日伊通訳者である僕にしかない日常
こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112)
今だから良い思い出として話せるが、当時は先の見えない不安に振り回されたものだ。
今年の6月のことである。フランスのエージェントからイタリアのアパレル通訳の仕事の依頼を受けた。フランスのエージェントを介してのやりとりなので、当日までイタリアのお客様と直接的な連絡はなく顔も分からなかった。
集合は大阪駅でお客様は場所が分かるか心配されていたので、僕はタクシー乗り場が近いので桜橋口集合を提案した。お客様はそれでも不安でたまらなかったらしく、名前を書いたプラカードを持って立つことになった。
僕は知る人ぞ知る雨男なので、当日も例外なく大雨の中プラカードを持って朝の8時50分の桜橋改札口の前でお客様を待っていた。朝のラッシュアワーの中、まるでピエロのような気持ちで、好奇の目線を受けながらひたすらに立っていた。
9時10分になり15分になり、電話してもメールしても返事がない。思えば、フランスのエージェントにイタリアの企業が依頼し、エージェントは日本在住のイタリア人に依頼する。その三角形のやりとりの連絡に不備があってもおかしくはない。どんどん不安が募っていく。
やっと日本の番号から電話がかかってきたと思ったら、タクシードライバーからだった。なんと、お客様の部下が大阪駅と新大阪駅を間違えてフランスのエージェントに伝えてしまっていた。集合場所を、お客様は新大阪駅、僕は大阪駅。その勘違いのまま今日に至ったのである。お客様である社長は新大阪駅で「桜橋口はどこですか?」と聞いたところ、「ここは大阪駅ではありませんよ」と言われたらしく、ここから社長の地獄の始まりである。彼はたくさんの商品のサンプルを抱えて地下鉄に乗る勇気はなく、やむなくタクシーで大阪駅に向かっている、というわけだ。
タクシードライバーと電話で話しながら集合場所を決め、ようやく通訳が始まる!と思いきや、またもや問題が発生した。日本側の企業の連絡先を社長も僕も知らなかったのだ。ここで一気に社長が爆発した。タクシーを降りて大きなスーツケース2つを漁り名刺を探しながら、自分の部下とフランスのエージェントに対して激しいジェスチャー付きの罵詈雑言のオンパレードである。社長の鬼のような形相を目の当たりにし、僕は正直怖かった。
無事名刺を見つけた社長とともに再度タクシーに乗り込み、打ち合わせ先に向かった。さあ、ようやく本業だ!と意気込んでいると、次は僕に地獄が襲いかかってきた。1日のスケジュールが全て後ろ倒しになってしまった為、今日の全てのアポの変更を僕がすることになったのである。社長はイタリア人だし打ち合わせ先のお客様は日本人だし、通訳が必要なのは当たり前だが、アポ変更の電話を頭を下げながら謝罪の言葉とともにするのはとても辛かった。なんとここまで来て僕の1日は始まったばかりである。ちなみに、この日は金沢から始発5時半頃の電車で来ている。
タクシーの中で鬼の形相だった社長と無事打ち解けた僕は、あぁやっといい一日が始まった、と思った。矢先に次の地獄である。
イタリア語と日本語のフュージョンで話す社長と、ストレートな物言いの大阪弁のお客様に翻弄され、とても1日が長く感じた。
以上が僕の日伊通訳者としての日常である。
Ciao Ciao, Massi
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