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【全文無料/遊戯王OCG】エラッタ復帰を斬る! BEST/WORST決定戦【50,000字】

※ 全文無料でお読みいただけます。


1.はじめに

こんにちは、なごにゃんです。
今回は、「エラッタ復帰カード」についての評論をお送りします。
なんと約50,000字の超長文記事になりますので、お時間のある時にお読みいただくか、目次を活用して少しずつ読み進めていただくことを推奨します。

更生しました。

「エラッタ復帰」とは、遊戯王OCGにおいて、1年に数枚ペースで行われる「禁止カードの下方修正を目的としたテキスト変更、およびその禁止指定の解除」を指す言葉です。
2014年の《ダーク・ダイブ・ボンバー》を皮切りとするこの施策は、執筆開始時点の2024年末で10年目に突入、通算24枚ものカードが生まれ変わっており、月日の流れを実感する次第です。

導入当初は混乱も見られた施策ですが、現在ではおおむね好意的に捉えられている印象で、筆者も以下の点から高く評価しています。

  • 対象となるカードは有名なものが多く、大きな話題性を持つ。場合によっては当時のプレイヤーの復帰のきっかけになることがある。

  • ゲームバランス上の理由で、そのままではまず復帰が望めなかったカードに第二の人生を与えることができる。

  • 「禁止カードリストの肥大化」の直接的な対策となっており、長い目で見れば新規参入のハードル低下・ゲームの延命に貢献している。

とりわけ、"話題性"とエラッタ復帰を切り離すことはできません。

ほんまか!?

2014年末、《混沌帝龍 -終焉の使者-》ら極悪禁止カードの大量釈放については界隈の外まで話題騒然となりました。この時に関しては、「紙のカードゲームにおける大規模エラッタ」そのものからして非常に驚かれた節があります。
(※ デジタル全盛の現代ではあまりピンと来ない話ですが、当時、「性能の下方修正を目的としたテキスト変更(=ナーフ)」禁じ手のように捉えられていました。少なくとも筆者の周りでは、「既に印刷済みのカードはどう扱うのか?」「トラブルになるためやらないだろう」という見方が大勢だった印象です。)

大局的に見て英断と言える施策であり、遊戯王OCGが続く限り今後も対象カードは増え続けるでしょう。
この記事では触れませんが、「次はどのカードが対象になるか?」「このようにエラッタすれば〇〇も復帰できるのではないか?」という議論も活発になされるようになり、リミットレギュレーション改訂における楽しみのひとつとしている人も多いかと思います。

???

……さて、ここまで褒めちぎりましたが、実際には無視できない負の側面もあります。

  • エラッタする必要のないカードまで対象になってしまうことがある。

  • 調整の結果、当初のデザイン意図をまったく果たせなくなり、原型をなくしてしまうケースがある。

  • 過度に弱体化して実用性を失ってしまうケースがある。

言ってしまえば、エラッタの出来・不出来にかなり格差があるのです。
「適切なカードが・ある程度の原型を保ったまま・ほどよい強さで」エラッタされるケースは成功と言えますが、この条件をすべてクリアしているカードは限られます。多くの場合はどれかが欠けていて、及第点とは言えるものの毒にも薬にもならない凡調整に陥りがちです。

また、(少なくとも2025年時点で)エラッタは不可逆であり、禁止カード指定よりも重い措置、いわば存在の抹消となります。
一度エラッタされたカードは、たとえ後から「弱くしすぎたのでは?」「そもそもエラッタしなくてよかったのでは?」と判断されても二度と元の姿に戻ることができません。

???

この事情に鑑みればエラッタ復帰は慎重に行われるべきなのですが、実際には「再録の数合わせ」「禁止リストから追い出したかっただけ」のような投げやりな調整も散見されており、それらには失敗の烙印を押さざるを得ません。
見る影もなくなり、ノーリミットデュエルで使うことすらできなくなったかつての禁止カードに、「これなら思い出のままでいてほしかった」と憐憫の情が湧いた人も少なくないのではないでしょうか。

この記事では、そんな「エラッタ復帰カード」たちに思いを馳せ、それらの「成功・失敗」を論じるとともに、「BESTエラッタ/WORSTエラッタ」の選定を行いたいと思います。
かつてご好評いただいた「ビルドパック最強王・最弱王」にならってS~Dの5段階判定を採用してもよいのですが、今回はシンプルに「成功・及第点・失敗」の3段階判定とし、判定基準は上にもあるように「エラッタの必要があったか・原型を保っているか・実用性があるか」の3つの観点を用いることにします。

【唐突な宣伝】

判定基準の詳細は以下の通りです。

[エラッタの必要があったか?](◯/△/×)
◯ …… エラッタなしでの制限復帰はまず不可能であるもの。
△ …… 当時は必要だったが、後年のインフレにより不要になってしまった、あるいは不要になる可能性があるもの。
× …… 必要性がまったくなかった。

[原型を保っているか?](◯/△/×)
◯ …… 禁止指定の理由となった危険な挙動を除き、元の使い方をおおむね再現できる。
△ …… 面影はあるが、調整の結果もとの使い方の一部または全部が不可能になってしまった。
× …… 原型を完全に失ってしまった。

[実用性はあるか?](◯/△/×)
◯ …… 高い実用性を残しており、当時の環境デッキで採用された、あるいは今でも使われるもの。
△ …… 一線級ではなくなってしまったが、一部のデッキで採用理由が見出せる。
× …… 採用理由がほとんど見出だせない。

それではさっそく、エラッタ復帰カードを1枚ずつ振り返っていきましょう!

2.歴代エラッタ復帰カードを振り返る

2-1.《ダーク・ダイブ・ボンバー》

【エラッタ前のテキスト】
自分フィールド上のモンスター1体をリリースして発動できる。
リリースしたモンスターのレベル×200ポイントダメージを相手ライフに与える。

【エラッタ後のテキスト】
「ダーク・ダイブ・ボンバー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分メインフェイズ1に自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。
リリースしたモンスターのレベル×200ダメージを相手に与える。

<総評>
及第点
です。
記念すべきエラッタ復帰第1号です。
あのDDBが刑期を終えて帰ってきました。どうでもいいですが、わざわざ当時の変な略称にならって「佐々木」呼びしたがる人もいて、経緯を知らない新規参入者が大いに困惑していました。

D(さ)D(さ)B(き)

エラッタ前のこれは「回数制限のない射出カード」であり、現在の価値観ではたとえ1ダメージしか与えられなくてもダメなカードです。少なくとも回数制限を設けるのは必至で、エラッタの必要性が〇であることに疑いの余地はないでしょう。

エクストラに置ける分、こいつらより数段ヤバい

しかし、誤解されがちですが、この無限の砲台としての活躍が禁止指定の理由ではありません。
有限のダメージソースとして使っても変換効率が高すぎたのが何よりの問題であり、「シンクロ召喚の登場でゲームが高速化した」という体感の大部分をこのカードが担っていました。

盛るな

言ってしまえば、攻撃後のモンスターをメインフェイズ2に射出するのは、そのモンスターにレベル×200のバフをかけているようなものです。
自身が特攻するだけでも初期ライフの半分(2600+1400=4000)をえぐり取れますし、隣に適当なシンクロモンスターを添えればあっという間に致死打点です。これ2体でちょうど8000に届くのもキリのよい数字でした。
このパワーは当時の基準を明らかに逸脱しており、DDBは存在するだけで環境のゲームレンジを縮めてしまう異物だったのです。
(※ フィニッシュ手段が飽和している現代の価値観では「何が強いの?」と思ってしまいますが、地道に戦闘を重ねてライフを取るのが当たり前だった時代に、その過程を数ターンすっ飛ばして勝利を手繰り寄せてしまう彼の存在は許されないものでした。)

エラッタにおいてもこの点が慎重に考慮され、メインフェイズ1でしか使用できない縛りが課されたことで実質パンプアップのようには扱えなくなりました。
……ただ、正直なところ、復帰当時のゲームスピードにおいては、1体しか射出できないのならメインフェイズ2で使えても問題はなかったと思われます。
もっとも特徴的だった使い方ができなくなってしまった点は見過ごしたがたく、原型に◯の評価を与えることはできないでしょう。
(※ アニメでは、効果を使えば勝ちと思われるシチュエーションで発動しなかったことから、もともとメインフェイズ2では使えない効果にする想定だったのではという説があります。この点で一概に原型が失われたとも言い難く、△の評価に留めました。)

君カードと顔違わない?

最後に実用性の話ですが、△が妥当でしょう。
さながら「一応バーンにも変換できる2600バニラ」といったところで、現役時代の凶悪性は微塵もない普通のカードに仕上がりました。
復帰直後こそ「シンクロ版《ガガガガンマン》」感覚で【シャドール】に採用されるなど一定の実績を残したものの、それも物珍しさゆえのお試し期間といったところで、時期が過ぎると共に真っ当なエクストラデッキの選択肢からは外れていくという経緯を辿りました。

悪用しかされない

……真っ当な、と断っているのは、真っ当ではない使い方で今でも引っ張り出されることがあるからです。
実はエラッタ後も先攻1ターンキルの危険性は残っており、何らかの方法でレベル40以上のモンスターを作り出して射出することで8000ダメージを叩き出すことが可能です。主に幻獣機モンスターと《ギャラクシー・クィーンズ・ライト》の組み合わせで実現されます。
当初こそ必要なカードが多すぎるネタコンボでしたが、年々ハードルが下がり、《ギャラクシー・クィーンズ・ライト》をサーチできる《銀河光子竜》が登場してからは競技レベルでの検討が可能になっています。

えっ! そんなのサーチできるんですか!

OCGでこそあまり目立ちませんでしたが、《ブレイク・アーマー》が事前規制を食らっていたマスターデュエルでは【超重武者】に搭載されることもあったコンボで、「まさか令和にDDBが再投獄されるのか?」とドキドキしたのは私だけではないはずです。
今のところ、無規制【超重武者】ほどの出力があってようやく検討できるプランのひとつでしかないのですが、将来的に「レベル変動を扱うテーマ」をデザインする際の枷となる感は否めず、元々のレベルを参照するテキストにしておけばよかったというのが本音です。

総じて、エラッタ第1号として、可もなく不可もない及第点の評価を与えます。
当時基準でもやや弱体化させすぎた感があること、そのくせ危険性を除去しきれず後世に禍根を残したことからケチはつきますが、総合的には面影を残しており、アニメ効果への歩み寄りも見られることから、失敗と断じるほどの出来ではありません。もっとひどいカードがこの後たくさん出てきます。
「メインフェイズ2にも使えていいから、元々のレベルを参照するようにしてほしかった」
とは思いますが、2014年当時にそこまでの見通しを要求するのは酷というものでしょう。

2-2.《王家の神殿》

【エラッタ前のテキスト】
このカードのコントローラーは、罠カードをセットしたターンでも発動できる。
また、自分のフィールド上のこのカードと「聖獣セルケト」を墓地へ送る事で、手札・デッキ・融合デッキからモンスターカードを1枚選択し、特殊召喚できる。

【エラッタ後のテキスト】
「王家の神殿」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分は罠カード1枚をセットしたターンに発動できる。
(2):自分フィールドの表側表示の「聖獣セルケト」1体とこのカードを墓地へ送ってこの効果を発動できる。
手札・デッキのモンスター1体または エクストラデッキの融合モンスター1体を特殊召喚する。

<総評>
及第点
です。
「罠カードをセットしたターンでも好きなだけ発動できる」
という、そんなこと許されていいわけがない系のカードです。
全盛期のカードプールでは《無謀な欲張り》《八汰烏の骸》《強欲な瓶》あたりをぶん回すのが主でしたが、今となってはさらにマズいことが起こるのは想像に難くなく、エラッタ必至だったのは間違いないでしょう。

そうかい

……ただこのカード、実は不遇の1枚でもあります。
理由は簡単で、同時期に生まれた《処刑人ーマキュラ》の下位互換とみなされていたからです。2者の効用はほぼ同じで、モンスターと永続魔法ではアクセスのしやすさが段違いなので仕方ありません。実はあの《現世と冥界の逆転》デッキにおいても《マキュラ》の2番手に甘んじており、最盛期には採用すらされないこともありました。
禁止指定の主因は《マキュラ》禁止後の2006年、【デッキ破壊1キル】【ヴィクトリー・ドラゴン】系で活躍したことですが、その役割も上に挙げたような疑似ドローソースがメインといったところで、実はかなり地味な理由で現役引退を宣告されています。

《瓶》の採用はまちまち

「大暴れした禁止カード」と語られることも多いカードですが、その現役時代はあまり華々しいものではなく、実は消去法的にスポットライトが当たった1枚です。
禁止指定の際にはそこそこ残念がられ、「《セルケト》の実家がなくなった」「1回でいいから "そっちの効果" も使いたかった」と嘆く声も聞かれました。

天使……天使?

