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散文詩:台風一過

台風を畏れながらも
その荒々しい雨風で
私を海原へ連れ去っては
くれまいかと
挑発する様な気分で
窓ガラスを叩く雨粒を見る

「仕事の区切りがついたら
次会う日を決めようか」
それが彼の最後の言葉となり
もうどれ程経っただろう
災いに呑まれたら
命はなんと儚いものよ

この嵐の夜に見た悪夢が
私の暗心に積もる澱を濾して
星月に預けてくれたのだろう
台風一過の晴天の朝が
望まなくとも活力を与え
私は婚約指輪をそっと
外してからドアを開けて
朝陽に素顔を託し
はじめの一歩を踏み出した

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