【詩】青春のスクイズ
きっとあいつは走ってくる。
砂煙を上げ滑り込んでくる。
ベンチはヒッティングから
スクイズサインに切替えた。
ベース上で土を払っている
あいつの目に覚悟が見えた。
一点ビハインドの九回の裏
あいつを生還させなければ
この一戦が引退試合になる。
優勝なんて望んでないけど
出来ることなら一試合でも
多く野球をしたい。これが
チームみんなの思いなのだ。
だからあいつは走ってくる。
砂煙を上げ滑り込んでくる。
ピッチャーがこちらを向き
投球モーションにはいった。
同時にあいつが走り出した。
球が外に大きくそれていく。
バットがそれを追っていく。
球はミットの中に収まった。
後戻れないあいつの勢いが
ホームに滑り込んできた──