エラッタの際には十分に危険性を削がれ、

  • 即発動できる罠カードを1枚に限定

  • EXデッキから特殊召喚できるモンスター種を融合モンスターに限定

という措置が下されました。
極めて妥当であり、ほとんど使われたことのない ”そっちの効果” もほぼそのまま残してくれたのはありがたい限りでした。
さすがに罠のドローソースを連鎖するような使い方はできなくなっており、原型は△に留めますが、同じ△査定のカードの中でもかなり再現度の高い方と言えます。

実用性に関してもまずまずと言ったところで、サーチのない永続魔法というハンデから積極的に採用されることはありませんが、効果そのものはそれなりに有用です。初期の【ラビュリンス】などへの採用は見られましたし、△が妥当な評価でしょう。

遊戯王のハゲは強い

また、執筆時点で詳細な情報が公開されていませんが、2025年にはTCGでリシドデッキのフィーチャーが行われるとのことで、まず間違いなくこのカードも強化を受けることになるはずです。
評価を落としている大きな要因は「アクセスのしにくさ」なので、名指しのサーチカードが来れば大きく評価を向上させる可能性があります。

個人的には、《セルケト》+このカードへのアクセスが簡単になると ”そっちの効果” の危険性が顕在化するのでは? と危惧していますが……。どうなるか楽しみですね。

2-3.《混沌帝龍 -終焉の使者-》

【エラッタ前のテキスト】
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性と闇属性モンスターを1体ずつゲームから除外して特殊召喚する。
1000ライフポイントを払う事で、お互いの手札とフィールド上に存在する全てのカードを墓地に送る。
この効果で墓地に送ったカード1枚につき相手ライフに300ポイントダメージを与える。

【エラッタ後のテキスト】
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地から光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ除外した場合のみ特殊召喚できる。
このカードの効果を発動するターン、自分は他の効果を発動できない。
(1):1ターンに1度、1000LPを払って発動できる。
お互いの手札・フィールドのカードを全て墓地へ送る。
その後、この効果で相手の墓地へ送ったカードの数×300ダメージを相手に与える。

<総評>
及第点
です。
伝説の禁止カード
ですが、オマケ付きのバニラと言える微妙な使用感になって帰ってきました。

全盛期のこれは「存在そのものが嘘に思えるぶっ壊れ」であり、

  • 緩い条件で特殊召喚できる攻撃力3000のフィニッシャー

  • ノーコストに等しい、手札と盤面のオールリセット効果

  • 引導火力になり得る特大バーン

という性能を1枚に詰め込んだウルトラパワーカードでした。
これが2003年出身というのだから今でも信じられません。周りにいたの、《ヴァンパイア・ロード》とか《人造人間-サイコ・ショッカー》とかですよ。

カラス使いの魔女 絵になるよね

伝説のひとつに、《黒き森のウィッチ》《クリッター》をリセット効果に巻き込んで《八汰烏》をサーチ、そのまま永久ドローロックを発生させ事実上の特殊勝利を決めていたという罪状があります。
これは競技レベルで実在した凶悪なコンボですが、実のところ、このような組み合わせに限らずぶっ壊れていたのが《混沌帝龍》の本質です。

同じことが《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》にも言えますが、召喚権を使わず出てくる攻撃力3000のアタッカーとしても規格外であり、優勢時には効果を使わずこれで殴り勝ってしまうこともあり得ました。まだ《ショッカー》を生け贄召喚していた時代ですからね。
平時はアタッカーとして、劣勢時・バーンによる決着が望めそうな時・《八汰烏》コンボが決まりそうな時にはリセット効果を使えばよく、どう使っても強すぎたのがこのカードのイカレポイントです。

オレは無傷で出所できたのになァ

エラッタに際しては全盛期の活躍が慎重に考慮され、

  • 発動ターンに他の効果を使用不可

  • バーンの参照値に自分のカードを含まない

というかなり重い制約が課されました。
後者は元から不可能に近かった先攻1ターンキルの抑制であまり影響がないですが、前者は見た目以上に重いです。
このカードの召喚コストの用意・サーチといった前準備が同一ターン中にできず、リセット効果使用後にも一切の効果が使用できません。
どう頑張っても先に動けるのは相手ですから、丸裸でターンを返して不利なトップ合戦を発生させるだけになります。

気遣いの達人

事実上、大がかりな自殺行為と言えるレベルまで実用性を落とされており、リセット効果はほとんど削除されたに等しいと言えます。
テキストは一見ほとんど変わっていないのに運用が大きく劣化してしまっているため、原型は△の評価としました。

一方で、実用性がまったくなくなったかと言えばそうでもなく、△の評価にとどめています。というのも、当初の役割のひとつであった「緩い条件で特殊召喚できるカード」としての運用には何ら問題がなく、これに一定の活路を見出していたためです。
さすがに攻撃力3000を優位性として主張するのは厳しい時代になっていましたが、取り回しのよいドラゴン族・レベル8として、《ドラゴン・目覚めの旋律》を使うデッキの選択肢として検討されることもありました。

~♪

リセット効果はまったくと言ってよいほど使用されず、もっぱら3000バニラないしランク8素材としての運用でしたが、見向きもされなかった訳ではないことは注釈しておきます。
(※ なお、現在では上位互換に近い《混源龍レヴィオニア》《終焉龍 カオス・エンペラー》の登場により役目を終えています。)

最後に、このカードにおけるエラッタの必要性ですが、△(将来的にエラッタなしでの緩和もあり得た)とします。

まあまあ

……正気を疑われそうですが、冷静に考えてみると、全盛期の使い道である試合中盤〜終盤のリセット要員としてはもう許容範囲の性能ではないでしょうか。ダメ押しに使うのならなくても勝っていますし、制圧盤面の切り返しとしてこの効果が通せるビジョンが見えません。
先行1ターン目の全ハンデスができてしまうのは問題に見えますが、これも後継である《天魔神 ノーレラス》がほとんど使われていないことから大暴れするとは考えにくく、地雷の一角程度に留まるのではないでしょうか。
(※ 《ノーレラス》より遥かに取り回しのよいこのカードを同一視すべきでない……というのは一理あり、《ノーレラス》が《混沌帝龍》になれば、採用できるデッキの幅やルートの質も大きく向上するとは思います。ただ、やはり本質的には問題視されるレベルとは思えません。)

ホイル加工少なすぎじゃ👴

もちろん、2015年当時の価値観ではエラッタされるのが正解で、2025年現在においてもまだ「議論の余地がある」程度に過ぎません。ですが、永久禁止と言い切るには疑問符がつくレベルになっているのが正直なところでしょう。

総じて、可もなく不可もない及第点の評価とします。
一応の使い道が残ったことには感謝したいですが、最も特徴的だったリセット効果が手の込んだ自殺に貶められているのは残念なところです。
あと10年待てばノーエラッタ復帰が現実味を帯びていたことを考えると惜しいばかりですが、当時の感覚では永久禁止カードだったことは間違いなく、仕方ないことかもしれません。

2-4.《キラー・スネーク》

【エラッタ前のテキスト】
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在している場合、
このカードを手札に戻すことができる。

【エラッタ後のテキスト】
「キラー・スネーク」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが墓地に存在する場合、
自分スタンバイフェイズに発動できる。
このカードを手札に戻す。
次の相手エンドフェイズに自分の墓地の「キラー・スネーク」1体を選んで除外する。

<総評>
失敗
です。
クソエラッタの代表格としてこの🐍が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。2025年は巳年ということで公式にもピックアップされていましたが、無性にイラッとしたのは私だけではないと思います。

やかましいわ

このカードの活躍は第2期~第3期と極めて古く、当初から一貫して無限のコスト要員として様々な用途に用いられました。ごく初期には使い減りしない《キャノン・ソルジャー》の弾丸としての運用が主でしたが、その後の手札コストを要するカードの増加により、それらのコストを実質帳消しにしてしまうことが問題視され始めました。
(※ 具体的には、《悪夢の蜃気楼》《サンダー・ブレイク》《アビス・ソルジャー》《同族感染ウイルス》あたりが挙げられます。)

これらとの併用を防ぐため、あるいは今後のカードデザインにも支障をきたすと判断されたためか、2005年9月というごく早い時期に禁止カードに指定され、そのまま10年近くストレージの底で眠り続けました。
実際、このヘビ亡き後も「手札コストを要求するカード」は続々と増えており、開発・運営面の負担を考えても、早めに取り除かれたこと自体は正解だったと言えます。

※ 相棒みたいな面をしているが、共演できたのは1年ちょっと

一方で、引退時期があまりに早すぎて、ユーザーも開発陣もこのカードに対して正確な評価を下せなくなっていた節があります。要は実態を超えて過大評価されることが多かったのです。
このカードは、あくまで「《キラー・スネーク》+手札コストを要するカード」の2枚コンボでしか効力を発揮せず、それも即座に得をするわけではありません。コストとして扱えない場面では死に札でしかなく、恩恵を受けるにはある程度のロングゲームが前提になるカードですから、生きていたところで言うほど暴れられたかは疑問です。

真っ当な「1:1交換」とターンの応酬が成り立っていた2011年~2012年頃までならともかく、これらの概念が形骸化し始める2013年~2014年(第9期初期)には特にありがたみがなくなっていたのが正直なところではないでしょうか。
エラッタの必要性に関しては何の迷いもなく×とさせていただきます。

もう少し一緒にいたかったなァ

……必要性なし、だったのですが、史実は皆さまご存知の通りです。
このカードは、非常にいびつなエラッタを受ける羽目となります。

  • 名称ターン1制限

  • 効果を使った場合、次の相手エンドフェイズに墓地の《キラー・スネーク》を除外するペナルティが発生

百歩譲って、前者の名称ターン1制限だけならいいでしょう。過剰な警戒だとは思いますが、過去が過去なだけに慎重な調整が施されたということで理解はできます。
後者の、パッと見で意味の分からない変なペナルティの方が問題です。

えーっと……?

要は、回収した《キラー・スネーク》を何らかのコストに充てて墓地に置いた場合、次の回収タイミングが来る前に除外されてしまうということです。
これを回避するための最もわかりやすい手段は、「コストに充てるのを2ターンに1度にする」ことでしょう。ペナルティ発生のタイミングを手札でやり過ごしてからまた使えばいいのです。
つまり、「無限コストとして使えるのは2ターンに1度」なのですが、「急ぎの場合は使い捨ててもよい(その場合はループが途切れる)」という配慮も含んだ非常にユニークな調整がされているわけです。

いやあ、面白いですね。

お通夜

……はい。
言いたいことはいろいろあります。

まずシンプルに弱すぎます。
そのまま帰ってきても怪しいカードに二重の弱体化が施されているのです。
2014年当時でも「2ターンに1度」の回収スパンは悠長すぎて話にならないレベルでしたし、そもそも《キラー・スネーク》でコストを賄いたいような汎用カードが環境に存在せず、使い道は絶無と言えるレベルでした。

そして何より、テキストに問題があります。
ここでもう一度、エラッタ前のテキストを見てください。

見やすい

自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在している場合、
このカードを手札に戻すことができる。

スッと意味の通る、実にシンプルな記述だったのです。
ここに要らない制約を付け足した結果、パッと見で「?」と首をかしげるようなゴチャゴチャしたテキストになってしまいました。まったく美しくありません。

添削させろ

美醜の捉え方は個人に委ねるとしても、客観的に見て2つの点で問題を抱えています。

  • 第2期当時には存在しなかった自己除外デメリットを不必要に持つこと

《キラー・スネーク》らしさを損ねている最大の要因はこれではないでしょうか。
何らかの自己再生効果を持つカードが、無限リソースとなることを防ぐために自己除外されるデメリットを持つことはよくあります。しかしこれ、おそらく開祖は第6期の《ボルト・ヘッジホッグ》《ゾンビキャリア》あたりで、《キラー・スネーク》の生まれた第2期当時には発想からして存在しなかったデメリットなのです。

類似テキスト多数

(※ そもそも当時、除外というメカニズム自体が未成熟で、わずかに《墓掘りグール》《魂の解放》《異次元の戦士》が触れるのみという未定義の領域でした。)

「そのデュエルではもう使えない」

むろん、当時存在しなかったデザインパターンを取り入れること自体を否定しているわけではないです。ゲームバランス上の理由でそうせざるを得ないこともありますし、それで調整が上手く行くのなら問題はありません。
《キラー・スネーク》の場合は、この改竄が不必要に行われているのが問題なのです。

言語化が難しいのですが、現《キラー・スネーク》に感じるパロディカードっぽさはこれが原因ではないでしょうか。
これがレギュラーパックのノーマルレア《キラー・イトミミズ》とかだったら何の問題もないのです。
この珍妙なテキストがあの《キラー・スネーク》本人だとは信じたくありません。

  • ターンをまたいで解決する処理が不必要に用いられていること

これは私見なのですが、「ターンをまたいで解決する処理」アンチパターンのひとつになっていると思われます。
理由はシンプルで、処理を忘れやすいからです。1ターンの情報量が大きく増した現代遊戯王においては、前のターンに発生した出来事をトリガーにして次のターン以降に何らかの処理を行う、という行為自体がアナログの限界を超えつつあります。
(※ 皆さまも《真炎王 ポニクス》の回収効果をうっかり忘れたことはあるのではないでしょうか?)

強制効果だよ

近年こういった遅効性の処理はあまり用いられなくなっており、大々的にプッシュされるのはこれをテーマ特性とする【D-HERO】【メタファイズ】【炎王】【ネフティス】などに限られる印象です。
何ならそのターン中に処理を行う《深淵の獣 マグナムート》さえ処理忘れが指摘される時代ですから、効果の解決が複数フェイズに跨ること自体が減っていくかもしれません。

はい

……《キラー・スネーク》は、見事にこのアンチパターンを体現しているんですよね。
回収効果を使った瞬間、次の相手エンドフェイズというかなり先のタイミングまでこれの存在を覚えておく必要が生じます。墓地に《キラー・スネーク》が存在しなくても厳密には解決宣言をする必要がありますし、強制処理ですから忘れればジャッジキルの可能性がつきまとう代物です。

もちろん、デザインそのものを否定しているわけではないです。
上記の通りこういった処理をテーマ特性にしている例もあるし、要は使いようです。必然性があったり、処理がわかりやすかったりすればそれでいいんです。
《キラー・スネーク》の場合は、シンプルだった効果をいたずらに冗長化しているだけで、わざわざフェイズ跨ぎの処理にする必要が全く感じられないことが問題なのです。

雑コラごめんなさい

……長くなりましたが、以上が《キラー・スネーク》の問題点です。
エラッタの必要性もなし、原型もなし、実用性もなし。そのくせアンチパターンと思われるものにうっすら踏み込んでおり、多方面から見て失敗と言わざるを得ない非常に残念な仕上がりになってしまいました。

2-5.《現世と冥界の逆転》

【エラッタ前のテキスト】
自分の墓地にカードが15枚以上ある時、1000ライフを払い発動。
お互いに自分の墓地と自分のデッキのカードを全て入れ替える。
その際、墓地のカードはシャッフルしてデッキゾーンにセットする。

【エラッタ後のテキスト】
「現世と冥界の逆転」はデュエル中に1枚しか発動できない。
(1):お互いの墓地のカードがそれぞれ15枚以上の場合に1000LPを払って発動できる。
お互いのプレイヤーは、それぞれ自分のデッキと墓地のカードを全て入れ替え、
その後デッキをシャッフルする。

<総評>
失敗
です。
元のこのカードは、当時のカードプール上、止める手段がほぼ存在しないOCG史上最強格の先攻1キルデッキのフィニッシャーです。
パッと見ただけでも「相手の墓地が0枚の状態で発動すると勝利する」というバグを抱えており、この状況を先攻で再現できる確率が8割を超えていたとされます。エラッタの必要性が〇であることは間違いありません。
(※ 実際には、墓地に数枚のカードが落ちてしまっている状況でも、このカードの発動後に《メタモルポッド》《手札抹殺》をぶつけて無理やり削りきることが可能でした。)

その自信はどこから?

