散文詩:桜堤
沈んだ心持も
春の訪れと共に少しは
浮力を得たように
感じていた頃
精神の隙間に入り込んだ
風邪が気鬱を呼び寄せた
熱にうなされながら
うとうとしていると
いつの間にか桜堤を一人
歩いていたのだが
景色は灰一色だった
しばらくしてもう駄目だと
崩れる私の身体を
両脇から支えてくれたのは
きっとご先祖様方だろう
皆古き衣服を纏っている
体重を預けたまま
一足進む度に
少しずつ薄紅がさす様に
白黒の世界に
桃色が滲んで広がった
えも言われぬ変化の美に
私は感涙し桜が本来の彩りを
取り戻す頃には
気付けば独り立ち
しかと堤を歩んでいた
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