただければ、書籍や取材などに使って、さらに有益な記事発信がんばります!!