エラッタに際しては、

  • デュエル中1度しか使用できない制約

  • 相手の墓地にもカードが15枚以上必要な縛り

が付与されました。
前者の「デュエル中1度」そもそも1度しか使わないカードなのでどうでもいいのですが、後者の縛りが強烈です。1ターン目から狙うのはかなり難しくなりましたし、このカードを発動するだけでは勝ち切れなくなったため、実用レベルのコンセプトを失いました。
(※ このカードの発動にチェーンして《デビル・コメディアン》などで相手の墓地を掃除できればいいのですが、非常に要求値の高いネタコンボでした。)

残念ながら原型・実用性ともに×の評価を下しますが、元が特殊すぎて、エラッタするならこうせざるを得なかったとも言えます。失敗扱いがかわいそう、という見方もわかります。
また、一応初期の【イシズティアラメンツ】への採用実績もあるし、そもそも実用性×ではないのではという見方もあると思いますが……。

グロ画像

……むしろ、その "イシズ" という外的要因込みで、失敗と断じます。

"イシズ" のモンスター群につけられたムチャクチャな効果は、元はと言えばエラッタ後の《現世と冥界の逆転》をなんとか実用化するためのものでした。
《ケルベク》《アギド》のデッキ破壊は「お互いの墓地にカード15枚」という途方もない条件を満たすため《ケルドウ》《ムドラ》のフリーチェーン墓地掃除は《現冥》にチェーンして被害を拡大させるためにつけられたものです。

すべてがおかしい

逆に言えば、エラッタ後の《現冥》は弱すぎて、これくらいのぶっ飛んだ補助輪がないと機能しない状態になっていたわけです。
要は、この無理やりなエラッタこそが遥か未来に "イシズ" を生み出す原因であり、長い目で見ても失敗だったのではないでしょうか。
また、確かに《現冥》が採用されていた時期もありましたが発動されることは一切なく、"イシズ" のボーナス効果目当てでしかなかったため、《現冥》に実用性があったわけでないと考えています。すぐ抜けましたしね。
(※ "イシズ" が個別に調整ミスだっただけでは、という見方ももちろん否定はしません。しかし、エラッタ後《現冥》のサポートを名乗るのなら、形はどうあれお互いのデッキ-墓地間で大量のカードを移動させる手段が必要になるわけです。これを壊さないように作る方が難しかったのではと思います。)

在りし日の姿

じゃあどうすればよかったのか、と聞かれると……。エラッタせずにそのまま禁止カードでいるべきだったと思います。
「そんな投げやりな」と思われそうですが、禁止カードの中にはエラッタ復帰に適さないものもあります。たとえば、《ラストバトル!》はどうエラッタしても満足の行く形にならないでしょうし、おそらく今後も黒歴史として封印され続けるでしょう。

テキストがフリーダムすぎる

《現冥》も《ラストバトル!》の同類と考えます。処理が特殊すぎる上に、どう調整しても "神" か "紙" の二択にしかならない極端なカードだからです。こんなのを無理やり引っ張り出す必要はなかったのではないでしょうか。

変わり果てた姿

そして、わざわざ "紙" レベルまで弱体化させたうえで、後から強すぎるサポートカードを刷って何とかしようとしたのもナンセンスに感じます。努力の跡は感じ取れますが、そもそもの調整に一貫性がありません。

なんで誘発も兼ねてるの?

以上のことから、このカードはエラッタ対象にされてしまったことからして失敗だったというのが私見です。
禁止カードを減らすためのエラッタなはずが、将来的に新たな禁止カード2枚を生み出す原因になってしまったのは皮肉と言わざるを得ません。

2-6.《死の破壊デッキウイルス》

【エラッタ前のテキスト】
自分フィールド上の攻撃力1000以下の闇属性モンスター1体をリリースして発動できる。
相手フィールド上のモンスター、相手の手札、
相手のターンで数えて3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、
攻撃力1500以上のモンスターを破壊する。

【エラッタ後のテキスト】
(1):自分フィールドの攻撃力1000以下の闇属性モンスター1体をリリースして発動できる。
相手フィールドのモンスター及び相手の手札を全て確認し、
その内の攻撃力1500以上のモンスターを全て破壊する。
その後、相手はデッキから攻撃力1500以上のモンスターを3体まで選んで破壊できる。
このカードの発動後、次のターンの終了時まで相手が受ける全てのダメージは0になる。

<総評>
失敗
です。
「デッキ破壊ウイルス」シリーズの開祖で、遥か昔から多くの決闘者デュエリストを苦しめてきた印象深いカードです。
メインモンスターの攻撃力が軒並み1500を超えていて、墓地効果もそれほど充実していなかった時代においては、事実上のエクストラウィンとして機能することもありました。

まずエラッタの必要性ですが、△とします。
当時の環境ならともかく、今エラッタ前のこのカードが3枚使えても【ラビュリンス】のサイドくらいにしか入らないでしょう。
カードパワーそのものは健在ですが、刺さる対面が限定される上振れ要素でしかないため、禁止に留め置くほどの力は失われています。
(※ 2014年当時の環境においてもエラッタの必要はなかった説はありますが、検証する手段が限られるのでここでは割愛します。)

姫さま そんなばっちぃの触らないでください

さて、そんなこのカードが受けたエラッタは以下の通りです。

  • 3ターン継続して発生するドローチェックが廃止

  • 次のターンの終了時まで相手が受けるダメージが全て0になる

  • 相手が任意のデッキのモンスター3体を破壊できるデメリットが追加

……ドローチェック廃止・ダメージ0は、軽くはないですが許容範囲でしょう。
問題はドローチェックの代わりに追加された変なデメリットです。
要は、デッキのどのモンスターに感染させるか相手が選べるようになってしまったし、感染させるかどうかも任意になってしまったんですよね。仮にも「デッキ破壊ウイルス」なのですが。

こういうことやぞ

絵面が間抜けなのも然ることながら、性能面に大きな問題があります。
「墓地効果を持つ攻撃力1500以上のモンスター」を採用しているデッキに向けてこのカードを使った場合、単純に考えても最大3枚のアドバンテージを回復されてしまうのです。刺さるはずのデッキに対して撃っても、高い確率で友情コンボが発生してしまうという体たらくです。効力が不安定すぎて使い物になりません。

よって、このカードが真に刺さるのは、

  • メインモンスターの基礎攻撃力が1500を超えていて、

  • しかもモンスター比率が高くて、

  • 墓地効果を持つカードが存在しないデッキ

に限られます。
雑に撃ってエクストラウィンを発生させていたエラッタ前から一転、非常に相手を選ぶカードになってしまいました。

ゲーミングディスク

(※ 一応、採用例が絶無というわけではなく、エラッタ当時の環境においては【クリフォート】が仮想敵に該当しました。サイドデッキに試用されるなど一定の採用は見られましたが、ピンポイントすぎることから定着は見られず、ごく自然にフェードアウトしていきました。)

以上のことから、原型・実用性ともに×の評価を下します。
特に、原型がなくなって「デッキ破壊ウイルス」ですらなくなっているのは悔やまれるところです。後継の《魔デッキ》《闇デッキ》がたまに引っ張り出されるのに対し、元祖たるこのカードだけが見る影もなくなっているのは悲しい限りです。返して。

先輩なにやってんすか^^;

2-7.《破壊輪》

【エラッタ前のテキスト】
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊し、
お互いにその攻撃力分のダメージを受ける。

【エラッタ後のテキスト】
「破壊輪」 は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):相手ターンに、相手LPの数値以下の攻撃力を持つ
相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
その表側表示モンスターを破壊し、
自分はそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。
その後、自分が受けたダメージと同じ数値分のダメージを相手に与える。

<総評>
成功
です。
これが初のエラッタ復帰成功例だと考えています。

一級エラッタ鑑定士 井之頭五郎

このカードは、汎用除去として強すぎたというカードパワーの問題と、安易なフィニッシュを発生させてしまうゲーム体験の問題の両面で禁止カードに指定されていました。フリーチェーンの罠カード1枚で突然死するという体験もあまり心地いいものではありませんが、それ以上に頻繁に引き分けを発生させてしまう性質が問題視されていた印象です。
エラッタに当たってはその危険性が慎重に取り除かれ、一定のカードパワーを保ったまま蘇ることに成功しています。

  • 名称ターン1制限が追加

  • 相手ターンでのみ発動できるように変更

  • 相手モンスターのみ対象にできるように変更

  • 相手のライフを上回る攻撃力のモンスターは選択できないように変更

  • ダメージを受けるのが同時ではなく、自分→相手の順序に変更

変更箇所だけを取り上げると多いですが、要は真っ当な使い方をするのならエラッタ前とほぼ変わらないです。
このカードによる呆気ないフィニッシュや引き分けは発生しなくなり、自分のモンスターを火力に変換するような使い方もできなくなりましたが、非常に貴重なフリーチェーン除去が行える汎用罠として一定の採用率を獲得することになりました。

かわいそう

他のエラッタ復帰カードがおおむね1年以内には完全解除されている中で、純粋なカードパワーを保っているこのカードは4年間制限カードに留め置かれることになりました。
かといって、「強すぎるのでもう1度禁止にしろ」という声が聞かれるようなカードでもなく、非常に絶妙なバランス感覚が働いていた良エラッタだと言えます。
(※ 最終的には《デストロイ・ドラゴン》の販促と思わしきタイミングで解除されています。)

実はアニメに出てないよ

……これだけの良エラッタがされているカードだとあまり語ることがないですね。
全部このくらいの出来ならこの記事は成り立たないのですが……。

2-8.《混沌の黒魔術師》

【エラッタ前のテキスト】
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地から魔法カード1枚を選択して手札に加える事ができる。
このカードが戦闘によって破壊したモンスターは墓地へは行かずゲームから除外される。
このカードはフィールド上から離れた場合、ゲームから除外される。

【エラッタ後のテキスト】
「混沌の黒魔術師」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンのエンドフェイズに、
自分の墓地の魔法カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したダメージ計算後に発動する。
その相手モンスターを除外する。
(3):表側表示のこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。

<総評>
及第点
です。
場に出るだけであらゆる魔法を回収できてしまう恐ろしいテキストの持ち主で、「魔法カードの回収」というテキストそのものが忌避されるようになった主因です。パワーカードが魔法に集中していた第3期~第4期にあたってはグッドスタッフ面でも大活躍を見せ、最後は第6期初頭の【ドグマブレード】で中核を務めて華々しく散っていきました。

8!

回数制限がない魔法回収は現代でもダメで、エラッタの必要性は文句なしに〇です。そんなエラッタ内容は以下の通りです。

  • 名称ターン1制限が追加

  • 魔法カードの回収がエンドフェイズに変更

  • 破壊したモンスターを除外する効果が永続効果→誘発効果に変更

3番目の変更点は理由がよくわからないので、いったん無視します。元の効果が不自然な処理というわけではないのですが……。

メインとなる魔法回収効果は回収がエンドフェイズになってしまったため、速攻魔法でない限りは使えるのが次のターンまで持ち越しになります。
回数制限もついたのでループには用いることはできなくなりましたが、グッドスタッフ的な使い方はできなくもない、といった具合に落ち着きました。
時代背景もあって活躍は難しくなっており、環境に姿を見せることはありませんでしたが、原型・実用性ともに多少の情けも込みで△が妥当といったところでしょうか。

なお2025年現在においては、《白き森の妖魔 ディアベル》が非常に緩い縛りで魔法カードのサルベージを行うことが可能です。
エラッタがあと10年遅れていれば、回収は即時に行えたかもしれません。回数制限をつけるのは必至ですけどね。

2-9.《クリッター》

【エラッタ前のテキスト】
このカードがフィールド上から墓地に送られた時、
自分のデッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を選択し、
お互いに確認して手札に加える。
その後デッキをシャッフルする。

【エラッタ後のテキスト】
「クリッター」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動する。
デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。
このターン、自分はこの効果で手札に加えたカード及びその同名カードの発動ができない。

<総評>
成功
です。
みんな大好きSanganちゃんです。後の《手違い》「現世行きバスと間違えて冥界行きバスに乗ってしまったので禁止になった」という示唆がなされ、そのメッタメタなキャラ付けが話題になりました。実際にはちゃんと《魔界発現世行きデスガイド》について行ったのがトドメだったんですけどね。

かわいい

そんなお茶目な《クリッター》ですが、†冥界の洗礼†エラッタを受けつつも無事帰還を果たします。

  • 名称ターン1制限が追加

  • サーチしたモンスターの効果をそのターン使用できない制約が追加

これにより、場と墓地を反復横跳びして大量のカードをかき集めるような無法ムーブは封じられました。
サーチしたカードもそのターンには原則使えなくなったことで、悪事にはまず加担できない姿に落ち着いた格好です。

現世行きツアーにも途中参加できた模様

とはいえ、禁止直前の《クリッター》はそんな悪い子ではなく、健全な遅効性サーチャーとして愛されていました。サーチしたカードは次のターンの備えとすることが主だったこともあり、当時の使い方は十分に再現することが可能と言えました。
この点で、まず原型には○の評価を与えてよいと考えます。カードパワー的に問題なくなった当時の運用を許容しつつ、今後生まれ得る危険な運用を防いで後顧の憂いを断った理想的な調整です。

また、エラッタ後はしばらく「ふつうのカード」に甘んじていた《クリッター》ですが、《転生炎獣アルミラージ》の登場により再ブレイクの機会を得ます。
通常召喚限定ながら自力で墓地に行く手段を手に入れ、事実上「召喚成功時に攻撃力1500以下のモンスターをサーチする」即効性を得たわけです。これは長らく遅効性であることが前提だった《クリッター》にとって革命的な出来事と言えました。

