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pan03photo
散文詩:最後の涙は花と共に
冷え過ぎた空気が
地表を覆うように滞留している
白銀の季節に花達が息をひそめて
冬眠してしまうのも
無理からぬことだ
歩き続けてきた私の心身も
ついには芯まで凍り
私は花の根たちと顔を並べて
共に春を待つことにした
やがて眠気が迎えに来て
私のいく先が
春ではないことを
誰に諭されるでもなく理解し
最後の涙を一粒だけ地に
落とすことを許された
私の知らない春を彩る草花は
その涙を糧にきっと立派に
咲き誇るであろうことを
信じられる安心に包まれて
私は最後の眠りについた
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