2000円しました…

「即効性とは言っても、サーチしたモンスターはそのターン中には使えないのでは?」と思われがちですが、ここにちょっとしたバグがありました。
サーチしたモンスターの「効果が発動できない」だけで、言い換えれば「発動を伴わない召喚ルール効果」などは使えてしまうのです。この性質に最も噛み合ったのが《神樹のパラディオン》でした。

君かわいいね 本名なんて言うの?(不明)

チューナーであるこのカードをそのまま《アルミラージ》のリンク先に出せてしまうので、当時は《水晶機巧-ハリファイバー》を呼び出すことができたのです。あの《クリッター》がまさかの1枚初動宇宙創造の引き金と化しました。

胸が痛くなる

《ハリファイバー》に繋がる1枚初動は他にも多くの選択肢がありましたが、「クリッターアルミラージ」が優れていたのは「サーチ先の枯渇が起こらない点」「素引きして困るカードがない点」です。

トムとジェリー

《神樹のパラディオン》を素引きしてしまっても、《クリッター》のサーチ効果が使用不能になることはまずありません。《灰流うらら》《増殖するG》をサーチ範囲に含んでいるためであり、狙ってこれらをサーチしても強いです。《うらら》なら実質1妨害追加しているようなものですし、《G》も配牌によってはターンスキップとして機能します。
また、素引きした《神樹のパラディオン》は適当なリンクモンスターとくっついて簡単に特殊召喚する事が可能なので、これが腐ることもそうそうありません。総じて非常にコンパクトな有用コンボでした。

発見当初こそ「へえ~そんなことできるんだ面白いね」といった反応が主でしたが、後に【勇者ハリラドン】の初動を務めて環境にも顔を見せることになります。上記の高い有用性に加え、《アラメシアの儀》の縛りにかからない点が評価された格好です。
史上類を見ない《クリッター》を通すと負けるデッキだったこともあり、冗談半分で「いちばん強いカードは《クリッター》」「《クリッター》もう1回規制しろ」と囁かれたこともあったほどです。たまに本気で怒ってる人がいましたが……。

どう考えても悪いのは《ハリ》だよ!

ここまでのエピソードに鑑みて、実用性にも文句なしで〇の判定を与えてよいでしょう。
エラッタの必要性もあり、その内容も納得のいくもので、さらに第二の人生を得て環境で活躍した非常に理想的な1枚です。

2-10.《洗脳-ブレインコントロール》

【エラッタ前のテキスト】
800ライフポイントを払って発動できる。
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
エンドフェイズ時までコントロールを得る。

【エラッタ後のテキスト】
(1):800LPを払い、相手フィールドの通常召喚可能な表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
その表側表示モンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。

<総評>
失敗
です。
《心変わり》《強奪》の後継として生まれた汎用コントロール奪取で、【帝コントロール】から【レスキューシンクロ】の時代まで環境最前線を駆け抜けた名カードでした。
《精神操作》に後を託し隠居していた彼ですが、突然現世に引っ張り出され不当な辱めクソエラッタを受けることになりました。本当にかわいそうでなりません。

※ イメージ画像

まず、エラッタの必要性は△(将来的にエラッタなしでの緩和もあり得た)……というか、あと数年我慢していれば間違いなくノーエラッタで無制限まで復帰できたカードです。
2025年1月現在では完全上位互換の《心変わり》が無制限カード、(おおむね)上位互換の《強奪》も準制限カードまで緩和されているからです。
その《心変わり》「《三戦の才》の方が強い」と見なされ採用されない時代ですから、エラッタ前《ブレコン》はもはやなんの脅威でもありません。

こんな時代が来るとはね

コントロール奪取の査定がここまで緩くなったのは近年の話ですが、このカードの復帰時にはすでに《精神操作》が制限解除されており、「《ブレコン》も1枚くらい返していいのでは?」という意見は聞かれ始めていました。
筆者もそう考えており、再録の報せを聞いた時にはなんの疑いもなくノーエラッタ復帰だと思っていたので、変なテキストを見て頭を抱えました。

お通夜

真面目に考察するのもバカらしいので簡潔に済ませますが、特殊召喚モンスターを奪えないコントロール奪取に価値はありません。実用性は×です。

そんなことないよ!

……"原型"に関して言えばちょっと悩ましいところで、【帝コントロール】時代の使い方を再現することはできるんですよね。
特殊召喚モンスターがほぼ存在しなかった当時の環境を踏まえての変更なのはうっすら分かるので、そういう意味で△に留めようか悩みました。
ただ、不当にカードパワーを落としすぎている点、シンクロ期に入ってからの活躍が印象深いカードでもある点が引っかかり、どうにも判断を下しかねていたところ、

ドン☆

原作からして特殊召喚モンスターの《サクリファイス》を奪っていることが発覚したので、躊躇いなく×にすることにしました。南無。

2-11.《王宮の勅命》

【エラッタ前のテキスト】
このカードがフィールド上に存在する限り、
フィールド上の魔法カードの効果を無効にする。
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に700ライフポイントを払う。
または、700ライフポイント払わずにこのカードを破壊する。

【エラッタ後のテキスト】
このカードのコントローラーはお互いのスタンバイフェイズ毎に700LPを払う。
700LP払えない場合このカードを破壊する。
(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、
フィールドの全ての魔法カードの効果は無効化される。

<総評>
論外
です。
エラッタ復帰カードの中でも唯一の、禁止カードに逆戻りしたカードです。
ある意味では一番の失敗例なのですが、かといってこれをWORSTに掲げるのは趣旨がズレてしまうので、特例として論外の判定を与えます。

やめて

エラッタ前のこのカードは、あらゆる魔法を封殺する汎用カードとして猛威を振るっていました。
パワーカードが魔法に集中していた前半期のOCGにおいては、これにチェーンして《サイクロン》が間に合うかどうかで勝負が決することも少なくありませんでした。
(※ 余談ですが、詳細なルールの周知が進んでいなかった小学生環境において、《サイクロン》《勅命》でチェーンを組んだ場合にどう解決するかは地域によって解釈が割れていたようです。理屈は曖昧ながら、後出し有利となることが多かった筆者の地域はリテラシーが高い方だったのかもしれません。)

声の大きい方の勝ちだよ

「自分もパワカ魔法が使えなくなるのでは?」というのも心配無用で、好きなだけ魔法を使ってから相手ターンに開けばいいだけです。
加えて、コストの支払いをやめれば任意のタイミングで破棄することができたため、返しのターンで邪魔になるようなこともなく、相手にだけ一方的に不利益を押し付けることができました。
維持を選ぶしても「往復ターンごとに700LP」とコストが異常に安く、大きすぎる影響力に対しまったく釣り合っていません。

結局、2004年3月というかなりの早期に禁止指定され、そのまま一度も復帰することなく遙か未来のエラッタを迎えます。
(※ 初の禁止カードの中の1枚です。)

王の帰還じゃ

エラッタに際しては任意破棄安すぎるコストが問題と考えられたようで、

  • コストを支払わない選択を廃止

  • コストの支払いが相手ターンにも発生(実質コスト倍化)

という調整が施されました。
パッと見はあまり変わっていないのですが、よく読むとぼったくり料金改定が行われており、しかも死ぬまで解約できない悪徳サブスクと化しています。
恐ろしいですね。皆さんも規約が変わったらちゃんと目を通しましょう。

※イメージ画像

これにより、自分だけ恩恵を受けてさっさと解約する使い方ができなくなったため、(少なくともこの時点では)採用先を選ぶカードになりました。
具体的には、魔法カードの比率を極端に下げた罠デッキに迎えられましたが、これらが指向するロングゲームと重いコストが噛み合わないため、当初は必須カードとまでは呼ばれなかった印象です。

ワシからは逃れられんよ

とはいえ、本懐である「魔法カードの永続封殺」には手が加えられていません。影響力の大きさは据え置きであったため、原型は間違いなく〇と言えます。
また、 "ぼったくりコスト・解約不可" の制約はゲームが長引いてこそ意味があるもので、響く前に決着がついてしまえば問題ないわけです。要はこのカード、デュエルの高速化に伴ってリスクが相対的に小さくなるため、勝手に年々強化されるという謎の性質を備えていました。
次第にこういった強みが露呈し、「エラッタ後も強すぎる」というプレイヤーの理解が進み、【オルターガイスト】などを中心に罠デッキ必携の切り札として浸透していきます。
2021年~2022年頃には展開系デッキの蓋として利用する例も確認されるようになり、いよいよその存在が許容されないものとして認識され始めました。
(※ なお、罠デッキにおいては単なる封殺カードとしてだけではなく、《ハーピィの羽根帚》《ライトニング・ストーム》等から他の罠を守る役割も兼ねていました。せっかく引いた捲り札をあっさり弾かれ、このカードに心を折られたプレイヤーは少なくないでしょう。

そして皆さまご存知の通り、2022年4月をもって《勅命》2度目の禁止指定を迎えました。予想していた人も多いですが、エラッタ復帰したカードが再び禁止指定される前例はなかったため、発表の際にはそれなりに驚かれた印象です。

余はさみしいぞ

何がトドメになったかは諸説ありますが、直接的には【エルドリッチ】の隆盛でしょうか。一般的な罠デッキの水準を超える高打点でゲームを畳むことができたのと、邪魔になった《勅命》を自力で壊して強制解約できるシナジーで暴れた形です。
(※ あるいは、近年積極的に行われるようになった永続罠規制の第一歩だったと解釈することもできます。そろそろ《スキルドレイン》辺りは後を追うかもしれませんね。)

俺は入会費しか取らないぞ!

というわけで、エラッタの必要性・原型・実用性の三部門で問題なく◯評価のこのカードですが、残念ながら総合的には論外です。
約5年は制限カードのまま生き延びたことを考えるとまるっきり調整ミスとも言えないのですが、見通しがやや甘かったのは否定できません。ちゃんと危険性を除去したように見えて、《勅命》を《勅命》たらしめている部分にはノータッチだったので、いつか再禁止されることを見通していた人も中にはいたんですよね。

仮に再エラッタするなら、次は核となる部分に手を入れなくてはならないでしょう。
パッと思いつくところでは《天子の指輪》式の「毎ターン最初に発動された魔法だけ無効にする処理」に変えるとかですが……それは果たして《勅命》なのでしょうか。
もはや永久禁止のまま眠っている方が幸せなのかもしれません。

指輪がデカすぎる

2-12.《未来融合-フューチャー・フュージョン》

【エラッタ前のテキスト】
自分のエクストラデッキの融合モンスター1体をお互いに確認し、
決められた融合素材モンスターを自分のデッキから墓地へ送る。
発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に、
確認した融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

【エラッタ後のテキスト】
(1):このカードの発動後1回目の自分スタンバイフェイズに発動する。
自分のエクストラデッキの融合モンスター1体をお互いに確認し、
そのモンスターによって決められた融合素材モンスターを自分のデッキから墓地へ送る。
(2):このカードの発動後2回目の自分スタンバイフェイズに発動する。
このカード(1)の効果で確認したモンスターと同名の融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。
そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

<総評>
及第点
です。
「デッキ(=これから引くカード)の中から先に素材を調達し、然るべき未来に融合召喚を行う」というフレーバーがきちんとテキストに織り込まれている面白いカードです。ただ、「デッキからモンスターを墓地に送る」という行為の査定が甘すぎたのがこのカードの罪で、融合召喚する方の効果はオマケと捉えて《とてもおろかな埋葬》のような使われ方をすることになります。
素材指定の緩い融合モンスターや墓地効果を持つモンスターが増えるにつれ、《おろ埋》どころか《苦渋の選択》に比肩するパワーカードと化してしまいました。
(※ そもそも《キメラテック・オーバー・ドラゴン》によりデッキの機械族を全て叩き落とすことが可能だったこともあり、最初から間違っていたという方が正しいかもしれません。)

グォレンダァ!

登場早々に制限カードに指定され、その後は「引ければ強いカード」として長らく禁止を免れてきましたが、2012年9月をもってその生涯を終えることになりました。
何が原因かは諸説ありますが、直接的には【カオスドラゴン】《F・G・D》を指定してドラゴン5体を落とす運用が強すぎたことでしょう。いかに上振れ要素と言えども許されない存在感を発揮していたのは間違いありません。
(※ 《F・G・D》自体は当初から存在しましたが、ドラゴン族のカードプールの貧弱さからしばらくは問題になっていませんでした。)

たまにちゃんと場に出るよ😢

その他、《E・HERO エスクリダオ》の登場により《BF-精鋭のゼピュロス》を落とせるようになっていたこと、《シンクロ・フュージョニスト》の登場により迂遠ながらサーチが効くようになっていたことなども影響しているかもしれません。
いずれにしても、「元からぶっ壊れているのに時間経過と共に強くなるカード」であり、いつか禁止指定されることが必定だったのは間違いありません。2012年まで生き長らえたのは頑張った方だと思います。

未来から来ました

エラッタ内容はシンプルで、素材の調達も1ターン未来に行うことになりました。
効力を発揮するためには耐性のないこのカードを1ターン守る必要が生まれたわけです。現代遊戯王においては十分なハンデと言えるでしょう。
構築上、このカード+サーチカード+守る手段+融合素材モンスターをデッキに詰め込まなくては機能しないので見た目以上に要求値が高く、残念ながら競技的な実用性は失われてしまったと言って差し支えありません。

しかし、効果そのものに変更点はなく、「通れば勝ち」である大味な要素を残してくれたことには感謝すべきでしょう。それに融合召喚までのターン数は変わっていないので、本来の目的で使う分には問題ありません。
ハードルは高いですが、不可能を可能にするタイプのバグカードであることには変わりません。
競技シーンではともかく、カジュアルな場での面白カードとしての実用性は十分に残っており、原型・実用性ともに△の評価に留めました。

足向けて寝れないっす

デッキ融合の概念も一般化しつつある昨今ですが、やはり原初たるこのカードは別格であり偉大です。古参デュエリストのあなたも、ひさびさに好きなモンスターを《未来融合》してみてはいかがでしょうか。

ボクはこれ!

2-13.《レスキューキャット》

【エラッタ前のテキスト】
自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地に送る事で、
デッキからレベル3以下の獣族モンスター2体をフィールド上に特殊召喚する。
この方法で特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

【エラッタ後のテキスト】
「レスキューキャット」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドのこのカードを墓地へ送って発動できる。
デッキからレベル3以下の獣族モンスター2体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズに破壊される。

<総評>
成功
です。
シンクロ召喚の恩恵を最も受けたカードであり、「チューナーと非チューナーをどうやって揃えるべきか?」という当時の課題を1枚で解決してしまったパワーカードです。
《召喚僧サモンプリースト》《リミット・リバース》に対応する取り回しのよさも手伝い、【レスキューシンクロ】の主役としてシンクロ期(2008年〜2010年)を全力で駆け抜けました。その影響力は凄まじく、獣族チューナーのデザインを忌避させ、《柴戦士タロ》の種族をねじ曲げた原因とも言われます。

ぜったい企画時点では獣族だったワン……🐕‍🦺

もっとも、【レスキューシンクロ】の挙動自体がそう何年も問題視されていたわけではありません。
「1枚初動でレベル6以下のシンクロモンスター(orランク3以下のエクシーズモンスター)を呼び出す」ことは、2010年時点ではともかく、2012年〜2013年頃には飛び抜けて強力とも言えない行為になりつつありました。遅くとも2014年頃には、【レスキューシンクロ】の存在が許される程度には周囲がインフレしていたと言えます。
(※ もともとグッドスタッフ系のデッキですから、インフレに飲まれやすいのは必定です。)

ネコがネズミを呼ぶなんて

にも関わらずこのカードが2017年まで禁止カードに留め置かれたのは、現役時には存在しなかった展開効果を持つリクルート先の影響でしょう。
特に《ゼンマイネズミ》の効果が利用できてしまうのは明らかに危険で、これが復帰を遠ざける要因だろうというのが当時の共通認識でした。
(※ 知名度が低いですが、《森の聖獣 ユニフォリア》も明らかに《レスキューキャット》の不在を前提にデザインされていました。)

前見えてる?

現役時には呼ぶモンスターの効果は大して利用されず、シンクロモンスターに繋がることこそが本懐だったのですが、禁止後にはその重要性が完全に逆転した格好です。
「1枚からシンクロ(エクシーズ)に繋がることは許せるようになったが、リクルート先に爆弾が混ざってしまったので返せない」状態であり、エラッタの必要性は〇になっていたと言えます。
(※ 一応、現役時にも《N・ブラック・パンサー》《コアラッコ》を活用したり、《X-セイバー エアベルン》のハンデスを通したりするシチュエーションはありましたが、運用の本質とは言えないウェイトでした。)

ただいまにゃあ

そういった事情を踏まえた上で、このカードのエラッタの内容は非常に秀逸と言えるものでした。

  • 名称ターン1制限の追加

  • リクルートしたモンスターの効果が無効化されるようになった

要は、禁止後に発生した「リクルート先ヤバすぎ問題」に対応しつつ、全盛期の「シンクロ引換券」としての運用は許容するきわめて理解度の高い裁定が下されたのです。
テキストの変更箇所も最低限で美しく、多くの愛猫家🐈が「こういうのでいいんだよ」と深く頷いたのではないでしょうか。原型はもちろん〇です。

一級エラッタ鑑定士 井之頭五郎(2回目)

復帰直後こそ、さすがに【レスキューシンクロ】リペアが通用するような環境でもなく、目立った採用先を見つけられず燻ぶっていましたが、そのカードパワーは健在でした。現役時には存在しなかったエクシーズ・リンクモンスターとの組み合わせも開拓しがいがあり、多くのデッキビルダーの心をくすぐったことは間違いありません。
(※ 私事で恐縮ですが、《百獣のパラディオン》2体を呼んで【パラディオン】の1枚初動にしたり、リバースモンスター2体を呼んで《サブテラーマリスの妖魔》を作ったりして遊んでいました。後者は《ガード・ドッグ》をリクルートできるのが魅力で、これを《聖占術姫タロットレイ》でめくってロックを決めるのが快感でした。)

誰やねん

エラッタ後《レスキューキャット》に大きな転機が訪れるのは、獣族のプッシュが始まる2020年のことです。
とりわけ【鉄獣戦線】における召喚権の充て先としてはこの上なく強力で、テーマの初動である《フラクトール》(→《ケラス》)が召喚権を使わないこととも噛み合っており、最強の1枚初動として恐れられることになります。

最強のふたり

部分的には全盛期以上のパワーを発揮しており、あの《レスキューキャット》の環境復帰を感慨深く思ったおじいちゃんデュエリスト👴も多いのではないでしょうか。実用性も当然〇です。

以上のことから、どの面で見ても隙が無く、非常に出来のよいエラッタのひとつであることは間違いありません。今日でも使われる良カードです。
個人的には2017年という復帰時期も絶妙だったと考えており、もし獣族プッシュの時期と前後した場合には余計な制約がついていた可能性もあるので、そういった意味でもかなり奇跡的な出来栄えだと感じています。
(※ とってつけたような「このターン、自分は獣族モンスターしか特殊召喚できない。」は想像に難くありません。)

※ 作業時にはヘルメットの紐をしっかり締めましょう。

ファンの多いカードをできるだけ傷つけず、できるだけ全盛期に近い形で復帰させてくれたことには感謝しかありません。エラッタ復帰のあるべき姿です。

2-14.《ゴヨウ・ガーディアン》

【エラッタ前のテキスト】
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
そのモンスターを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する事ができる。

【エラッタ後のテキスト】
地属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。
そのモンスターを自分フィールドに守備表示で特殊召喚する。

<総評>
失敗
です。
後述する《ブリューナク》と共に汎用レベル6シンクロの双璧をなしていた名カードですが、エラッタによりそもそも汎用シンクロという枠組みから外れてしまった残念カードです。

青春

《ゴヨウ・ガーディアン》を取り巻く事情はやや複雑です。
登場当初のこのカードは、大半のモンスターを一方的に戦闘破壊しつつアドバンテージを得る非常に凶悪な性能を持っており、遊戯王OCGというゲームが戦闘によって定義されている間は最強格の1枚でした。
環境に「28ライン」を作り上げ、無防備に《スターダスト・ドラゴン》を立たせておくのは悪手であるという常識を浸透させたのもこのカードです。

よく奪われてました

先述の通り、素材指定がなかったことから、どのデッキからも登場し得るものという前提でゲームが進行していました。「そういうもの」と割り切られていたので特別ヘイトを集めていた印象はありませんが、定石に影響を与えるほどのパワーカードだったことは間違いなく、シンクロ期終盤の2011年3月には自らがお縄につくことになりました。
当時はよくわからないタイミングの禁止指定だと思いましたが、「エクシーズモンスターの登場を控え、エクストラデッキの固定枠を少しでも解消しようとした」と考えれば自然でしょう。

一生恨まれてそう

……《ゴヨウ》には、そうした活躍とは別の逸話があります。
有名な話ですが、直前に登場した《大地の騎士ガイアナイト》の上位互換になってしまっています。当初こそ《ガイアナイト》をバカにする声が大きかったのですが、冷静に考えると《ゴヨウ》の方が間違えているのです。

なかよくしようね

《ガイアナイト》の登場が示したのは、汎用レベル6シンクロの攻撃力は2600が基準値である、という不文律でした。
上限がバニラの《ガイアナイト》で、ここに効果がつくと攻撃力にマイナス査定がかかるのだろう、と多くのプレイヤーが納得したはずです。ちょうどレベル6通常モンスター《フロストザウルス》と同じであり、直感的に理解しやすい数値でもありました。

ご苦労様です

……その不文律が1か月でぶっ壊されたのです。
何で効果持ちで攻撃力2800もあるんでしょうか、このカード?

もちろん、シンクロモンスターはまだ新しいカード群でしたから、「勝手に勘違いしているだけで、実は《ガイアナイト》が弱すぎるだけなのかな?」と思い直しもしましたが、その後のカードプールを見ても結局《ガイアナイト》基準説はおおむね正しかったのです。不自然に《ゴヨウ》の攻撃力が高すぎるだけだったんですよね。
言語化が難しいのですが、攻撃力2000を超える下級モンスターがメリット効果だけを持っているような気持ち悪さがあり、実際の活躍とは別のところでルールを逸脱しているカードという印象がありました。

このカードが長年禁止カードであり続けたのも、エラッタが必要だと判断されたのも、このデザインの不文律を破ってしまっている事情込みなのではないかと邪推しています。
この事情を無視すれば、シンクロモンスターを搭載するデッキが限られ、真っ当に戦闘を行うデッキも減少の一途を辿っていたので、遅くとも2014年頃にはノーエラッタで返せるカードだったとは思いますが……。

汎用じゃなくなっちゃった……

冒頭にある通り、汎用シンクロの枠組みから外すエラッタが行われ、地属性チューナー縛りがついてしまいました。
先の事情があるのでまるっきり理解できないエラッタというわけでもないのですが、カード単体の性能としては型落ちもいいところで、完全に不要なエラッタでした。エラッタの必要性・実用性については残念ながら×です。効果そのものが変わったわけではないので、原型は温情込みで△といったところでしょうか。

専用チューナーみたいな顔してるよ

ちなみに、たぶん地属性チューナー縛りがついたのは、作中で《ジュッテ・ナイト》からシンクロ召喚されることが多かったためだと思われます。実際は《トラパート》も同じくらい使われてた印象なのですが……。

置いてかないで~

2-15.《氷結界の龍 ブリューナク》

【エラッタ前のテキスト】
手札を任意の枚数墓地へ捨て、
捨てた数だけフィールド上のカードを選択して発動できる。
選択したカードを持ち主の手札に戻す。

【エラッタ後のテキスト】
「氷結界の龍 ブリューナク」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):手札を任意の枚数墓地へ捨て、捨てた数だけ相手フィールドのカードを対象として発動できる。
そのカードを持ち主の手札に戻す。

<総評>
及第点
です。
先の《ゴヨウ・ガーディアン》と並ぶ最強のシンクロモンスターで、愚直に戦闘だけを行っていたあちらとは対照的に、フェアに使ってもアンフェアに使っても強すぎるバグのようなカードでした。
このカードについて振り返るなら、その「フェアな使い方」「アンフェアな使い方」に分けて考えた方がわかりやすいです。

※ 当時制限でした

まず「フェア」な使い方ですが、見た目通りの除去役シンクロとして重宝されていました。さながら《スナイプストーカー》がエクストラデッキに置けるようなもので、シンクロ召喚できるデッキ=相手の盤面のカードを自由に触れるデッキの図式を成立させたわけです。《ゴヨウ》同様に、存在そのものがプレイングの定石に影響を与えたカードであり、ある意味では《アクセスコード・トーカー》の遠い先祖と呼んでもよいでしょう。

なんか言えや

……とはいえ、シンクロ初期のカードです。
《アクセスコード》と比べるのはさすがに酷で、当時の価値観で図ってもメチャクチャ燃費が悪いです。

  • このカードをシンクロ召喚する時点でアド損する。

  • 除去したいカードの数だけ手札を捨てなくてはいけない。

  • 除去が破壊ではなくバウンスなので、エクストラモンスターに対して以外はアド損する。

基本的に、どう運用しても使った側が損するようにできていました。
突破口を開けるフィニッシュ用のカードとしては重宝されましたが、「何を出しても《ブリュ》にすぐバウンスされるからクソ!」とヘイトを集めていたわけではないことは注釈しておきます。シンクロ全盛期こそ「フェア」な《ブリューナク》を見ない日はありませんでしたが、エクシーズ期に入ると徐々に衰退し、このカードが禁止指定される2012年9月にはあまり見かけなくなっていたのが正直なところでしょう。

もう帰ってこれないねえ

ではなぜ禁止指定に至ったかというと、「アンフェア」なもうひとつの顔ゆえでしょう。
《ブリューナク》の効果にはターン制限がありません。1ターンに何度でも効果を起動でき、さらには自分のカードも戻すことが可能です。
登場当初に限っても《早すぎた埋葬》を延々と使い回すことが可能で、明らかに存在してはいけない挙動を見せていました。
(※ 案の定、《ブリューナク》登場直後の2008年9月に《早すぎた埋葬》は禁止指定されることになります。もともと《アームズ・ホール》の登場で怪しくなっていたところにこのカードがトドメを刺した格好です。)

これもダメだった

古今東西、自分のカードを無制限にバウンスできるカードはだいたいロクなことをしません。《ブリューナク》も当然例外ではなく、実用性のあるものからそうでないものまで、様々なループコンボの中核となりました。
《アクセスコード・トーカー》の先祖であるように見せかけてその実、《ファイアウォール・ドラゴン》に繋がる要素を持っていたとも言えるのです。

ちっす!

また、禁止直前の時期に限って言えば、「コストで手札を捨てる水属性モンスター」であることも問題視されていました。
ピンポイントで「水属性モンスターのコストで墓地に送られた時」という条件を持つ「海皇」の効果が発動できてしまい、当時の環境トップであった【海皇水精鱗】におけるバグとして機能してしまっていたからです。

捨ててください~

これらの「アンフェア」要素が複合した結果、エクシーズ期中期に禁止指定を下されることとなりました。もはや真っ当なエクストラデッキは真っ黒に染まっている時期で、《ブリュ》を採用していたデッキは大なり小なり悪事に加担していたので、このカードの禁止をフェアな視点から悲しんだプレイヤーはほとんどいなかった印象です。

ただいま

エラッタに際しては大方の予想通り、「フェア」な要素は許すが「アンフェア」な使い方はさせない、という方向の調整がされることになりました。

  • 名称ターン1制限の追加

  • バウンス対象が相手のカードに限定

「アンフェア」をそのまま許すわけにもいかず、エラッタの必要性は〇です。また、「フェア」な使い道は完全再現できるというところで、原型にも△の評価は与えていいでしょう。

オレもエラッタされちゃったよ

実用性は……怪しいところで、×寄りの△です。
名称に助けられる形で【氷結界】では採用され続けていますが、一般的なデッキでの採用事例はなく、ほとんど牙を抜かれてしまった状態です。
もっとも、「フェア」なこのカードが型落ち状態になっているのは別にこのカードそのものが悪いわけではないので、総合的に見れば及第点の評価がちょうどいいのかもしれません。

2-16.《黒き森のウィッチ》

【エラッタ前のテキスト】
このカードがフィールド上から墓地に送られた時、
自分のデッキから守備力1500以下のモンスター1体を選択し、
お互いに確認して手札に加える。
その後デッキをシャッフルする。

【エラッタ後のテキスト】
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動する。
デッキから守備力1500以下のモンスター1体を手札に加える。
このターン、自分はこの効果で手札に加えたカード及びその同名カードの発動ができない。

<総評>
成功
です。
先に復帰していた《クリッター》と双璧を成すサーチャーの代表格であり、あちらが大丈夫だったのでこれも同じ手法で解除されました。
詳細や評価点は《クリッター》とほぼ同じであり、そちらの項をご参照ください。総じて良エラッタの範疇であり、必要性・原型・実用性のどれで見ても〇の成功カードではあるのですが、この項では《クリッター》との差異を中心に解説します。

なかよしだよ

エラッタ前《クリッター》2013年まで長生きしたカードでしたが、このカードは2004年に現役引退をしてから一度も制限復帰しませんでした。
対のように扱われているこの二者ですが、現役期間には10年近くの差があるわけです。この事実からもわかるように、かつては《クリッター》の上位互換のように恐れられていたのがこのカードです。

ジジイ垂涎のレアカードぢゃ👴

理由は簡単で、参照するのが守備力であるゆえに、攻撃力の高い上級モンスターをサーチ範囲に含んでしまっていたからです。
《クリッター》は基本的に下級モンスターしかサーチできませんが、《ウィッチ》はゲームを大きく動かすカードにも触ることが可能で、ある意味でゲーム高速化の遠因となり得ます。このカード自身が《キラー・トマト》でリクルートできることも含め、当時の価値観でこの再現性の高さは許されないものでした。
禁止時期が早すぎて共存したことはありませんが、《ダーク・アームド・ドラゴン》が引っかかってしまうことも含めて絶対ダメと言われていたカードで、「《クリッター》はギリギリ許せるけど《ウィッチ》はアカン」というのが当時のプレイヤーの共通認識だったのではないでしょうか。

ボチヤミサンタイ

……しかしこれ、現代のプレイヤーにはあまりピンと来ない話ではないでしょうか。それも当然で、あくまで上級モンスターをメインデッキに入れなければいけなかった時代の話だからです。
現代遊戯王はご存知の通りエクストラゲーと化して久しく、メインデッキには小粒しか入っていないがエクストラデッキで打点を担保している、といった構築が珍しくありません。こうなってしまうと《クリッター》《ウィッチ》に優劣の差はほぼなく、なんなら中途半端に守備力の高い下級モンスターをサーチできないことから《クリッター》に軍配が上がるケースも増えてきます。

わたしはクリッターくんについていくわ

よって、現代における《クリッター》《ウィッチ》相互互換と言って差し支えありません。
こちらも「クリッターアルミラージ」と同じ要領で「ウィッチアルテミス」による即効性を得ているのですが、あちらにおける《神樹のパラディオン》のようなしっくり来るサーチ先を得られておらず、目立った活躍はまだ見られていないというのが正直なところです。
包み隠さず言えば、《クリッター》に少し劣ってしまっているのが実情ではないでしょうか。

マーカー上向きなのもネック

もっとも、《クリッター》同様のポテンシャルを秘めているカードであることは間違いなく、こちらだけ評価を落とすのもおかしな話なので期待も込みでエラッタ成功判定とします。むこう何年かは見守りましょう。
個人的には、《ウィッチ》→《アルテミス》→《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》なんかは制圧の添え物としていい線だと思っており、展開のついでに《ウィッチ》を特殊召喚できるデッキが生まれれば検討されるのではと期待していますが、果たして……。

これだけ出しても「で?」感はある

2-17.《D-HERO ディスクガイ》

【エラッタ前のテキスト】
このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

【エラッタ後のテキスト】
このカード名の効果はデュエル中に1度しか使用できない。
このカードは墓地へ送られたターンには墓地からの特殊召喚はできない。
(1):このカードが墓地からの特殊召喚に成功した場合に発動できる。
自分はデッキから2枚ドローする。

<総評>
及第点
です。
あらゆる蘇生カードが《強欲な壺》と化す狂気のドローエンジンです。その魅力的な性能から専用デッキ【ディスクライダー】が考案され、2007年~2008年の環境において大きな存在感を示しました。最終的にはあの【ドグマブレード】で活躍し、2008年9月に禁止指定されることになります。
(※ 余談ですが、高額なゲーム付属カード(5000円~)であるにもかかわらず1年あまりで禁止指定されたことについては物議を醸し、「金返せ」「買ったやつざまぁ」が半々くらいの割合で聞こえました。

エラッタの必要性は当然〇でしたが、かなり厳重に危険性を削がれることとなります。

ただいま~
  • デュエル中1度の制限の追加

  • 強制効果→任意効果に変更

  • 墓地に送られたターンには特殊召喚できない制約の追加

正直に言えば、初見の感想は「そこまでしなくてよくない?」でした。
名称ターン1制限だけでも返せるかな、と思っていたので、想像よりもふた周り厳しい制約がつけられての復帰には驚きましたし、ぶっちゃけガッカリしました。
もっとも、時間差のある効果デザインはある意味D-HEROらしいものでしたし、【ドグマブレード】を除けば「墓地に落ちるターン」と「蘇生されるターン」が別なことも多かったので、そういう意味で原型が×とも言えず△に留めています。

あっ デスフェニじゃなくてドミネイトガイ出します…

そして、意外なことに、ここまで搾りカス状態にされてもちゃんと実用性は残っていたんですよね。
さすがに一般的なデッキのドローソースとして採用されることはなくなりましたが、【D-HERO】においては十分採用圏内のカードでした。
《フュージョン・デステニー》などで墓地に叩き落しておくことで疑似的にリソースを蓄えることができ、必要なタイミングで蘇生してドローソースに変換することが可能です。
というか、「《D-HERO ダークエンジェル》を採用するくらいならこっちの方がよくない?」状態であり、半ば消去法ではありますが一時期必須カードの扱いを受けていました。
(※ まだ《V・HERO ファリス》が登場する前の、HEROデッキがアベンジャーズ化する前の話です。)

どっち派?

また、リンク値を伸ばす目的で《聖騎士の追想 イゾルデ》を使う場合、レベル1戦士族モンスターの選択肢としても検討されました。今なら《リナルド》一択だとは思いますが、当時はもっともクセのない選択肢として歓迎された形です。

今ならオレでいいよ

その他、マニアックな話にはなりますが、マスターデュエルにおける《D-HERO ディバインガイ》禁止後にそのリペアとして検討されたこともありました。結局あまり浸透せず、リペア案は「ダッシュディナイアル」「ディアボディナイアル」のどちらかに収束したものの、禁止カードのリペアになり得るだけのポテンシャルはあったということです。

よく考えたらこれの相互互換に近い

以上のように、地味ながらも意外と使い道が残っており、総じてザ・及第点の出来です。
ちょっと弱体化させすぎでは? とは未だに思うものの、独自のステータスに支えられたニッチな需要がある1枚です。もう少し査定が甘かった世界線も見てみたいですが、このくらいの調整が幸せなのかもしれません。
ちなみに、エラッタ時に1度再録されたきりでその後は絶版になっており、未だに微妙に値が張るカードのままです。レアコレ系の再録パックの隅っこにでもこっそり入れてほしいと願っています……。

2-18.《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》

【エラッタ前のテキスト】
(1):このカードは自分フィールドの表側表示のドラゴン族モンスター1体を除外し、
手札から特殊召喚できる。
(2):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。
自分の手札・墓地から「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」以外の
ドラゴン族モンスター1体を選んで特殊召喚する。

【エラッタ後のテキスト】
このカード名の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードは自分フィールドの表側表示のドラゴン族モンスター1体を除外し、
手札から特殊召喚できる。
(2):自分メインフェイズに発動できる。
自分の手札・墓地から「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」以外の
ドラゴン族モンスター1体を選んで特殊召喚する。

<総評>
成功
です。
《レダメ》の愛称で長年親しまれる名カードで、基盤すらなかったドラゴン族デッキを黎明期から支えた英雄的な1枚でもあります。
思い入れのある人も多く、禁止指定の際は別れを惜しむ声が各所で聞かれたものでしたが、100点満点のエラッタで現世への帰還を果たしました。

かっこいい

せっかくですから思い出話をします。
このカードの誕生は2007年と古く、シンクロ召喚の登場以前です。《邪帝ガイウス》誕生の少し前と言うと、環境のパワーラインがおおむね想像できるのではないでしょうか。
そんな状況において、召喚権なし・疑似1体生け贄で出てくる2800打点というだけで優秀だったのに、さらに毎ターン好きなドラゴンを踏み倒せる《レダメ》は嘘のように強力なモンスターでした。
強力な最上級ドラゴンが次々と並ぶ絵面も素晴らしく、このカードを主軸にしたドラゴン族デッキを組むことは少年時代の憧れだったものです。

1000円 2000円 3000円

……憧れは憧れのまま終わりました。
今では信じられませんが、当時のドラゴン族は非常に選択肢が少なく、なんとか "ドラゴン染め" をしようとすると高額プロモカードまみれになる状態でした。《レダメ》自身も3000円の大台に乗っていましたし、こんなのおこづかいで集められるわけがないんですよね。
(※ あまり大きな声では言えませんが、そんな背景もあって非公式CGIでは大人気のデッキでした。)

ここに帰りたい

また、色眼鏡を外して見ると、この時点のドラゴン族を寄せ集めても烏合の衆でしかなく、はっきり言って「《レダメ》以外はジャンクデッキ」のような形になりがちでした。
(※ 特に下級モンスターの貧弱さは問題で、あれほど欲しかった《ブリザード・ドラゴン》もドラゴンであることを抜きにすれば数世代前のスペックでした。)

結局、"《レダメ》軸のドラゴン族デッキ" と呼べるものが環境に現れるのは遥か未来、【カオスドラゴン】の成立時期(2011年〜2012年)を待たなくてはなりません。生まれながらのパワーカードでありながら、実はかなり長い下積み時代を経験したカードなのです。

ホルアクティの応募ハガキが入ってたよ

ただ、《レダメ》の直接的なブレイクスルーの原因は【カオスドラゴン】ではなく、おおむね同時期に現れた【聖刻】の方でしょう。

3000円(※全盛期)

《聖刻龍王-アトゥムス》《レダメ》を直接デッキから引っ張り出すことができ、それまで素引き前提のパワーカードだった《レダメ》コンボパーツとしての道を示した1枚です。

【聖刻】の展開力を持ってすれば2体の《アトゥムス》≒2体の《レダメ》を並べることも容易で、《グスタフ・マックス》を現実的なフィニッシャーとして迎え入れることが可能でした。
《グスタフ・マックス》3000+2000に加え、《アトゥムス》に重ねた《ガイアドラグーン》2600を合わせて8600打点を叩き出すコンボは、当時の環境を定義する1ショットのひとつでした。
(※ いわゆる「レダメレダメグスタフオラァ」です。オラァはどこから?

よく見た光景

この流行がトドメになったか、あるいは【カオスドラゴン】への規制も兼ねてか、《レダメ》2012年9月に制限カード入りを果たすこととなりました。そのポテンシャルが5年越しにようやく評価された格好であり、感慨深かった古参プレイヤーも多いのではないでしょうか。

その後の《レダメ》「ドラゴン族デッキにおけるスーパーサブ」として採用され続けましたが、さすがに1枚になったこのカードをコンセプトレベルで頼ることは難しく、表立った活躍を見せることはなくなりました。
かの全盛期【征竜】への採用実績も持ちますが、あくまでちょっとした上振れ要素でしかなく、この時点の《レダメ》を禁止にすべきだと考えた人は少ないでしょう。

《レダメ》の再ブレイクは2018年、【守護竜】の登場によって訪れます。

ゴッドリンク

《エルピィ》《アトゥムス》同様にデッキから直接《レダメ》を引っ張り出す効果を持っており、《ピスティ》はその《レダメ》を釣り上げて再利用できる効果を備えています。
驚くべきはその要求値の低さです。効果の起動にひと工夫要るデザインにはなっていますが、あらゆる下級ドラゴンが「エルピス」を介して《レダメ》に2回触れるようになったのは事件と言わざるを得ません。
種族単位の強烈な結びつきが発生し、ここに初期型【ドラゴンリンク】が誕生しました。
(※ かの凶悪な【ガンドラ1キル】もこれを基盤にしており、この時点で両者はあまり区別されていませんでした。)

レダメがいなくても1キルできちゃうんだけどね

この「エルピス」がトドメとなり、《レダメ》2019年4月をもって禁止カードに指定されました。
仕方のないことだとは思いつつ、歴史あるこのカードの呆気ない幕切れを残念に感じた人も多かったのではないでしょうか。
また、この時点では《破滅竜ガンドラX》の方が主犯格とする見方もあり、そちらの身代わり規制ではないかと不満を漏らす人も少なくなかった印象です。
(※ Vジャンプの誌面には《ガンドラX》が原因と明記されており、ちょっと燃えました。🔥)

ガンドラは再録されたばっかりだったからね

で、ここからが面白いところで、なんと《レダメ》2020年4月にエラッタ復帰を果たしています。禁止からエラッタ復帰までわずか1年、ぶっちぎりの最速記録です。
しかも復帰と同時にイラスト違いをもらうという破格の好待遇で舞い戻ってきました。

ただいまー

この後出てきますが、あの《ファイアウォール・ドラゴン》ですらVRAINS放送期間中の復帰は叶いませんでしたから、《レダメ》の処遇がいかに異例か伝わると思います。
推測にはなりますが、古くからファンの多いカードであることもあり、《ガンドラX》の身代わりにしたことの補填を兼ねた対応だったのかもしれません。
(※ ちなみに当の《ガンドラX》2019年7月で禁止カードに指定されており、このタイミングで既に「じゃあ《レダメ》返せよ」と漏らす声は多く聞かれました。その手の意見はユーザーアンケート等を介して届いていたのではないでしょうか。)

エラッタ内容もシンプルで、自己特殊召喚および効果の使用に名称ターン1制限がついたのみです。自己特殊召喚の方には制約不要だったのでは? とは思いますが、これも粗探しの部類で、総じて理想的な調整と言えるでしょう。
また、エラッタ以上に印象的だったのは、同じ改訂で《エルピィ》が禁止指定されており、事実上《エルピィ》との入れ替わり復帰になっている点です。

じゃあな

これもかなり思い切った選択です。
カードゲームにおいて、古いカードが新しいカードの犠牲になるのは世の常です。《レダメ》も一度は《エルピィ》の犠牲となってその道を辿りかけたのに、結局《レダメ》の方が大事だと判断されこのような改訂が下されるわけです。
2018年出身の《エルピィ》より、2007年からいる《レダメ》を守るべきだと判断されたのです。このカードの重要性・特異性が伺えます。

おかえりアニキ!

以上、紆余曲折ありましたが、必要性・原型・実用性の3点でケチのつけようがない満点エラッタであることは間違いないでしょう。
復帰後のこのカードは暴れることこそなくなりましたが、《黒鋼竜》との組み合わせで新生【ドラゴンリンク】の初動のひとつとして活躍しています。
きちんと第二の人生を歩む形になっており、その点でも高評価です。

2-19.《処刑人-マキュラ》

【エラッタ前のテキスト】
このカードが墓地へ送られたターン、
このカードの持ち主は手札から罠カードを発動する事ができる。

【エラッタ後のテキスト】
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがモンスターゾーンから墓地へ送られた場合に発動できる。
このターンに1度だけ、自分は罠カードを手札から発動できる。

<総評>
失敗
です。
元永久禁止カードが見るも無残な姿になって帰ってきました。

レリほしい

まず、エラッタの必要性に関しては当然の〇です。
墓地に落ちるだけで罠カードのタイムラグが消滅するという、《王家の神殿》同様のルールに喧嘩を売る効果を持っています。しかも効果分類が誘発効果ではなく、墓地に送られた瞬間にチェーンブロックを作らず適用される特殊効果という意味不明な優遇がされていました。止める手段が一切ありません。
モンスターゆえに取り回しがよく、サーチ手段に乏しい《王家の神殿》と比較して墓地に落とす手段が豊富に存在することもあり、深く考えなくても絶対ダメなカードの1枚でした。
先立って復帰していた《王家の神殿》にならい、「もしエラッタされるのなら1回の発動制限がつくだろう」とは多くのプレイヤーに予想されていたものです。
(※ もしそうなるなら、《終末の騎士》《おろかな埋葬》などで起動できる分、サーチの難しい《王家の神殿》よりはコンセプトに据えやすいだろうと期待されていました。)

スタンバイオッケーだぜ

ところが現実は非情であり、それ以上の余計な縛りがついてきました。

  • 効果分類が誘発効果に変更

  • 罠カードを発動できる回数が1回に限定

  • モンスターゾーンから墓地に送られないと効果が発動しない

……上2つはいいでしょう。予想通りです。
3番目のガッカリ具合が凄まじく、デッキや手札から墓地に送って利用することができなくなりました。わざわざこれをフィールドに出し、しかも何らかの方法で墓地に送ってできることが「手札から罠を1回だけ使える」だけです。まったく割に合っていません。

マキュラさんは乗れません

しかも「モンスターゾーン」と明記されているため、当時無制限カードだった《ユニオン・キャリアー》で起動することもできません。
(※ 事実上、このカードを狙い撃ちしたような制約です。)
そんなことをしなくても弱すぎるのに、変なところで丁寧に調整されていることを腹立たしく思った人も多いのではないでしょうか。

屈指のデフレ弾

……なぜここまで弱くされているのか、真剣に考えるだけ無駄な気もしますが、エラッタ版の出自である闇属性デュエリストパック「冥闇のデュエリスト編」にも問題がありそうです。
というのも、「闇属性」「マリク・イシュタールの使用カード」「OCG化されているもの」というすべての条件を満たすカードが限られており、再録カードの選定に苦労した跡が見て取れるのです。アニメ出禁《万力魔神バイサー・デス》《バイサー・ショック》も露骨に除外されており、《マキュラ》を候補に含まざるを得ない状況だったのではないでしょうか。
(※ 《ニュードリュア》《ボーガニアン》でよかったのではと思いますし、どうせ表紙が闇属性ではないのだから闇にこだわらず、地味に需要がありそうな《レクンガ》でも入れておけばよかったと思うのですが……。)

遊びたい

真偽のほどは不明ですが、デフレ弾で無理やり再録されることになったためパワーを落とした、という推理はある程度筋が通るのではないでしょうか。もしそうなら、エラッタ復帰という行為の重みをもう少し考えてほしかったのが本音です。どんなカードにもファンはいます。使えないレベルに弱体化して放逐すればいいわけではないのです。

2-20.《ファイアウォール・ドラゴン》

【エラッタ前のテキスト】
(1):このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、
このカードと相互リンクしているモンスターの数まで、
自分または相手の、フィールド・墓地のモンスターを対象として発動できる。
そのモンスターを持ち主の手札に戻す。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):このカードのリンク先のモンスターが、
戦闘で破壊された場合、または墓地へ送られた場合に発動できる。
手札からモンスター1体を特殊召喚する。

【エラッタ後のテキスト】
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、
このカードの相互リンク先のモンスターの数まで、
自分または相手の、フィールド・墓地のモンスターを対象として発動できる。
そのモンスターを持ち主の手札に戻す。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):このカードのリンク先のモンスターが、
戦闘で破壊された場合、または墓地へ送られた場合に発動できる。
手札からサイバース族モンスター1体を特殊召喚する。

<総評>
成功
です。
主人公の切り札であるにも関わらず禁止指定された伝説のカードであり、ターン制限のない2つの効果により宇宙を創造していた化け物です。
このカードの存在下ではあらゆるドリームコンボが現実のものとなり、先攻1キルからエクストラリンクに至るまで数々の邪悪なルートを実用化させてきました。そのひとつひとつをつぶさに取り上げるには紙幅が足りませんが、近年これほど嫌われた禁止カードもないだろうと思います。

そうだそうだ

エラッタにおいては、至極当然に以下2つの改訂が加えられました。

  • 両方の効果に名称ターン1制限が追加

  • ②の効果で特殊召喚できるのをサイバース族に限定

これにより、真っ当にデザイン意図は果たせる形になりつつ、当初から問題視されていた危険性は除去されました。いわゆる宇宙の創造🌌はできなくなりましたが、「展開効果+妨害効果」の強力パッケージはそのまま残っており、現在では【サイバース族】系統の切り札として健全に活躍しています。
必要性・原型・実用性の3部門で堂々の〇判定としてよいでしょう。
(※ なお、この手のカードで判断基準にすべき「アニメでの活躍を再現できるかどうか」は……。そもそもアニメで4回しか召喚されていないので判断しかねる、というのが正直なところです。本当に主人公の切り札なんでしょうか、このカード?)

デザインはいいんだけどね

……エラッタ復帰の中ではトップクラスに活躍しているカードであり、総合的に見て成功エラッタなのは間違いないのです。
ないのですが、そう言い切ろうとすると妙にモヤモヤするのはなんでしょうか。「最初からそうしておけ」としか言えないからでしょうか?

のんきに3種類も作ってるんじゃないよ

というのもこのカード、「うっかり間違えちゃった」とか「見通しが甘かった」では済まされないデザインミスで、誰がどう見てもすぐ気づきそうなターン1の書き忘れでしかないんですよね。
実際、ただターン1を書き足したようなエラッタで良カードになったことを考えると、エラッタ前のこのカードが不良品だったとしか思えず、それに付き合わされた2年間は何だったのかという気持ちにもなります。

百歩譲って、世の中に出てしまったところまではしょうがないとしても、早々にミスを認めてエラッタ宣言をすればよかっただけなのです。
なぜ禁止を経由しなければエラッタできなかったのか、それもアニメの放送終了後になってしまったのか……。様々な大人の事情が絡んでいそうなのでそろそろ口を噤みますが、いち視聴者・プレイヤーとしてはどうしても落胆を禁じ得ません。

2-21.《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》

【エラッタ前のテキスト】
1ターンに1度、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる。
この効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。
また、1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。
フィールド上のフィールド魔法カードを全て破壊し、
自分は1000ライフポイント回復する。
その後、デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える事ができる。

【エラッタ後のテキスト】
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分メインフェイズに発動できる。
手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。
この効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。
(2):自分メインフェイズに発動できる。
フィールドゾーンのカードを全て破壊し、自分は1000LP回復する。
その後、破壊したカードとはカード名が異なるフィールド魔法カード1枚をデッキから手札に加える事ができる。

<総評>
成功
です。
当初のこのカードは「シグナー龍最弱」「何がしたいのかわからないカード」とバカにされていましたが、フィールド魔法の充実により徐々に頭角を現し、2013年には地雷デッキ【神風1キル】の中核として活躍を見せます。
その後、《テラ・フォーミング》が制限カードになるほどフィールド魔法がインフレした2017年において、さながら「エクストラに置いておける《テラ・フォーミング》」のような活躍を見せることになったため、一発で禁止カードに指定されるという経緯を辿りました。
使い道なし→コンボには使える→ふつうに使っても強すぎる、と評価が3段階に変遷したカードであり、遊戯王OCG全体を見渡しても類を見ないシンデレラカードです。

その通りになっちまった

エラッタにおいては主にコンボパーツとしての危険性が除去され、以下のように生まれ変わりました。

  • 両方の効果に名称ターン1制限が追加

  • 破壊したカードと同名のカードをサーチできない制約が追加

初見の感想は、「え、それでいいんだ」でした。
確かにこのカード、【神風1キル】のようなコンボデッキで暴れた前歴はありますが、直接の禁止理由は「フェアデッキにおける《テラ・フォーミング》の役割を果たしてしまうこと」でした。その運用には手が入らないままの解除を、「本当に大丈夫かなあ」と心配したプレイヤーは多いのではないでしょうか。
(※ 同名サーチ不可については、そもそもサーチしたいフィールド魔法が制限カードであること、そうでなくても名称ターン1制限がついていることから意味をなさず、おおむね無視できる制約でした。)

お助けします!

結論から言うと、ちゃんと使われましたが、意外と大丈夫でした。
主に【ティアラメンツ】系統で《レボリューション・シンクロン》《亡龍の戦慄-デストルドー》からシンクロ召喚され、《壱世壊-ペルレイノ》《六世壊-パライゾス》をスイッチする役割を与えられました。
とりわけ《レボリューション・シンクロン》とは《ヴィサス=アムリターラ》がシンクロ召喚できる点でも強くシナジーし、一種の出張セットとして一時期は持て囃されましたが、このギミック自体が壊れているわけではなく、上振れ時の貫通札としてのみ用いられることから許容された印象です。

禁止指定の遠因

エラッタは有効に作用し、怪しいループコンボに使われることもなくなりましたが使い道は残る形になったので、総じて成功エラッタと言えます。
当初こそ【ティアラメンツ】の一員になったことから親の仇のように叩く人もいましたが……。

2-22.《破滅竜ガンドラX》

【エラッタ前のテキスト】
(1):このカードが手札からの召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。
このカード以外のフィールドのモンスターを全て破壊し、
破壊したモンスターの内、攻撃力が一番高いモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。
このカードの攻撃力は、この効果で相手に与えたダメージと同じ数値になる。

【エラッタ後のテキスト】
(1):このカードが手札から召喚・特殊召喚した時に発動できる。
フィールドの他のモンスターを全て破壊し、
破壊したモンスターの内、元々の攻撃力が一番高いモンスターのその数値分のダメージを相手に与える。
このカードの攻撃力は、この効果で相手に与えたダメージと同じ数値になる。

<総評>
及第点
です。
【ガンドラ1キル】で悪目立ちしたこのカードですが、バーンの参照値が「元々の攻撃力」になるという至極真っ当なエラッタにより復帰しました。《アークロード・パラディオン》もひと安心です。
(※ 有名な話ですが、TCGでは最初から「元々の攻撃力」を参照していたので規制対象にすらならず、OCGもそれに合わせたという経緯です。)

ガンドラにぶっ飛ばされていた人✊

……こう言ってしまっては何なのですが、このカードについてはあまり語ることがありません。
もともと「攻撃力8000のモンスターを飛ばしたら1キルできるね」と冗談で言われており、《アークロード・パラディオン》【ドラゴンリンク】ギミックの登場により突然それが実現、環境に急浮上したという経緯があるからです。それまで環境とは無縁のファンカードでしたから、これといったストーリーがないのが正直なところです。

帰ってきてよかったね

そのため、エラッタにより無害になって帰ってきても特に採用先がなく、喜んだのは《ギガ・レイズ》だけというところです。実用性は温情込みで△と言ったところでしょう。

かっこいい

原型については……残念ながら△とさせていただきます。
原作では《ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン》を破壊してバーンを発生させていたのですが、残念ながら元々の攻撃力が0であるため再現不能になりました。経緯が経緯だけに仕方ないことではあるのですが、印象的なシーンの再現ができなくなったことは残念なところです。

ほそい

ちなみに、今の今まで間違えていたのですが、このカード《破壊竜》じゃなくて《破滅竜》らしいです。紛らわしい。

2-23.《サモン・ソーサレス》

【エラッタ前のテキスト】
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがリンク召喚に成功した場合に発動できる。
手札からモンスター1体を、このカードのリンク先となる相手フィールドに守備表示で特殊召喚する。
(2):このカードのリンク先の表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターと同じ種族のモンスター1体をデッキから選び、
このカードのリンク先となる自分・相手フィールドに守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

【エラッタ後のテキスト】
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがL召喚した場合に発動できる。
手札からモンスター1体を効果を無効にして、
このカードのリンク先となる相手フィールドに守備表示で特殊召喚する。
その後、この効果で特殊召喚したモンスターと同じ種族のモンスター1体を
デッキから効果を無効にして守備表示で特殊召喚できる。
この効果でデッキから特殊召喚したターン、
自分はデッキから特殊召喚したそのモンスターと元々の種族が同じモンスターしか特殊召喚できない。

<総評>
及第点
です。
リンク初期特有のガバガバカードであり、無条件でリンク値を伸ばすバグ効果を備えていたほか、条件を整えればデッキのあらゆるモンスターにアクセスできるメチャクチャな性能をしていました。
当然こんなのが許されるわけもなく、書籍付属カードというバリアを貫通して1年未満で禁止カードにぶち込まれます。そのまま黒歴史認定されているものと思っていたので、エラッタ復帰の対象に選ばれた時はそれなりに驚きました。

何度見てもおかしい

そんなこのカードのエラッタ内容ですが、かなり特殊です。

  • 2つあった効果(誘発効果・起動効果)が一連の誘発効果に統合。旧誘発効果部分で特殊召喚したモンスターを参照し、旧起動効果と同様の処理を行うようになった。

  • 旧誘発効果部分によって相手フィールドに特殊召喚されるモンスターの効果が無効化されるようになった。

  • 旧起動効果部分でデッキからモンスターを特殊召喚した場合、ターン中、それと同種族のモンスターしか特殊召喚できない制約がかかるようになった。

……パッと見、何が書いてあるかよくわからないと思います。
変更点を箇条書きにまとめるのに無理を感じるレベルで、まるっきり効果が変わっているのはこのカードくらいでしょう。
順番に紐解いていきましょう。

えーっと……??

旧《サモン・ソーサレス》にもリンク召喚時の効果はありました。リンク先の相手フィールドに手札からモンスターを送りつける効果ですね。
これは基本的にアド損なので破棄されることも多かったのですが、新《サモン・ソーサレス》はこの効果を破棄してしまうと続く効果が使用不能になる、という調整が加わっています。非常に独特で斜め上の調整ですが、理には適っていると言えるでしょう。
(※ ついでに《超魔神イド》などの送りつけを防ぐためか、出したモンスターの効果は無効化されるようになりました。)

そして、旧《サモン・ソーサレス》最大の特徴だった、リンク先と同じ種族のモンスターを自由にリクルートする効果にも変更が加わり、送りつけたモンスターの種族を参照するようになりました。
事実上、「リクルートしたい種族のモンスターを手札に持っている状態でリンク召喚しなければいけない」ことになり、かなり使い勝手が変わっています。さらにリクルート後には同種族のモンスターしか特殊召喚できない制約がかかるようになり、自由自在にソリティアに繋げるのは非常に難しくなりました。

うちにおいで

……なんだかゴチャゴチャしていて全容のつかみにくい効果ですが、実用性はちゃんとあります。要は、種族統一の展開デッキに刺すことで、展開途中に好きなモンスター1体のリクルートを加えることができるのです。
【ユベル】(【デビルリンク】)における活用が特に有名で、展開途中で手札に加わる《シャバラ》を送りつけて《シュヤーマ》を引っ張り出すことで最大展開を伸ばすことが可能です。
かなり制約が厳しく癖のある効果なので手放しに〇とは言えないのですが、ひとまず実用性△は与えてよいと言えるでしょう。

本当に同じ人ですか?

……このカードは世にも珍しい、実用性はあるのに原型×なカードです。変更点が多岐に渡っており、2つあった効果が1つにまとめられるなど、今までのエラッタ復帰と比べて異質な点が多すぎます。

なんというか、新《サモン・ソーサレス》自体は決して悪いカードではないのですが、《サモン・ソーサレス》本人を名乗る必要性が一切ないんですよね。ここまで違うともはやリメイクカードであり、エラッタという言葉で済まされる範疇を超えている気がします。

キミ整形した?

総じて及第点の判定をしますが、個人的にこのタイプのエラッタはNOです。なまじ《サモン・ソーサレス》が環境で使われているため今後この手のアグレッシブな整形エラッタが増えそうな気もするのですが、できれば原型という観点からやめてほしいところです。

2-24.《Emヒグルミ》

【エラッタ前のテキスト】
(1):フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。
手札・デッキから「Emヒグルミ」以外の「Em」モンスター1体を特殊召喚する。

【エラッタ後のテキスト】
このカード名のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。
手札・デッキから「Emヒグルミ」以外の「Em」モンスター1体を特殊召喚する。

<総評>
及第点
です。
OCG史上最速で禁止指定されたいわくつきのカードです。ターン1制限のないモンスター効果を活かし、このカードを何度も破壊することをメインエンジンとしたのが悪名高い【EMEm】です。何故かペンデュラム効果の方にだけターン制限がついており、わかりやすいデザインミス、テストプレイ不足として糾弾されました。

間違えちゃった🍓

エラッタに際しては、シンプルにモンスター効果の方にもターン1制限がつきました。それだけです。
「最初からそうしておけばよかったね」としか言えない変更であり、あまり話すことがありません。
効果そのものには変更点がないので原型は〇、実用性で言えば△といったところが妥当でしょう。

じゃあな最強 俺がいない時代に生まれただけの凡夫

……で、実はエラッタの必要性は×です。
おそらくこのカード、2024年当時であればノーエラッタで返しても特に問題ありませんでした。理由はとても簡単で、【EMEm】より強いペンデュラムデッキが存在するからです。パッと思いつくところでも【竜剣士】《超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン》+《爆竜剣士イグニスターP》+《アストログラフ・マジシャン》を使い回してとんでもない盤面を作ってきますが、規制候補に挙がるほどの活躍はしていません。これのエンジン部分をエラッタ前《ヒグルミ》に置き換えても同じことしかできない……というか劣化になってしまうだろういう印象です。

そろそろ場に出して欲しいなァ

ルールの変更やゲーム観の変化を通し、OCGのデッキ構築に求められるものは高い最大値ではなく初動の安定性や省スペース性に様変わりしました。
【ペンデュラム召喚】全般に言えることですが、最大値全振りのデッキが生き抜けるようなゲームではなくなっているのです。近年、ペンデュラムモンスターの規制が次々と緩んでいるのにあまり結果を出せていないのがその証左と言えるでしょう。

オレが何も言われない時代🐒

《ヒグルミ》がこの文脈でノーエラッタ復帰した場合、最初こそ驚かれたでしょうが、特に問題なく空気化していたでしょう。思い切ってそうすればよかったのにな、と思います。

シク似合わないなあ

とはいえ、過去が過去なだけに、万が一にも過ちを繰り返すまいとエラッタに至ったのはわかります。なんというか、あまり冒険したくないのが伝わってきますね。
そういう意味でエラッタ失敗とも言い切れず、総合判定は及第点に留めました。

3.判定まとめ

※《王宮の勅命》は論外です。

24枚の対象カードを、成功7枚・及第点10枚・失敗6枚(論外1枚)に割り振りました。
便宜上《王宮の勅命》を失敗に含めると7:10:7となり、狙ったわけではないのですが均等な比率になります。乱暴にまとめれば成否半々といったところでしょうか。
もう少しどちらかに偏ると思っていましたが、画一的には判断できないエラッタ調整の難しさが表れる結果となりましたね。

それでは、成功判定の中から「BESTエラッタ」を、失敗判定の中から「WORSTエラッタ」を選定しましょう。

3-1.BESTエラッタノミネート(7枚)

人道的になった《破壊輪》
1枚初動と化した《クリッター》
上手に去勢された《レスキューキャット》
これからに期待《黒き森のウィッチ》
アラサーの青春《レダメ》
最初からそうしとけ《ファイアウォール・ドラゴン》
意外と大丈夫だった《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》

3-2.WORSTエラッタノミネート(6枚)

《キラー・スネーク》に似たヘビ🐍
イシズ地獄の遠因《現世と冥界の逆転》
《死のデッキ破壊(任意)ウイルス》
何も奪えない《洗脳-ブレインコントロール》
もはや用済み《ゴヨウ・ガーディアン》
執行不能《処刑人-マキュラ》

4.BEST/WORSTエラッタ 決定!

4-1.BESTエラッタは……!

本記事における「BESTエラッタ」の称号は、《レスキューキャット》に授与します。

サモプリ先生もお祝いしてるにゃあ

「成功」判定はさすがに良カード揃いです。
もはや好みで選んでもいいのではと思いましたが、ある程度の基準を持って選定することにしました。

  • 単純すぎるエラッタを除外する

ほとんど「名称ターン1をつけただけ」のようなカードは、今回の選定からは外しました。
《ファイアウォール》《エンシェント・フェアリー》《レダメ》が該当します。
一応エンタメ系の記事ですから、BESTに選ばれるからには「その手があったか!」と思わせるような要素があった方がよさそうです。

しょうがないね
  • ポテンシャル評価を除外する

今回は《黒き森のウィッチ》を除外します。
便宜上《クリッター》と同格ではありますが、環境での活躍を見ればまだあちらには及ばないのが正直なところです。今後に期待しましょう。

これから頑張るね

さて、3枚まで候補を絞り込みました。

ドキドキ

3枚同時受賞にしたい程度にはどれもいいカードで、エラッタの出来だけで比較しても同格になってしまいそうです。
ここは少し、他の要因にも目を向けましょう。

オレは降りるぜ

悩みましたが《破壊輪》は外すことにします。
他2枚がデッキコンセプトになり得る初動・インフラ系のカードであるのに対し、《破壊輪》はあくまで汎用罠のひとつという枠組みを出ないからです。《クリッター》《レスキューキャット》が帰ってこなければ生まれなかったデッキはありますが、《破壊輪》がなくてもそう歴史は変わらなかったでしょう。

ほっこり

《クリッター》《レスキューキャット》の決戦です。
この2枚、「禁止指定された理由」「禁止され続けた理由」がそれぞれ異なり、後者だけが上手く潰され全盛期さながらに蘇った点で共通します。環境での活躍もほぼ同格ということで、悩ましいところですが……。

ボクが強いだけだよね?

よくよく考えてみると、《クリッター》が活躍できているのは《アルミラージ》あってこそなんですよね。最も重要な「インフラになり得るかどうか」の部分を外部パーツに依拠している点で、元からインフラ効果を持つ《レスキューキャット》には一段劣ると判定してよいのではと思いました。《クリッター》というより、リンク1というメカニズムが強いという感覚です。

事実だからしょうがないね

以上のことから、《レスキューキャット》こそが最良のエラッタであると判定します。原型をなるべく保ったまま復帰し、環境でも元気な姿が見られる良カードになってくれました。
刺さる手札誘発が多すぎるタイプの初動ではありますが、先述した《フラクトール》のように補完できる手段も多くありますから、このカードがインフレに飲まれるのは相当先の話になるでしょう。

これからもよろしくにゃあ

今後のエラッタはこのカードをベンチマークに作られるとよい、と考えています。🐈️

4-2.WORSTエラッタは……。

本記事における「WORSTエラッタ」の称号は、《キラー・スネーク》に授与します。

ドウシテ…ドウシテ…

結構悩みました。
さすが「失敗」と断じられるカード群ですから、どれも個性的でどれもひどいです。少しでもマシなやつを除外してなんとか絞り出すしかありません。

まず、一瞬ですが環境でも使われた実績がある《死のデッキ破壊ウイルス》《現世と冥界の逆転》は外します。また、一応使えなくもない、【ナチュル】にでも入れておけば100試合に1回は出番がありそうな《ゴヨウ・ガーディアン》もWORSTとまでは行かず外してよさそうです。

助かったぜ

さて、以下の3人が残りました。すごい面構えです。

ドキドキ

実用性と原型はどれも終わっているカード群です。
となると、エラッタ対象として適切だったどうかで見てあげるしかありません。《マキュラ》は当然エラッタ必至、《ブレコン》も当時基準では「ノーエラッタで1枚返せるかどうか」という状態だったことを思うと……。

……。

……はい。
やっぱり、一番ひどいのはコイツなんですよね。

詳細は《キラー・スネーク》の項で語りましたが、このカードは、

  • エラッタの必要がない

  • 原型もない

  • 弱すぎて使い道がない

  • 無駄にわかりにくいテキストになっている

……と、あらゆる面で擁護できる要素がない、およそ最悪のエラッタと呼んで差し支えない出来になっています。
特にテキストがわかりにくい問題は深刻で、筆者の私見ではありますがアンチパターンに踏み込んでいるように見えるのも見逃しがたいところです。
こんなしょうもない効果の処理をフェイズまたぎにする必要がまったくありません。エラッタはデザイナーの実験場ではないのです。

この姿に戻りたい🐍

これよりひどいエラッタが後世に生まれないことを願うばかりです。🐍

5.おわりに

いかがでしたでしょうか?

大きな反省として、エラッタ復帰カードの数の多さを舐めていました。
長くても15,000字くらいに収めようと思っていたのですが、全然足りませんでしたね。ここまで拙文にお付き合いいただいた方には感謝しかございません……。🙇

実は2024年10月末に執筆を始めたのですが、気づいたら年を越しており、どうやら3ヶ月近く本文をこねくり回していたらしいです。正気の沙汰ではありません。
この期間中に《キラー・スネーク》のことを考えていたのは私だけだと思っていたのですが、公式の新年お祝いツイートに抜擢されているのを見て「頭の中覗かれてる!?」と焦ってました。いや、高画質の素材提供ありがとうございます。

巳年っぽいカード他にもあるけどね……

それにしても、前々から読みたいと思っていたエラッタ復帰カードについての考察をようやくリリースでき安堵しております。
……読みたい、というのは、当初は自分で書く気がなく、「こういう記事が世の中にあればいいな」と思っていただけだったからです。思い切って自給自足することにしたはいいものの、ここまで難産になるとは予想外でした。ひとまず納得のいく形に仕上がって満足です。
(※ 誰もやってなかった理由がなんとなくわかりました。書かなければいけないことが多すぎます。

以下、試験的に有料エリアを設けてみましたが、書いてあるのはお読みくださった方への感謝の言葉のみ、いわゆる投げ銭方式となっております。
筆者にコーヒー代を恵んでもよい、と思ってくださる方がいらっしゃたらどうぞよろしくお願いします。☕
こんな長文読ませたお前が金払えよって話かもしれませんが……。

ご高覧ありがとうございました!🃏

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